テレワーク廃止の影響と継続の判断基準: 企業の最新動向を解説
コラム 2023.10.10

新型コロナウイルス感染症の5類移行を受け、「出社回帰」する企業が目立つようになりました。

テレワークを終了する際に、導入している企業の現状や終了後の影響を理解することは重要です。急激に終了させたことで、企業や労働者に不利益が生じたケースもあります。

この記事で、テレワークの現状や終了の背景を明らかにします。終了の影響や、終了あるいは継続の判断基準についても触れているので、ぜひ参考にしてみてください。

 

テレワーク実践企業の現況

新型コロナウイルスの拡大に対応し、多くの企業がテレワークを採用しました。感染が鎮静化する中、テレワークの終了を推進する流れが見受けられる一方で、労働者からの継続要望も強まっています。

 

■テレワークの導入率が減少している

公益財団法人日本生産性本部の「第12回働く人の意識調査」によれば、2023年1月の時点で2020年5月と比較して、全企業規模においてテレワークの導入率が低下しています。

総体的に14.7ポイント、従業員数が101~1,000名の企業では19.8ポイントの低下が見られます。一方、1,001名以上の従業員を持つ企業は、2020年7月から30%程度を維持していますが、2020年5月と比較すると16ポイントの減少が確認されました。

 

■多くの従業員がテレワーク継続を望む

公益財団法人日本生産性本部の調査では、テレワークを行っている企業の労働者の意識も確認されました。「コロナ収束後もテレワークを続けたいか」との質問に、84.9%が「希望する」と回答しました。(2023年1月時点)

これは2020年5月の62.7%よりも、2023年1月で20%増加していることを示しています。多くの従業員がテレワークの継続を希望しているため、その方針を見直すことの是非を慎重に判断するべきです。

 

テレワークを終了させる企業が抱える課題

テレワークを開始した多くの企業の中で、既に終了方針を定めた場合も存在します。終了の背景には、テレワーク固有の諸問題が大きく関与しているのです。

 

■感染拡大への短期的な対策であったこと

新型コロナウイルスの拡散により、2020年4月に初の緊急事態宣言が出された際、国や地方自治体はテレワークの取り組みを企業に推進しました。

その後、感染対策として一時的にテレワークを開始した企業が増加しました。特に緊急事態宣言の前後では、テレワークの実践企業数が急増しました。総務省の「令和3年情報通信白書」によれば、初の緊急事態宣言時にテレワーク導入率は3倍以上に跳ね上がっていることが示されています。

新型コロナの感染者数は一過性に減少し、第5類感染症にカテゴライズされることも決定しています。このような背景から、感染症対策として一時的にテレワークを採用していた多数の企業が、元の「オフィスワーク」への移行を考慮しています。

2020年4月の新型コロナウイルス感染症の拡大を背景に、初の緊急事態宣言が発出されました。この時期、感染の防止策としてテレワークを奨励する動きが国や自治体から見られました。

それを受けて、多くの企業が短期的な対応としてテレワークを取り入れました。特に緊急事態宣言が発令された時期のテレワーク導入のスピードは目を見張るものがありました。総務省が発表した「令和3年情報通信白書」によれば、その導入率は前回比で3倍以上に増加したとされています。

 

■コミュニケーションの不足を埋める為

テレワークの開始に伴い、社員間での直接の対話の機会が減少し、コミュニケーションの不足が指摘されるようになりました。厚生労働省の「テレワークの現状調査」でも、このコミュニケーションのギャップが明らかにされています。

このコミュニケーションの欠如は、業績の劣化や効率の低下の原因となる恐れがあります。そのため、コミュニケーションの障壁を取り払うために、テレワークを終了する企業も出始めています。

 

■従業員のコミットメントの低下を懸念する理由

テレワーク実施により、従業員と企業の間の物理的・感情的な距離が拡がる傾向があり、結果として従業員のエンゲージメントの低下が心配されます。エンゲージメントは、企業への深い関心や熱意を意味します。

時代の変化、価値観の多様性や労働人口の減少を背景に、企業は従業員のエンゲージメントの重要性を再認識しています。エンゲージメントが向上すると、労働生産性や長期就業率の上昇が予測されるため、企業としては無視できないトピックとなっています。

 

■全従業員の公平性を保つ目的

テレワークの適応性は職種により異なるため、全ての従業員に均等に導入することは難しい状況です。例として、対面での顧客接触が中心の営業職や店舗職は、テレワークが難しい場合があります。

多様な職種を持つ企業では、テレワークが不適切な職種も存在するため、それに伴う従業員の不満も考慮しなければなりません。また、適切なテレワーク環境が家庭にない従業員も考慮し、彼らの公平性を保つために、テレワークの中止を検討するケースも考えられます。

 

■生産性低落を危惧する背景

テレワークを行う中で、業務と私生活の境界が曖昧になることが課題として挙げられます。特に家での作業となると、仕事と休息の切り替えが難しく、それが生産性の落ち込みを招くことがあるのです。

また、テレワークではオフィス環境のような効率的な作業空間が確保されず、チームの動きも把握し難いため、管理面の問題も出ることがあります。このような点から、テレワークはオフィス勤務に比べて生産性が下がるリスクを持っているといえます。

これらの要因から、テレワークを見直す動きがある企業も少なくありません。

 

テレワークの中止とそれに伴う影響

テレワークを開始しても、様々な問題に直面し、それを廃止する企業は珍しくありません。ただ、その廃止に伴い新たな問題が生じることも想定されるため、先手を打つ策を練ることが必須です。

 

■退職のリスクが高まる可能性

前に触れた通り、公益財団法人日本生産性本部の「第12回働く人の意識調査」によれば、多くの従業員はテレワークの継続を期待しています。

従業員がテレワークの利点を感じていた場合、その廃止により職を辞めることを考えるかもしれません。多くの企業で人手不足が続いている今、従業員の退職は避けるべき課題となっています。テレワークの中止が、有能な人材を失うリスクになる可能性が考えられるので、企業は従業員の意見を取り入れる重要性が増してきます。

 

■ワーク・ライフ・バランスの悪化の危険性

現代のライフスタイルや価値観の変遷を受け、ワーク・ライフ・バランスを大切に考える人が増加してきました。テレワークには、通勤時のストレス削減や自由度の高い労働スタイルが含まれます。

通勤時間そのものがなくなることにより、その時間を家族の時間、趣味、またはリラックスに使うことが可能となり、バランスの良い日常生活を実現するための有効な手段でした。しかし、テレワークの終了により再びオフィスへの通勤が始まれば、その通勤時間が再度発生し、結果としてワーク・ライフ・バランスが乱れる恐れが出てきます。

 

■オフィスの適応環境整備が課題として浮上

多くの企業で、テレワークの導入を機に、ミーティングや商談オンラインで進行するように変わりました。オフィス勤務を基本とした場合でも、オンラインでの活動が続くと仮定すると、適切なオンライン業務環境の提供が不可欠となります。

オンラインでの業務をサポートするため、集中用のブースやワークスペースのパーテーションの設置など、静かで集中しやすい空間を整備することが欠かせません。オフィスの状態や設備によっては、このような整備に関するコストが増加することも予想されます。

オフィスの変更や更新が求められる場合、追加のコスト負担が生じる可能性が考えられます。

 

■BCP戦略の再評価が求められる

テレワークは予期せぬ災害時にもビジネスの継続性を保つ助けとなり、これをBCPの一環として取り入れている企業も多いです。BCP、すなわち事業継続計画は、非常事態が発生した場合にも事業の被害を最小化し、続行するための方針や手法を明確にするものです。

例えば、交通機関が機能しなくなるような大地震が発生した場合でも、テレワークを活用することで従業員は作業継続が可能となります。だが、テレワークを停止する場合、BCPの一部が欠けることとなり、その部分の再検討が必須となります。

 

テレワークの継続・中止の考慮点

テレワークの中止を考える場合、離職のリスク増加やワーク・ライフ・バランスの崩れといった側面も検討しなければなりません。その上で、労働の質や管理の側面から、どちらが適切かを判断することが求められます。

 

■テレワーク実施環境の現状

テレワークを適切に行うためには、十分なデバイスや通信インフラの整備が前提となります。特定の従業員が自宅に適切な環境を持っていない場合、企業側からのデバイスの提供やWi-Fiのサポートが要求されることもあるでしょう。

そして、外部の場所での業務を行うために、セキュリティ面の強化も欠かせません。十分なテレワーク環境の確保には予算がかかることもあり、投資対効果を評価して、テレワークの継続・中止を判断することも考慮されます。

 

■従業員の意欲と効率の変動

テレワークを良いものと捉える従業員は存在しますが、一方で不満を感じる人も無視できない数います。例として、適切なコミュニケーションが難しい、監視ツールによる不自由さなどが考えられます。このような状況は、従業員との関係性やエンゲージメントの低下を招くリスクがあります。

ストレスの過度な蓄積は、従業員の意欲や効率の低下を引き起こす要因となり得ます。オフィス環境とテレワークの効果を比較して、意欲や効率が落ちている場合は、テレワークの見直しを考慮することが重要です。

 

■勤務体制の管理課題

テレワークには、従業員の勤務実態の把握が難しいという問題が指摘されています。オフィスでの勤務に比べ、伸びやかな勤務体制になる傾向があり、それが過労の原因ともなることが懸念されています。

時間外勤務が頻発する場合、従業員の健康リスクだけでなく、人件費の増加も問題となります。過労を防ぐ取り組みが不足していれば、状況の改善は望めません。企業としては、適切な労働時間の管理が欠かせないのです。勤務管理の取り組みが不十分であれば、テレワークの存続を再評価することが求められます。

 

継続するテレワークの鍵となるポイント

テレワークの具体的な環境整備や勤務管理によって、継続的な取り組みが見込めます。労働条件の再確認や、テレワークに関する教育を提供することで、持続可能なテレワーク体制を築くことができるでしょう。

 

■労働条件の最適化の重要性

テレワークを継続的に実施する上で、各従業員のライフステージやニーズに応じた労働環境を整えることが求められます。例えば、子育てや家族の介護などの事情で通常のオフィスワークが難しい従業員でも、テレワークの選択肢があれば継続的なキャリアが期待できます。完全なテレワーク体制の廃止ではなく、ハイブリッドワークスタイルの採用も検討する価値があるでしょう。

 

■システムやツールの再評価

テレワーク時のコミュニケーションの取りづらさや勤怠の管理が課題となっていることは確かです。テレワークを円滑に運用していくためには、利用しているツールやシステムの再評価が有効でしょう。

コミュニケーション不足が生じる背景には、テレワーク用のツールの操作が不得意であることも考えられます。使いやすいツールを導入することで、オンラインのコミュニケーションが活発になり、テレワーク特有の問題が緩和されるかもしれません。また、雑談を楽しむための専用のチャット部屋の設置なども効果的です。

 

■テレワーク専門の研修を提供する

ITのスキルレベルは、従業員それぞれに異なります。従業員の中には、テレワークの環境に馴染めない方もいるかもしれません。そのような状況を克服するため、テレワークに関する研修を提供することが考えられます。

ツールの操作方法や効果的なコミュニケーション手法などを学べる研修があれば、テレワークに対する抵抗感が軽減されるでしょう。社内での研修提供が難しい時は、外部の専門機関との協力も視野に入れると良いです。

 

■コワーキングスペースやシェアオフィスを利用する

テレワークは場所を問わない働き方を特長としています。従業員がテレワークをする場所を自宅だけに限らず、サードプレイスとしてのオフィス提供も視野に入れることができます。特に、家での作業環境が整わない時に役立ちます。

サードプレイスとは、家や会社以外で働ける場所のことを指します。コワーキングスペースやシェアオフィスなどを活用することで、効率よく、生産性を上げながら働くことが見込めます。

 

■ハイブリッドワークへの移行を思案する

もしテレワークを続行するつもりなら、ハイブリッドワークへの移行を考えてはいかがでしょうか。ハイブリッドワークというのは、オフィスでの勤務とテレワークの両方を取り入れた方法のことを指します。事業の特性や個人の状況に応じて勤務地を選択することができ、従業員の選択の幅が増えるのです。

 

テレワークの終了について考えるポイント

現状、テレワークを続けたいと考えている人は少なくありませんが、オフィス勤務に対して不安や抵抗を感じる人も存在することでしょう。その際、廃止を検討する上で、オフィスの環境を改善して、従業員にそのメリットを感じさせることが重要です。

例として、気軽にリラックスできる空間の設置や、従業員が自分の働く場所を選べる制度の実施などが考えられます。一定の席での勤務ではなく、業務や気分に応じて場所を選べるABWのスタイルなどです。リフレッシュできる場所だけでなく、さまざまなワークエリアを提供することで、オフィスへの抵抗感を軽減することが考えられます。

適切なオフィス環境は、業務内容や空間の大きさによって違います。この機会にオフィス環境を整えたいというご相談は、ぜひUNION TECまでお問い合わせください。

 

まとめ

テレワークを終了する方針を示す企業が増えている中、続けることを求める従業員も相当数います。企業が単独で終了を選択すると、離職のリスクやワーク・ライフ・バランスの失調が生じる恐れがあります。テレワークの継続や終了の決定時に、アンケートを通じて従業員の意見を収集することは必要不可欠です。どうしても廃止を選ぶ場合、従業員への十分な説明と、その背景の理解を求めることが重要です。

 

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