ABWとは?4つの事例と導入メリット
ノウハウ 2023.07.26

「ABW(Activity Based Working)」:働き方革命の次なるステージへ

最近、日本の働き方に関するディスカッションの中で、「ABW(Activity Based Working)」という言葉を耳にしたことはありますか?
ABWとは、従来のように組織や階層、チームなどのフレームに基づいたワークプレイスで働くのではなく、個々のワーカーの活動にふさわしい場所を用意してワーカー自らが自主的にワークプレイスを使い分けるワークフォーマットです。

しかしながら、ABWはそれだけに留まらず、働き方そのものを進化させ、私たちの生活をより豊かにする可能性を秘めたツールでもあります。今回は、この興味深いトピックについて詳しく探っていきましょう。

事例:株式会社Magic Moment 様
 ーカフェカウンターや家具をオフィス内に点在させることで、オフィス内の動きがよりランダムになるようなデザインをしています。

 

ABWとは?

まず最初に、ABWが何なのか、そしてそれがどのように働く私たちの世界を変えているのかについて掘り下げてみましょう。
ABW、つまり「活動ベースの働き方」は、オランダで生まれた考え方で、1970年代から存在していますが、その実践的な導入は1990年代から始まりました。この働き方の特徴は、従業員がその時々の仕事内容や気分に合わせて、最適な環境を自由に選択できるようにすることです。
「ただのフリーアドレスと何が違うの?」と思う方もいるかもしれませんね。確かに、両者は共通点を持ちつつも、目的と発祥においては異なります。フリーアドレスは、主にオフィススペースの効率化とコスト削減のために生まれました。

一方、ABWは、働き方そのものを再考し、企業の理念を具現化する手段として考案されました。その結果、ABWでは、オフィス外の自宅やカフェ、コワーキングスペースなど、仕事をする場所の選択肢が大幅に広がります。

 

ABWのメリット

次に、ABWがもたらすメリットを見てみましょう。具体的には、以下の5つのポイントが挙げられます。

 

1. ワークライフバランスの実現

ABWは、働く時間と場所の自由を提供することで、従業員が仕事とプライベートのバランスを取りやすくします。これは、通勤時間を削減し、その時間を自分自身のために使うことができるからです。

 

2. 従業員満足度の向上

時間と場所に縛られず、自分のペースで仕事を進めることができるため、ストレスが減り、モチベーションが上がります。これは、従業員が幸せに感じ、企業へのロイヤルティを高める効果があります。

 

3. 優秀な人材の獲得

ABWを導入すると、企業は地理的な制約から解放され、世界中から才能を引き寄せることができます。これにより、幅広い視点やスキルを持った人々をチームに加えることができます。

 

4. 業績の向上

ABWは、従業員に自分自身の働き方を選択する自由を与えることで、生産性と創造性を向上させます。これは、結果的に企業の業績を引き上げることにつながります。

 

5. 環境への貢献

ABWは、オフィスの使用率を最適化するとともに、通勤によるCO2排出量を減らすことによって、環境に良い影響を与えます。

 

ABWの課題と解決策

しかしながら、ABWにはいくつかの課題も存在します。遠隔地からの作業が増えると、コミュニケーションが困難になる場合があります。また、管理職はその部下のパフォーマンスをどのように評価すべきか、新しい基準を見つける必要があります。
そして、従業員がオフィスでの作業を選ぶときには、社交の機会を失わないようにする必要があります。

このような課題は、適切なツールや戦略を用いることで解決可能です。
企業はコミュニケーションを強化するためのデジタルツールを導入したり、目標設定とフィードバックのフレームワークを再考したり、社交の機会を提供するためのイベントを計画したりすることができます。
重要なのは、ABWは単なる働き方の変革ではなく、企業文化そのものを変革するものであると理解することです。
したがって、その成功は企業全体の理解と協力が必要です。

 

日本におけるABWの導入

 

事例:日本ジェネティクス株式会社 様

 

日本でも、多くの企業がABWの導入を検討しています。しかし、伝統的な働き方や上下関係、コミュニケーションのスタイルなど、日本特有の課題も存在します。
それに対して、ABWの導入により、企業はこれらの伝統的な慣習を見直し、より効果的な方法を見つけることができます。例えば、コミュニケーションのスタイルをオープンで透明なものにすることで、上下関係の壁を取り払い、全員が意見を自由に述べられる環境を作ることができます。

また、場所と時間に縛られない働き方を導入することで、従業員一人ひとりが自分自身の働き方を見つけることが可能になります。
しかし、それぞれの企業が自身のビジネスモデルや従業員のニーズに合わせてABWをカスタマイズすることが重要です。
全ての企業が全ての従業員に対して100%のリモートワークを提供することは難しいかもしれませんが、それぞれが自分自身の仕事に最適な時間と場所を選択できるような環境を作ることは可能です。

ABWは、働き方を再考し、企業が未来に向けて進化するための強力なツールとなり得ます。これはただの「テレワーク」や「フリーアドレス」の一段階進んだものではなく、従業員の幸福度と生産性を最大化するための働き方の革命です。また、企業にとっては、優れた人材を引き寄せ、保持し、業績を向上させる手段でもあります。

日本の企業も、この新しい働き方の導入を真剣に考える時期に来ているのかもしれません。その際には、企業の目指す方向性を明確にし、従業員のニーズを考慮に入れ、それぞれの状況に最適な方法でABWを導入することが重要です。ABWは、単なる働き方の変革ではなく、企業全体の視点を変えるものです。
それは、企業がより良い組織に進化するための一歩となるでしょう。

 

ABW導入への準備

新しい働き方の導入には、当然のことながら、一筋縄ではいかない課題も存在します。そこで今回は、これらの課題に気づき、備えることでABWの成功を実現するための鍵について深掘りしていきましょう。

 

マネージャーの新たな挑戦: バランスの取れたコミュニケーション

ABWの導入は、マネージャーにとって新たな挑戦となります。それはなぜなら、部下との距離感を保ちつつ、効果的な対話を繋ぎ続ける必要があるからです。オンラインミーティングの設け方や、オフィスでの対面をどの程度取り入れるかなど、新たなルール作りが必要になります。そして、評価制度も成果主義に変更することで、作業量ではなく結果に焦点を当て、自由な働き方と成果の両立を目指すことが求められます。

 

情報保護とセキュリティリスクの課題

ABWでは、情報漏洩のリスクが増大します。その防止策として、情報管理のルール明確化や、従業員に対する教育が重要となります。また、セキュリティソフトの導入やVPN経由でのネットワーク接続、そしてデバイスの保護なども有効です。

 

新しい働き方への適応

新しい働き方を理解し、受け入れることがABWの成功へのカギとなります。それには、ABWの目的や使い方、利点を従業員にしっかりと説明し、納得してもらうことが必要です。

 

孤独感への対策

ABWでは、働く場所がオフィスだけでなくなるため、従業員同士の対面の機会が減少します。それにより、孤独感を感じる従業員が増える可能性もあります。そのため、定期的な健康診断の受診奨励や適切な休暇の取得など、心身の健康をサポートするプログラムや政策が必要となります。

 

必要なテクノロジーとインフラストラクチャー

ABWを上手く運用するためには、適切なテクノロジーとインフラストラクチャーが不可欠です。遠隔地からのアクセスやチーム間の協力を促すツール、そしてデータの管理などが求められます。各従業員がこれらの技術を使いこなせるように、十分な研修を提供することも重要です。

 

オフィス空間の再設計

ABWの導入により、オフィスの役割が変わります。個々の作業スペースから、チームでのコラボレーションを促す場所へと変貌します。新しいオフィス空間は、従業員が集まって意見交換をしたり、一緒に仕事をしたりするためのスペースとなるでしょう。

 

ABWの事例


事例:ソウルドアウト株式会社 様
 ー「仕事をしに行く場所」から「社員一人ひとりの専門性をより一層高め、互いに発揮し合う場所へ」という考え方のもと、Activity Based Working を軸に、そこに3C( Communication,Collaboration,Covid-19)の要素を加えた「ABW+3C」をコンセプトに部署や会社という枠を超え、高い専門性と多様な得意分野を兼ね備えた人財同士が共創しやすい環境づくりを行いました。

 


事例:Vistex Japan合同会社
 ー“オンのエリア”と“オフのエリア”をしっかりと区切ることで、休むときはしっかりと休み、働くときは集中できるように、そしてコミュニケーションを取りながら仕事に注力できる空間づくりを行いました。

 


事例:トレンダーズ株式会社 様

 ーグローバルスタンダードになりつつあるABW(毎日各自が自分の仕事場を選べるオフィス)。各事業部のコミュニケーションの活性化を促すオフィス空間を目指しました。

 


事例:
株式会社アクシス 様
“鳥取から世界へ Innovation Base.”をコンセプトに、ABWという新しい働き方の導入やコミュニケーションの生まれやすいゾーニングとし、地域の活性化・社員のモチベーション強化につながるような設計をしています。さまざまな素材や形、色を多用し、新しいアイデアが生まれやすいクリエイティブな空間を目指しました。

 

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以上、ABWを活用したのオフィスづくりのヒントでした。
ABWの導入には様々な課題が存在しますが、これらに対する具体的な解決策を見つけることで、成功へとつながります。

 

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