バイオフィリアの真髄|オフィス環境の質向上とその効果、導入事例の深堀り
ノウハウ 2023.10.11

現代において、多くの人々がストレスとともに仕事をしています。そのため、社員の満足度向上やストレス緩和の手段が熱心に模索されており、その答えとして自然の力を用いたバイオフィリアが浮上してきました。

この記事で、バイオフィリアの基本的な考え方、オフィス環境におけるバイオフィリックデザインの利点や、取り組む上での要点を深く掘り下げていきます。企業関係者の方やバイオフィリアに興味を持っている方々は、この情報を参考にどうぞ。

 

バイオフィリアとは?

バイオフィリア(Biophilia)は、生物学的な傾向や本能的な傾向を指す言葉です。具体的には、人間が自然に対して親しみを感じ、自然の環境に親しむことを好むという傾向を指します。バイオフィリアの概念は、アメリカの生物学者であるE.O. ウィルソンによって提唱されました。

バイオフィリアの理論は、人間が自然環境とのつながりを持つことが健康や幸福感にプラスの影響を与えるとする仮説に基づいています。この考え方は環境心理学や建築、都市計画などの分野において重要な概念となっており、自然光や植物を取り入れた建築デザインやオフィス環境の設計などで実践されています。人々が自然に囲まれることでストレスの軽減や創造性の向上などが期待されます。

バイオフィリアの概念は、現代社会において都市生活やデジタル環境に囲まれた生活を送る人々に、自然とのつながりを取り戻すためのアプローチとして注目されており、日本国内でも、このデザインを活用する企業が徐々に増えつつあります。

 

バイオフィリア導入のメリットと効果

ここで、企業がバイオフィリアを実践する際のメリットや効果について詳しく述べます。

 

従業員の幸福感と健康促進

バイオフィリアをオフィスに取り入れることで、従業員はより幸せでリラックスした環境で働くことができます。例えば、植物を配置したオフィスでは、新鮮な空気を提供し、従業員の気分を向上させます。また、自然光を利用することで、眼の負担を減少させ、健康な視覚を保つのに役立ちます。

 

生産性の向上

バイオフィリアの要素は、生産性の向上に貢献します。例えば、緑の壁や植物の配置は、作業効率を高め、タスクの完了時間を短縮します。また、景色の良い窓があるオフィスは、従業員の注意力や創造力を高め、プロジェクトの品質を向上させます。

 

創造性とイノベーション

バイオフィリアの要素は、従業員の創造性とイノベーションを刺激します。例えば、自然の景色を模倣したデザインや環境音楽は、アイデアの豊かさを奨励します。従業員が自然と接する機会が増えると、問題解決スキルが向上し、新しいアイデアが生まれやすくなります。

 

ストレス軽減

バイオフィリアの要素、特に植物は、ストレスの軽減に役立ちます。緑や水の存在は、リラックス感を提供し、心拍数を下げ、ストレスホルモンの分泌を抑制します。これにより、従業員はより落ち着いて業務に取り組むことができます。

 

チームワークとコミュニケーション

バイオフィリアの要素は、協力やコミュニケーションを向上させます。共有の緑のスペースやリラックスエリアは、従業員が集まり、情報交換や協力プロジェクトに参加する場所として活用できます。これはチームワークを高め、アイデア共有を促進します。

 

企業のブランドイメージの向上

バイオフィリアの導入は、企業の環境に対する姿勢を示す機会です。従業員だけでなく、顧客、投資家、および社会に対して、企業は環境への配慮と社会的責任を果たすというメッセージを送ります。これは企業のブランドイメージを向上させ、継続的な成功に寄与します。

バイオフィリアの導入にはコストがかかることもありますが、これらのメリットや効果は企業にとって大きな価値を持つことが多いです。また、バイオフィリアを効果的に導入するためには、設計、植物の配置、自然光の利用、自然音の導入など、さまざまな要素を考慮する必要があります。

 

バイオフィリアをオフィスに導入するアプローチ

バイオフィリアをオフィスに実装するための効果的な方法を紹介します。

 

観葉植物の配置

オフィスの各エリアに観葉植物を配置することは、バイオフィリアを体現する一般的なアプローチとなっています。勤務中に常時自然を感じられるような環境を整えることで、バイオフィリアの利点が実感できるでしょう。観葉植物はテーブルやフロアだけでなく、壁や天井からも取り付けることが可能です。このような方法は、オフィスの広さを最大限に活用する利点も持っています。

 

壁の緑化

オフィスの壁を緑で埋め尽くすというアイディアも実践できます。例えば、入り口の壁をフルに緑化することで、入ってくる社員や訪問者の気分を高める効果が期待できます。ワークエリアでは、部分的な壁の緑化も有効です。簡単に壁に取り付けられるプランターを使用して、オフィスの雰囲気を変えることができます。もし直接植物を取り入れるのが難しい場合、壁紙を変更するという選択肢もあります。さらに、壁や隔てる物の材質を木製にするのも、バイオフィリアの取り組みに一役買っています。

 

オフィスに木製家具を配置する

植物の配置が困難なオフィス環境でも、アースカラーの家具選びにより、視覚的には自然の感覚を与えることができます。デスクや収納スペースを木目調にすることで、オフィス空間に自然の温もりを取り入れることが可能です。自然光を思わせる照明を選択することも推奨されます。千葉大学の調査によれば、木の材質が、嗅覚、触覚、視覚を刺激してリラックス効果を与えるというデータが得られました。このリラックス効果は、免疫機能の向上にも寄与することが示唆されています。

 

アロマや自然の音を取り入れる

五感を活かして自然を感じさせるアプローチも有効です。例として、森林や花の香りを再現したアロマを室内に拡散させ、自然の中にいるかのような雰囲気をつくることができます。さらに、水の流れる音や風の音、鳥のさえずりなどのBGMを取り入れることも一考に値します。ただ、香りや音の選択は、個人の好みによって受け取り方が変わるため、過度なものは避け、皆が快適に過ごせるよう心掛けることが重要です。

 

社員に屋外での休憩時間を提供する

オフィスデザインのバイオフィリア化だけでなく、社員が直接外の自然を感じる時間を持つことも大切です。オフィス近くに緑豊かな公園や庭園があれば、そこでの休憩を促進することが推奨されます。このように、定期的に外の自然の中で過ごすことで、気分のリフレッシュやストレスの軽減が期待できます。さらに、軽い散歩は運動不足の解消にも繋がります。

 

バイオフィリア導入時の注意点

バイオフィリアを導入する際に留意すべきポイントについて解説します。効果的なバイオフィリアの導入を目指しましょう。

 

配置するアイテムの量と場所の最適化

バイオフィリアを効果的に取り入れるためには、配置するアイテムの量と場所の選択が鍵となります。単純に多くの自然素材を配置するだけでは十分な効果は得られません。

最適な緑の配置量は視界の10~15%です。これを超えると、実際には作業効率や満足度が低下する可能性があります。オフィスのスペースを圧迫しないように、また従業員の動きを妨げない配置を心がけることが大切です。業務をスムーズに進めるための配慮が求められます。

 

メンテナンスの手間を考慮

オフィス環境で植物を配置する場合、維持管理の手間も検討のポイントとなります。植物には水やり、土の交換、落ち葉の清掃など定期的なケアが必要です。

維持管理に手間を取られたくない、または社員の負荷を減少させたい場合、外部専門業者への依頼も一考です。全体的な管理を外部業者に任せることで、オフィス内でのメンテナンス負担を軽減できます。また、植物自体を購入せずにレンタルする方法も選択肢の一つです。フェイクグリーンの使用も、メンテナンスフリーなオプションとして有効です。

 

BPOの活用を検討

バイオフィリアの取り組みに自信がない、または専門的な意見が欲しい場合、BPOのサービスを活用することを考えてみてください。BPO、すなわちBusiness Process Outsourcingは、特定の業務を専門家や専門企業に外部委託することを指します。BPOを活用すれば、バイオフィリアの全過程を外部専門家に任せることができます。

BPOのメリットとして、専門的な知識やスキルを持った外部のスタッフがプロジェクトをサポートしてくれるため、内部のリソースを他の重要業務に集中させることが可能です。バイオフィリアの実施を考える際には、BPOの利用も選択肢として考慮してください。

 

バイオフィリックデザインを取り入れた事例5選

01. 《株式会社SHIFT》「和」の美しさと、重厚なヴィンテージテイストの融合

エントランスには、70年ものの「五葉松」の盆栽を採用。

取り囲むブラックの大型ソファ、アメリカのウイスキー工場で使われていたアンティークフローリング、エイジング加工のブリックタイル・・・それぞれの調和が、落ち着いた空間の美しさを演出。「松」=「待つ」という言葉遊びから紐解き、人・モノ・情報が集まる場。また、松はイタリアで“合理性の象徴”ということもあり、企業理念を表す意味も込めて、松の盆栽を採用しました。フラワーアーティストの東信氏に依頼して、70年ものの五葉松の盆栽を、幹・土・苔は本物を残し、葉は精巧なフェイクに植え替えてデザイン。オフィスを象徴するオブジェとしています。

事例:株式会社SHIFT 様

 

02. 《アイグッズ株式会社》壁面緑化など観葉植物をポイントにしたオフィス

フルオーダーメイドのオリジナルグッズ、ノベルティのデザイン・製造・販売及び輸出入を行うアイグッズ 株式会社様のオフィス。カフェカウンターを中心に据え、なるべく壁を設けずに至る所で偶発的なコミュニケーションを生み出すオープンなオフィス空間です。

リラックススペースには壁面緑化に木の切り株が配置されています。ミーティングスペースに観葉植物をレイアウト、また床にも緑を採用しています。緑視率が増えると心理的リラックス効果が高まるということが分かっています。

事例:アイグッズ株式会社 様

 

03. 《Vistex Japan合同会社》自然光が差し込み、植栽がパーテーションがわりのオフィス

働きやすい仕組みづくりに力を入れているVistex Japan合同会社様。“オンのエリア”と“オフのエリア”をしっかりと区切ることで、休むときはしっかりと休み、働くときは集中できるように、そしてコミュニケーションを取りながら仕事に注力できる空間づくりを行いました。また、コミュニケーションを促進するために極力間仕切りをなくし、植栽やデスクパーテーション等の最低限の目隠しのみにすることで、見通しの良いオフィスとなっています。

事例:Vistex Japan合同会社

 

04. 《キャシュモグループ》コーポレートカラーのグリーンとオレンジが自然光に包まれるオフィス

Cashmo様の企業イメージを確立し、外部に発信できるようなオフィスにするべく、コーポレートカラーであるグリーンとオレンジを各所に取り入れ、来訪者の記憶に残るような空間づくりがされています。

ホテルラウンジのようなフリーアドレスエリアは、観葉植物が効果的に配置されています。

事例:キャシュモグループ 様

 

まとめ

社員のメンタルヘルスが良好であると、社員は意欲的に働くことができます。したがって、メンタルが健康な社員が働くオフィスは、社員同士の関係が改善され、その結果、業務パフォーマンスが向上し、生産性も向上します。これにより、良い循環が生まれます。

今回紹介した「バイオフィリックデザイン」は、自然との触れ合いによって心身がリフレッシュされ、集中力が高まるなどの効果を空間デザインに取り入れ、従業員のメンタルヘルスを向上させることを目指しています。

現代社会はデジタル化が進み、便益を享受できる一方で、メンタルヘルスに対する影響も懸念されます。バイオフィリックデザインの導入により、社員のストレスを軽減し、働きやすく、やりがいのあるオフィスを提供することで、社員にとって「働きがいのある」オフィスを実現できるでしょう。

 

【OFFICE】会社・サービス案内

オフィスの企画・設計デザイン・施工サービスの案内資料です。ミッションや役員紹介、売上推移などの会社情報や、ワークスペースプロデュース〜デザインの考え方やコンセプト、こだわり、私たちの強みを網羅的にご紹介しています。

無料ダウンロードはこちらから

 

【オフィス移転の最強ガイドブック】なかなか聞けないコスト削減ポイント

オフィス移転を考えているすべての企業の皆様の一助となるべく、業界人しか知らない裏事情や知っておかないと損してしまうようなポイントを詳しくまとめました。

無料ダウンロードはこちらから

 

【サービスの流れや詳しいタスクを知りたい方必見!】オフィス移転の物語

「オフィス移転が初めて!」という担当者の方、経営者の方必見!ご提案までの間私たちが考えていることや、工事はどういうふうに進んでいくのか。この機会に、ぜひご一読ください。

無料ダウンロードはこちらから

ご相談は
こちら