政府主導の「働き方改革」やコロナ禍の影響により、働き方が変化しています。このような中で、近年「WELL認証」という制度が注目されています。WELL認証は、企業がSDGsとESGに貢献する方法の一つとして、従業員の健康と幸福を促進し、持続可能なビジネスプラクティスを導入する手段として注目されています。
SDGsとESGの観点からも非常に重要であると言えます。
詳細については本記事で説明します。オフィスや働き方を見直す際の参考にしてください。
「WELL認証」とは、主にオフィスや建物の環境を評価し、ウェルビーイング(Well-being)に焦点を当てた国際的な認証制度です。この認証は、従業員や建物の利用者が健康的で快適な環境で仕事をし、生活を送ることができるようにすることを目的としています。ウェルビーイングは身体的な健康だけでなく、精神的な健康や社会的な環境にも焦点を当てた総合的な概念です。
政府も毎年、「満足度・生活の質に関する調査」を行い、人々が満足できる生活を実現する政策に役立てています。同時に、企業も「健康経営」を戦略的に実践し、従業員の健康を経営視点から管理する取り組みが増えています。今後、仕事の場でも、身体的な健康だけでなく、「心の健康」や「社会的な満足度」がますます重要視されるでしょう。
まず、WELL認証が具体的にどのような基準に基づいて評価されるのかを解説します。
WELL認証は、オフィス環境が人々のウェルネスにどれだけ貢献しているか、また、生産性や効率性をどれだけ向上させているかを評価するための制度として定義されています。米国の国際WELL建築協会(IWBI)は、2014年にv1.0として初版の基準を公開し、2020年9月15日からは最新のv2.0へと移行しています。この認証は2021年6月時点で、世界97カ国での取得が確認されています。
オフィスの認証基準にはWELL認証の他に、LEEDというものも存在します。
WELL認証とLEEDの主な違いは、それぞれが焦点とする領域です。LEEDは環境の持続性を主眼としていますが、WELL認証はオフィスで活動する従業員を中心としています。WELL認証の評価は、オフィスが従業員の身体的、精神的、そして社会的な側面での良好な環境を提供しているかどうかを基に行われます。
日本においても、2017年にある大手企業がWELL認証を初めて取得しました。この認証を取得した企業は、従業員の心と体の健康を考慮したオフィスとして認知されるため、日本国内での導入がさらに進展することが予想されます。
WELL認証の評価は、10のカテゴリーを基盤に、122の評価項目(サブカテゴリ)と213のパート(サブセクション)が設定されています。この認証の基礎となる10のカテゴリとそれに関連する評価項目の内容を以下に紹介します。これらのカテゴリには、環境面への考慮だけでなく、食事や運動、精神的健康などの要因も取り入れられています。
認証取得のための評価基準には、必須のものと加点のものの2つがあります。認証を受ける際、必須基準は全て満たす必要があります。
WELL認証において、4つのランクが設定されています:プラチナ、ゴールド、シルバー、そしてブロンズ。すべてのカテゴリの必須基準をクリアすると、加点基準の評価が開始され、その結果に基づき対応するランクが授与されます。
2020年6月、国際WELLビルディング協会(IWBI)は新型コロナウイルス感染症への対策を評価する新しい基準、WELL Health-Safety Rating(WHSR)を導入しました。
この新しい基準(WHSR)は感染症専門家の指導の下、オフィス活動を行う従業員や関係者の健康を中心に設計されています。主な評価項目は以下のようになっています。
評価は27項目から成り、15項目以上を満たせばWHSR認証を受けることができます。WHSRは世界的な感染症への対応基準として位置づけられ、従業員や関係者が安心して働ける環境の整備に貢献します。
以下では、WELL認証取得のメリットについて詳しく触れていきます。
WELL認証の取得に向けた活動は、健全な経営を進める企業にとって非常に価値があります。健康経営とは、従業員の心身の健康を考慮しつつ、企業の生産性のアップを追求する経営方針を指します。
経済産業省は、健康経営において優れた実践を展開する企業を「健康経営優良法人」として評価する仕組みを持っています。この認定を受けることで、企業としての品質や信頼性が高まるため、企業のブランド価値向上が期待されます。
WELL認証の取得は、企業の社会的認知度を上げ、その結果ブランドイメージを強化することが可能です。その背後には、働くスタイルの変化や労働者の不足が指摘されています。多様な価値観の中、伝統的なオフィス勤務だけでは、働き手のワーク・ライフ・バランスを確保することが難しくなってきました。また、従業員の長期間の雇用安定のため、より良い職場環境の提供が欠かせません。
WELL認証の獲得は、従業員の健康や環境に対する取り組みが明確になるので、社会からの高い評価を受けやすくなります。
このセクションでは、WELL認証の取得が果たして必要かについて深掘りします。
WELL認証の取得は、企業の社会的なイメージ向上に資するため、企業としての信頼を高めたいと願う組織には考慮すべきかもしれません。
確かに、取得までには時間がかかることもあり、登録料や認定料といったコストも生じます。しかし、従業員の健康の向上や感染症への対策など、多くの利点が考えられるので、取得を目指す意義は確実にあると言えます。特に、社会からの評価は企業のブランド構築に寄与し、ステークホルダーへのメッセージとしても利用可能です。
さらに、健康に焦点を当てたオフィスの整備は、従業員のモチベーションを上げる効果があるかもしれません。労働者の確保が課題となる現代において、WELL認証の取得活動は、才能ある人材の確保にも繋がりうると考えられます。
確かに、WELL認証は企業に多くの利益をもたらす可能性があるものの、日本の組織には特有の難しさも伴います。元々、WELL認証はアメリカの国際WELLビルディング協会(IWBI)が提唱したもので、日本の基準に基づいているわけではないのです。
そのため、認証を得るためにはアメリカの基準に従った活動が必要となります。例として、喫煙に関する項目が日本の企業にとっての障壁となっています。WELL認証では屋内喫煙スペースの設置を許可していないのです。
しかしながら、都市によっては屋外喫煙禁止があるため、喫煙者のための適切なスペースをどう確保するかが課題となっています。WELL認証の評価項目が日本固有の問題に十分に対応していないという点が、普及への障害となっている側面もあるでしょう。
このセクションでは、WELL認証の取得手続きについての詳細をお伝えします。
WELL認証を取得する際に、書類審査の後、実地審査を受けるステップが必要です。初めに、アメリカの国際WELLビルディング協会(IWBI)での登録を行い、関連書類を整えて提出することが求められます。この登録作業はオンラインを通じて実施できます。各必須項目および追加ポイントの項目を確実に満たしていることを示すための文書を送り、提出が終わります。
提出した書類は、IWBIのセンターで審査される過程に進みます。書類審査結果が戻ってくるまで、約20~25の営業日を見込むことが一般的です。この期間中に不足や問題が指摘されることがあれば、迅速に修正して再度の提出が必要となります。
書類審査が承認された後、次はIWBIの実地調査が行われる段階となります。IWBIの担当者と調整をし、実地調査の日付を設定することが必要です。予定は、申し込み日から約4週間以降を希望することが可能です。
この実地調査では、数日間を要して環境の測定や各項目の確認等が実施されます。結果の通知は、実地調査終了からおおよそ9週間後を目処に受け取ることができます。何らかの問題点が見つかった場合、更なる時間がかかることも考えられます。
WELL認証は、有効期間が3年と設定されているため、一定の間隔で再審査を通じた更新が必要となります。さらに、認証後も、以下の点については年1回IWBIへの報告が義務付けられています。
これらの情報を適切に報告しないと、再認証の資格を維持できないので、注意が求められます。
このセクションでは、WELL認証の取得における重要なポイントを詳しく説明します。
WELL認証の取得プロセスは、適宜、専門家の意見やサポートを取り入れることをおすすめします。取得に必要な手続きや文書は英語のみで行われるため、慎重な対応が求められます。そして、審査を通過したとしても、認証が自動的に与えられるわけではないのです。
非認証の判断を受けた場合、手間とコストの二重の負担を感じるかもしれません。ですから、最初のチャレンジでの認証取得を目指すことが肝心です。難易度は決して軽視できないものなので、オフィス設計のプロフェッショナルの意見を取り入れることが望ましいでしょう。
WELL認証を目指すには、従業員の健康を重視したオフィスの取り組みが欠かせません。
例として、従業員の心身の健康を向上させるために、オフィス内を緑豊かにする試みがあった企業もいくつか存在します。オフィス緑化は、ストレスの緩和やコミュニケーションの促進、集中力アップなどの効果が見込まれており、多くの関心を引きつけています。
新しいアイディアのインスピレーションが足りない場合、既にWELL認証を取得した企業の取り組みを参照することも効果的です。
WELL認証は、日本ではまだあまり知られていない認証制度ですが、ウェルビーイングに焦点を当てたもので、現代の働く人々にとって魅力的な取り組みです。働き方改革を進めてブランド力を高め、優秀な従業員を引き寄せたい場合、WELL認証の取得を検討することをお勧めします。
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