働き方改革の一環として多くの企業がフレックスタイム制を導入しています。この記事ではフレックスタイム制の基本からコアタイムの意味、さらには遅刻・早退・欠勤の正しい対処法について詳しく解説します。柔軟なワークスタイルの実現に向けた貴重な知識を提供します。
フレックスタイム制は、勤務の開始及び終了時間を従業員が自ら選定できる制度です。日本では1987年に労働基準法の改正が行われ、1988年から実施されました。
通常の勤務形態では、企業毎に勤務の開始時間や終了時間、1日の労働時間が固定されています。しかしフレックスタイム制では、清算期間という期間が設けられています。清算期間とは、従業員が労働すべき時間を設定した期間のことです。期間中に所定労働時間を達成できれば、勤務の開始時間や終了時間、1日の労働時間を従業員の判断で設定することができます。
このように、従業員は個人の事情に合わせた勤務形態を選択できます。例えば、医療機関の受診を終えてから出勤する、あるいは親をデイケアセンターに送った後に出勤するといったことが可能になります。
フレックスタイム制を企業で取り入れるためには、労使協定によって従業員の同意を得ることが必要となります。
フレックスタイム制を取り入れることで、従業員のワーク・ライフ・バランスの向上が期待できる、離職率の削減などのメリットが存在します。
フレックスタイム制を実施することで、従業員は個人の事情に応じた勤務形態を選べるため、仕事とプライベートの調和が図りやすくなります。例えば勤務開始時間を早めに設定し、夕方以降の時間を自由に活用することも可能です。
さらに、子供の保育園の送迎を担当する曜日は勤務を早めに終え、他の曜日で労働時間を調整するといった勤務形態も実現できます。フレックスタイム制は、育児や介護等で生活環境が変動しても対応できるため、従業員のワーク・ライフ・バランスの向上に貢献します。
企業がフレックスタイム制を実施することは、従業員にとって働きやすい環境を作り出すことに繋がります。通常の勤務形態では、育児や介護といった理由で退職を考慮する人も少なくなかったのが実情です。
しかし、フレックスタイム制を採用している企業で勤めると、生活環境が変動しても働きやすい状況が維持できるため、離職率の削減が期待できます。
また、近年では報酬よりも福利厚生や勤務環境を重視する求職者が増加している傾向があります。フレックスタイム制は、企業が柔軟な勤務形態に対応していることを求職者に示すことができ、優れた人材の確保が容易になります。
フレックスタイム制を取り入れることで、従業員の業務効率向上が期待でき、不必要な残業時間や休日出勤が減少し、人件費のコストカットが望めます。従業員が少ない業務量の日は早めに退社し、多い日は労働時間を延長することも可能です。
さらに、特定の時間帯に業務量が集中する場合、出勤時間を遅らせ、その時間帯に労働時間を増やすことも選択できます。労働時間の調整により総労働時間が削減されれば、人件費の削減にも繋がります。
フレックスタイム制には、従業員間のコミュニケーション欠如が危惧される、外部関係者との連携が困難になるなどの課題も伴います。
フレックスタイム制の導入により、従業員同士のコミュニケーション取得が難しくなる可能性があります。従業員の勤務時間がバラバラになり、直接会う機会が減少するためです。
フレックスタイム制は、従来通り全ての従業員が同時に出社するわけではなく、出社しても必ずしも顔を合わせることはありません。このようにコミュニケーションの機会が減るため、フレックスタイム制導入時には、従業員間のコミュニケーション方法の見直しが重要です。コミュニケーション不足は、社内業務の効率低下や連携不足によるミスの原因となる可能性があり、予め対策が求められます。
フレックスタイム制により業務の開始時間と終了時間が固定されないため、労働時間帯によっては外部関係者との連携が難しくなる可能性があります。
担当者の業務時間外に取引先からの連絡があった場合、対応が遅れると不満を生むことも考えられます。外部関係者とスムーズに連携を取るためには、担当者を複数配置する、緊急時の連絡先を提供するなど、連携が円滑に進むように整備することが求められます。
フレックスタイム制は、従業員個々に業務の開始時刻や終了時刻を設定させるため、通常の方法では勤怠管理が難しくなる可能性があります。通常の管理方法だと、定時を超えて業務を行っていると自動で残業時間にカウントされてしまうためです。
フレックスタイム制の採用後は、定常労働時間と残業時間の区別が難しくなるため、変形労働時間制に対応できる勤怠管理システムの導入が必要になります。さらに、従業員の勤務時間が分散すると勤務態度の評価も困難になるため、必要に応じて人事評価の方法も見直すことを検討しましょう。
フレックスタイム制は、従業員間のコミュニケーションの減少や外部との連携が困難になるという問題点があります。これらの課題を解消するためには、コアタイムを設定することを考えてみましょう。
コアタイムを設定することで、全ての従業員が同時に労働する時間帯が確保されます。したがって、フレックスタイム制(完全フレックス制)のみを導入した場合の問題解決につながります。
フレックスタイム制には、コアタイムとフレキシブルタイムと称される時間帯が設けられています。コアタイムは必須の業務時間帯であり、フレキシブルタイムは出退勤の時間を自由に設定できる時間帯となります。
フレックスタイム制を効果的に利用するためには、コアタイムとフレキシブルタイムを適切に組み合わせることが重要です。
コアタイムは、従業員が業務を行わなければならない指定された時間帯を指します。休憩中の従業員を除き、全ての従業員が同じ時間帯に労働する状態が生まれます。設定する時間帯や曜日などは、都度変更することが可能です。
労使協定により従業員の合意が得られれば、自由に設定することができます。ただし、コアタイムの設定は義務ではなく、フレックスタイム制では会議やチームでの業務のスケジュール作成が困難になるため、コアタイムを設定する企業が多いようです。
フレックスタイム制では、コアタイムと併せてフレキシブルタイムと称される時間帯も設定されます。フレキシブルタイムとは、出退勤の時刻を従業員が自主的に定められる時間帯のことを指します。
例えば、出勤時間を7時から10時、退勤時間を16時から20時に設定した際、この時間枠内であればいつでも出退勤が可能となります。出退勤の時間は日々や曜日ごとに変わっても構わないので、月曜日は8時に出勤し、火曜日は10時に出勤するといったワークスタイルも実現できます。
ただ、出退勤の時間を定める時に、清算期間の所定労働時間を満たすよう配慮する必要があります。
コアタイムを設定するには、先ずフレックスタイム制を採用しましょう。フレックスタイム制を採用するには、就業規則に明記と労使協定の締結が求められます。
フレックスタイム制を採用する際には、労使協定で取り決めた内容を就業規則に明記することが求められます。清算期間が1ヶ月を超える場合は、就業規則を明記した後、管轄の労働基準監督署への届け出を行いましょう。
違反した場合、労働基準法に基づいて30万円以下の罰金が課せられます。届け出に必要な書類は、以下の通りです。
労使協定届は、各労働局の公式サイトでダウンロード可能です。ここまでのプロセスを踏まえて、フレックスタイム制の採用が可能となります。
コアタイムの時間帯は、労使協定で自由に定義できます。労使協定では、下記の6項目を明確にする必要があります。
コアタイムの対象となる従業員は、職種や業務内容などを考慮して検討しましょう。2019年4月から労働基準法の改正により、フレックスタイム制の清算期間が最長3ヶ月までに延長されました。
フレックスタイム制では日によって労働時間が変動するため、清算期間を単位として総労働時間を定めましょう。1日の標準労働時間は、総労働時間を労働日数で割った時間となります。労使協定で定めた事項は、就業規則に明記することが必要です。
ここでは、フレックスタイム制にまつわる一般的な疑問と、その回答を皆さんに提示いたします。
フレックスタイム制とは、業務のスタートと終了の時間を従業員が自由に選定できる仕組みのことを指します。この制度の導入は、従業員のワーク・ライフ・バランスを向上させ、離職率の低下をもたらすなどの利点が確認されています。
とはいえ、全ての職種がこの制度に適しているわけではありません。もし導入を考えているなら、自社の従業員の職種がそれに合致するかを精査することが重要です。
例えば、時間や場所に縛られずに働くことができる以下のような職種は、フレックスタイム制に適していると考えられます。
これらの職種は、タスクや期限を明確にしておけば、各々のリズムで仕事を進めることができるので、フレックスタイム制が実施しやすいと言えます。
客との接触が頻繁や他の部署との協働が求められる職種に関しては、フレックスタイム制が必ずしも合致するわけではありません。
例として、営業職やレセプション業務は、他者との頻繁なコンタクトが必要なため、フレックスタイム制は必ずしも適していない場合が考えられます。
さらに、医療やケア関連の職種はシフトベースの勤務や夜間勤務が入るため、フレックスタイムの採用が難しいとされています。
フレックスタイム制を採用することで、従業員は出退勤の時間を柔軟に選ぶことができるので、基本的には遅刻や早退の心配は少なくなります。ただし、コアタイムについては例外となります。
コアタイムを導入している場合、指定された開始時間から終了時間までの間は、必ず業務を行わなければなりません。従って、コアタイムの開始時間までに出勤していない場合には、遅刻として扱われます。
例えば、コアタイムが10時から16時に設定されていて、11時に出勤すると、1時間の遅刻と見なされます。コアタイムを設定している企業では、早退や欠勤の扱いも同様です。
企業がコアタイムを設定していない完全フレックス制の場合、いかなる時に出退勤しても基本的には遅刻や早退とは見なされません。欠勤した状況でも、総労働時間が規定を満たしていれば問題は生じません。
フレックスタイム制は、業務の開始時間と終了時間を従業員が自由に選定できる制度であります。しかし、完全フレックス制の場合、従業員間のコミュニケーションが希薄になる、外部との連携が困難になるといった課題が発生します。これらの問題はコアタイムを設定し、従業員が同じ時間帯に勤務する環境を作ることで解消可能です。コアタイムを設定する際には、労使協定を通じて従業員の同意を取得する必要があります。
設定する清算期間に応じては労働基準監督署への届け出も必要であり、自社に適した内容を十分に検討し、コアタイムの導入を進めることをお勧めします。
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