グラフィックレコーディング(グラレコ)とは? 描き方と利用法の解説
ノウハウ 2023.10.09

グラフィックレコーディングは記録技法の一例として知られています。1970年代のアメリカでの活用がきっかけとなり、世界各地で受け入れられました。近頃では、日本でも関連の書籍が複数出版されるほど注目を集めています。

この記事では、グラフィックレコーディングの基本的な定義や利点、ビジネスの場での実施のポイントについて解説します。

 

グラフィックレコーディング(グラレコ)とは?

「グラフィックレコーディング(グラレコ)」は、会議やプレゼンテーションの際に、ビジュアルな手法を使用してアイデアや情報を図や図解を用いて視覚的にまとめるプロセスです。

通常、グラレコアーティストは、会議やイベントの途中で情報を収集し、それを図やスケッチ、シンボル、テキストなどを組み合わせてグラフィカルに表現します。これにより、参加者は議論やプレゼンテーションの内容を視覚的に理解しやすくなり、コミュニケーションと理解を助ける役割を果たします。

実際にグラフィックを描く人は「グラフィックレコーダー」と称され、クリエイティブな職務として多くの人が活動しています。

 

グラフィックレコーディングのメリット

グラフィックレコーディングは、人の考えをわかりやすいイラストで表現するビジュアルシンキングを基本にしているため、メリットは多岐にわたり、次のような点が挙げられます。

 

視覚的な理解

グラフィックレコーディングは非言語的で直感的な情報伝達を強化します。アイコン、カラーコーディング、図形、アート要素、矢印、およびその他のビジュアルツールを使用することで、複雑なコンセプトや関係性をわかりやすく可視化します。このビジュアルアプローチは、言葉だけでは不足する場合や、異なる文化やバックグラウンドを持つ参加者とのコミュニケーションを円滑にします。また、参加者が情報を見ることで、情報の重要な面を瞬時に把握し、意思決定や問題解決に役立てることができます。視覚情報の活用により、会議やプレゼンテーションの内容が効果的かつ持続的に伝達され、知識共有が円滑に進むのです。

 

情報の集約と要約

グラフィックレコーディングは大量の情報や長い議論から本質的な内容を抽出するプロセスを簡素化します。図やグラフ、カラーコーディングなどのビジュアルツールを活用することで、参加者は一目で主要なトピックや議題を識別でき、議論の焦点を保つのに役立ちます。このアプローチにより、情報の過剰な詳細に迷うことなく、重要なポイントに集中することができます。結果として、会議やプレゼンテーションが効率的に進行し、参加者の時間とエネルギーを節約できます。また、後で情報を振り返る際にも、ビジュアルな要約は迅速な復習を可能にし、短時間で重要な内容を再確認できます。

 

視覚的な記録

グラフィックレコーディングは会議やイベントの進行と内容を図やイラストとして捉え、保存します。これにより、会議のプロセスや討議がビジュアルに捉えられ、参加者は後で議論の経過や結論を迅速に理解できます。また、視覚的な記録は文字情報だけのメモよりも情報の記憶と記録に残りやすいため、後で復習や共有が簡単です。また、情報の共有や報告書作成において、グラフィックレコーディングのアウトプットは強力なコミュニケーションツールとして役立ちます。

 

参加者のエンゲージメント

グラフィックレコーディングが行われる場では、参加者は視覚的な要素に引き込まれ、より積極的に関与しやすくなります。これにより、会議やイベントがより活気づき、参加者の興味を引きます。

 

メモの代わり

グラレコはメモや報告書の代わりとして機能することがあります。参加者は情報をビジュアルに捉え、後で復習しやすくなります。これにより、会議の内容が見逃されることが減少し、効果的なフォローアップが可能になります。

 

これらのメリットにより、グラフィックレコーディングは効果的なコミュニケーションツールとして幅広く利用され、情報伝達や協力の増進に貢献します。また、参加者のイラストを加えて発言をまとめると、まだ発言していない人も明らかに見えてきます。すべての参加者に意見を求めることで、新しいアイデアの創出につながる可能性が高まります。

また、通常のミーティングでは、高い立場の人の発言力が強まりがちです。そのため、発言すること自体をためらう参加者がいるかもしれません。グラフィックレコーディングは価値ある情報をビジュアル化するため、立場に関わらず、すべての参加者が平等に扱われます。自分の意見が反映されれば、議論に参加しているという意識を持てるため、参加者全員に一体感が生まれるでしょう。

 

グラフィックレコーディングの書き方と運用法

グラフィックレコーディングはアートスキルが必要なわけではなく、誰でも学び、実践できるスキルです。

 

グラフィックレコーディングのレイアウトパターン3種

01. タイムライン型 (Timeline Layout)

特徴: タイムライン型のグラフィックレコーディングは、イベント、プロジェクト、またはストーリーの時間的な経過を視覚的に表現します。

使用例: タイムライン型は、プロジェクトの進捗状況を表示する場合や、歴史的な出来事を示す場合に適しています。時間軸に沿ってイベントやマイルストーンが配置され、各イベントにはテキストやアイコンが添えられます。

 

02. 吹き出し型 (Speech Bubble Layout)

特徴: 吹き出し型のグラフィックレコーディングは、対話や発言を示すのに使われ、通常、吹き出しの形をしたコンテナ内にテキストやアイコンが配置されます。

使用例: 吹き出し型は会議やディスカッションの内容を視覚的に記録する際に有用です。発言者ごとに吹き出しを配置し、その内容を要約して表示します。これにより、議論の流れや異なる発言者の視点が明確になります。

 

03. 発散型 (Mind Map or Radial Layout)

特徴: 発散型のグラフィックレコーディングは、中心から放射状に広がるブランチを持つ樹状の図形を使用し、中心からの連想や関連性を示します。

使用例: 発散型はアイデアマップやコンセプトの整理に適しています。中心のトピックやアイデアから出発し、関連するサブトピックやアイデアをブランチに記録します。これにより、複雑なコンセプトを視覚的に整理し、理解を助けます。

 

グラフィックレコーディングの書き方

STEP01. 基本道具の準備

  • ボードや紙: グラフィックレコーディングは通常、大きなホワイトボード、図解用の紙、または専用のノートブックに行います。
  • マーカーペン: 複数の色のマーカーペンを用意して、アイデアや情報を視覚的に区別できるようにします。

イベントや会議が進行する際、情報収集の段階では話題や発言内容をリスニングし、内容を理解します。この段階で、どのような情報が重要で、前述した3種のうち、どのレイアウトパターンが適しているかを考える手がかりを見つけることができます。

 

STEP02. リスニングと要約

会議やプレゼンテーションをよく聴き、主要なポイントやキーワードを把握し、適切なレイアウトパターンを選択します。例えば、議論が対話的であれば吹き出し型が適しているかもしれません。時間的な経過を示す場合はタイムライン型を選ぶかもしれません。また、情報の複雑さや相互関係によっても選択が影響されます。重要なアイデアやトピックを選択し、要約するためのフレームワークを考えます。

 

STEP03. シンボルとアイコンの使用

シンボルやアイコンを活用して、アイデアやコンセプトを簡潔に表現します。例えば、雲のアイコンはアイデアを表すことがあります。

 

STEP04. テキストの追加とカラーコーディング

グラフィックにテキストを組み合わせて説明を補完します。簡潔なキャプションやラベルを使って、ビジュアル情報に文脈を提供します。また、複数の色を使用して情報をカテゴライズし、重要な要素を強調します。

 

STEP05.  図形と線の活用

図形や線を使ってアイデアを結びつけたり、階層を示したりします。矢印や線は関係性を強調するのに役立ちます。

 

STEP06. スケッチと速書きをリアルタイムで更新

ビジュアルスタイルにこだわり過ぎず、速くスケッチしてアイデアを捉えましょう。完璧さよりも伝えることが重要です。また、リアルタイムで更新し、議論やプレゼンテーションの進行に合わせて情報を追加・修正します。

 

グラフィックレコーディングはミーティングの進行に応じて書く必要があるため、スピード感も大切です。より明瞭に、早く書くためには、できるだけシンプルな絵や図形を利用することがキーとなります。簡単なイラストであれば、〇や△、□といったシンプルな図形を組み合わせるだけで十分表現できます。例えば、△の下に□を描くと家が描け、△の下に縦の一本線を描けば木が描けます。〇の中に目や口を描き、人の表情を表現することも可能です。また、できるだけ太い線で描くことを心掛けましょう。

また、練習と経験が必要です。初めはシンプルな図やアイコンから始め、次第にスキルを向上させていくことをお勧めします。繰り返しの実践により、情報を効果的にビジュアルに表現できるようになります。

 

作成したグラフィックの共有

グラフィックレコーディングは、単に描くだけで完了するものではないのです。参加者や非参加者など、全ての関係者と共有することで、初めて効果が発揮されます。作成したグラフィックはリアルタイムで共有しながら描くため、その場で議論の内容を振り返ったり深掘りしやすくなります。議論をさらに深めるには、参加者のフィードバックや感想を書いた付箋をボードに貼り付けてもらうのも効果的です。非参加者には、グラフィックをプリントアウトしたものを配布する、またはデータをメールで添付してシェアしましょう。

 

グラフィックレコーディングの実践テクニック

グラフィックレコーディングは、誰もが直ちに上手く描けるわけではありません。分かりやすくかつスピード感を持って描くためには、前もって知識を深めておくことが重要です。ここでは実践のテクニックを紹介します。

 

事前に議論のテーマを理解しておく

理解しやすいグラフィックを描くためには、議論のテーマに対する一定の知識が不可欠です。知識が不十分な状態では、効果的にグラフィックにまとめることが困難です。グラフィックは、テーマの内容を把握した上でこそ表現可能です。そのため、内容を速やかに理解できるよう、事前にテーマに関する知識を身に着けておくことが求められます。

 

グラフィックレコーディングについての書籍を閲覧する

日本でもグラフィックレコーディングの重要性が認識され、多くの書籍が出版されています。書籍の中には、日本のグラフィックレコーディングの専門家が執筆したものもあります。

例えば、初心者向けの基本書は、グラフィックレコーディングの基本からグラフィックの作成までのプロセスを理解するのに役立ちます。これは、自社の問題解決に非常に有用でしょう。さらに、グラフィックレコーディングの技術を身につけるワークブックも出版されています。これらの書籍を利用すれば、ビジュアルシンキングの基本からグラフィックレコーディングに要する知識までを習得することができます。

 

グラフィックレコーディングの講座に参加する

グラフィックレコーディングの知識や技術は、オンラインセッションでも習得できます。オンラインセッションなら自宅で学ぶことができるため、近隣にスクールが無い場合でも利用しやすいのが特徴です。費用や講座内容は各々異なるため、自分に適したオンラインセッションを選んでみましょう。

 

グラフィックレコーディングにおすすめのツール

グラフィックレコーディングを利用したいけれど、「手描きのイラストは苦手」「うまくまとめられるか不安」と感じている人もいるでしょう。ここでは、おすすめのアイテムをご紹介します。

 

インタラクティブホワイトボード

インタラクティブホワイトボードとは、ドキュメントやデータなどのデバイス情報を画面に表示できるホワイトボードです。必要な情報を直接書き込める機能やデータとして保存できる機能など、多彩な機能が装備されています。また、Web会議機能があれば、離れた場所にいるコラボレーターとオンラインで接続し、ドキュメントを共有しながら会議を実施することも可能です。

これまでは主に教育機関で利用されていましたが、ビジネス環境でもニーズが高まり、導入する企業が増加しています。

 

グラフィックレコーディング専用アプリ

グラフィックをスムーズに作成するためには、グラフィックレコーディング専用アプリが推奨です。アプリには、アプリ上でグラフィックレコーディングを実施するものと、紙やホワイトボードに書いたものを取り込んで編集するものがあります。初心者の方は、スケッチを描く、文字を書き込むといったシンプルな機能の使い心地の良いアプリを選んでみましょう。

 

グラフィックレコーディングの注意点

グラフィックレコーディングを実施する際には、受け手に明確かつ簡潔に表現することが重要です。しかし、議論内容が省略されたり、受け手に余計な印象を与えてしまったりすることがあります。

 

議論内容が省略されるリスクがある

グラフィックレコーディングでは、ミーティングの進行に合わせてスムーズに対応することが求められます。グラフィックの作成が遅れると参加者の理解が停滞し、議論が滞ってしまう恐れがあります。基本的に要点を把握するための手法であり、詳細な内容までは記録されません。記載されていない内容の中には、有意義な情報が含まれている可能性もあるため、見落とさないように注意が必要です。

 

「与える印象」に十分配慮する

グラフィックレコーディングの大きな課題の一つは、絵や文字が受け手に余計な印象を与えてしまうことです。例えば、本来重要でない部分を太字や鮮やかな色にするだけで、「重要な要素」として印象を残してしまう可能性があります。グラフィックレコーダーは、ミーティングの内容に合わせてメリハリをつけた書き方を工夫する必要があります。「どの部分を強調するべきか」を適切に考慮し、グラフィックに反映させることが重要です。

 

グラフィックの認識困難さ

グラフィックレコーディングが登場するまでは、ミーティング内容は議事録としてテキスト情報でまとめられるのが一般的でした。それゆえ、文字情報に慣れている参加者は、絵や図形を使ったグラフィックを認識しにくい可能性があります。絵や図形による表現はわかりやすいとされていますが、参加者によっては余計な情報となってしまうこともあります。より多くの参加者に明瞭に伝えるためには、グラフィックレコーディングに固執する必要はないかもしれません。グラフィックレコーダーは、参加者層やテーマに応じて表現を工夫することが求められています。

 

グラフィックレコーディングに関するQ & A

最後に、グラフィックレコーディングについての興味深い疑問をいくつかお伝えします。

 

Q.グラフィックレコーディングは外部に依頼可能ですか?

グラフィックレコーディングを専業としている人が存在するので、プロフェッショナルに依頼することはできます。ただし、プロフェッショナルに依頼すると1時間あたり数万円程の料金が発生します。料金は時間と内容によって変わるので、具体的な費用は依頼する際に確認することが重要です。さらに、内容を編集しイラスト化したい場合は、別途イラスト制作の依頼が必要になるでしょう。自社でグラフィックレコーディングを実行できる人材が見当たらない場合は、プロに相談するのも良い選択肢です。

 

Q.グラフィックレコーディングに特化した資格はありますか?

現状(2023年1月時点)では、グラフィックレコーディングに特化した資格は存在していません。プロフェッショナルとして活動しているグラフィックレコーダーもいれば、趣味や副業で実践している人もいます。それぞれが専門領域や得意分野を持っているので、依頼する際にはテーマや内容に合わせて適切な人選を心掛けましょう。

 

まとめ

ミーティングの内容をグラフィックに反映させるためには、情報を理解する能力や情報を再構築する技術が求められます。そのため、イラストが得意な人であっても、すべての人がグラフィックレコーディングの高いスキルを持っているわけではありません。

プロのグラフィックレコーダーに依頼する方法もありますが、個人のスキルには差があり、費用も掛かります。自社でグラフィックレコーディングを導入を検討しているのであれば、小規模なミーティングからグラフィックレコーディングを試し、グラフィックレコーダーを育てるのも良い方法かもしれません。

 

【OFFICE】会社・サービス案内

オフィスの企画・設計デザイン・施工サービスの案内資料です。ミッションや役員紹介、売上推移などの会社情報や、ワークスペースプロデュース〜デザインの考え方やコンセプト、こだわり、私たちの強みを網羅的にご紹介しています。

無料ダウンロードはこちらから

 

【オフィス移転の最強ガイドブック】なかなか聞けないコスト削減ポイント

オフィス移転を考えているすべての企業の皆様の一助となるべく、業界人しか知らない裏事情や知っておかないと損してしまうようなポイントを詳しくまとめました。

無料ダウンロードはこちらから

 

【サービスの流れや詳しいタスクを知りたい方必見!】オフィス移転の物語

「オフィス移転が初めて!」という担当者の方、経営者の方必見!ご提案までの間私たちが考えていることや、工事はどういうふうに進んでいくのか。この機会に、ぜひご一読ください。

無料ダウンロードはこちらから

ご相談は
こちら