企業の移転手続き|必須の書類から期限、詳細ガイドまで
ノウハウ 2023.10.09

企業がオフィスの位置を変更する際、個人の引っ越しと比較して、法務局税務署において事前にいくつかの必要な手続きを完了させる必要があります。各プロセスには固定の期日が設定されているため、計画的に進めていくことが大切です。

例えば、法務局での対応期限は移転日から2週間以内に設定されております。税務署での手続きは、法務局での処理後いつでも構いませんが、移転日から速やかに行うことが推奨されています。

この記事では、それぞれのプロセスや必要書類、申請期限等について詳細に説明いたします。

 

企業のオフィス移転後の住所変更手続きとは?

オフィスを移転した後、法人として初めて提出した各種届出の場所に対して、住所の変更を通知する手続きが必須となります。これは、個人の転居時とは違う、特定の手続きが要されます。

では、法人の住所変更の基本的な概念について深掘りしていきます。

 

会社登記簿の内容更新の手続き

法人の住所の変更の際には、会社登記簿の詳細を更新することが求められます。これは、起業時に法務局で作成された登記簿において、本店の部分を正確に修正する必要があるからです。

商号区

  • 会社法人番号
  • 商号
  • 本店
  • 公告の方法
  • 会社の成立年月日

 

目的区

  • 目的

 

株式・資本区

  • 可発行株式の最大数
  • 株券を発行していること
  • 発行済みの株式の種類、数及び総数
  • 資本金の総額
  • 株式の譲渡に関する規定

 

役員区

  •  取締役
  •  監査役
  •  代表取締役

 

会社状況区

  • 取締役会の設置について
  • 監査役の設置に関する事項

 

登記記録区

  • 登記された事由及びその年月日

最終的に、上述の基本情報のうち、法人が住所を変更する際は、商号区に記載されている本店の情報を更新しなければなりません。

 

住所変更の際の費用について

法務局にて、会社登記簿に記載されている商号区の本店の情報を修正する際、標準で30,000円の登録免許税が必要とされます。この金額は、移転が法務局の管轄内か、管轄外かによって変動します。

  • 管轄内での移転の場合:30,000円
  • 管轄外での移転の場合:60,000円

もし移転が管轄外である場合、費用は60,000円となり、管轄内での移転の2倍の金額になります。これは、移転元と移転先の双方で登録免許税が発生するためです。

法人の住所変更手続きは、経営者や社員が自ら行うことができます。ただし、このプロセスをスムーズに進めるため、また専門的な知識が必要な場合、司法書士に依頼することも一つの選択肢となります。その際、40,000円から50,000円程度の報酬が発生し、こちらの金額は司法書士や事務所によって異なるので、依頼前に確認を行うことが大切です。

念のために言及しておきますが、このような手続きを行うことで、法務局に正確な情報が提供され、企業としての信頼性も保たれます。法人としての責任を果たし、必要な費用を計画的に準備し、正確な手続きを進めていきましょう。

 

企業の所在地の変更:移転先別に手続きを説明

もし移転先が現在の所在地の法務局の管轄を超える場合

もし企業の新しい住所が現在の法務局の管轄外に位置する場合、手続きは株主総会の決議を以て始まります。

 

1.株主総会での決議の実施

企業の本店所在地は、定款に記載されており、所在地を変更する際、特に最小行政区画を変える場合には、定款の変更が必須となります。定款を変更するためには、会社の最高の意思決定機関である株主総会での承認が不可欠です。定款の変更には特別な決議が要り、出席株主が議決権の過半数を有し、かつ、出席した株主の議決権の3分の2以上が賛成する必要があります。

移転先や移転日を正式に決定するには、取締役会を開催します。もし、取締役会が設置されていない場合は、取締役の過半数が一致すれば良いでしょう。法務局での手続きの際、株主総会議事録や取締役会議事録(または取締役の決定書)の提出が必要となるので、それらの文書の作成を忘れないようにしましょう。

 

2.オフィスの移転

株主総会および取締役会での重要な決議が完了したら、次にオフィスの移転に取り組みます。

移転が完了した後、事業活動が速やかに再開できるように、オフィスのレイアウト変更やインターネット環境の設定など、多くの準備作業が必要となります。オフィスの移転に伴う具体的な手順については、次の章で詳しくご紹介していますので、是非ともご参照ください。

 

3.法務局での登記申請手続き

オフィスの移転が無事完了したら、次のステップは法務局での住所変更の手続きです。移転日から2週間以内の申請が必須となっているので、移転後は速やかに手続きを進めましょう。移転先が現住所の法務局の管轄外である場合、移転元の法務局で、移転先での手続きも同時に行う必要があります。法務局への提出書類には、本店移転登記申請書、株主総会議事録、取締役会議事録(あるいは取締役決定書)などが含まれます。

 

4.各種機関への報告

法務局での手続きが終わった後、年金事務所や労働基準監督署など、関連する各種機関への報告を行います。いくつかの機関では申請期限が設定されているため、移転後は可能な限り迅速に手続きを行うよう努力しましょう。

 

同一法務局管轄内の別市区町村への移転

法務局の管轄内で市区町村が変わる場合、株主総会において定款の変更を決議する必要は基本的にありません。ただし、定款で本店所在地が地番まで詳細に記載されている場合は例外として、このような特定の情報の変更には、株主総会における特別決議が不可欠となります。従って、先ず初めに定款において本店所在地がどの程度詳述されているかを確認することが重要です。

法務局管轄内での移転では、原則として取締役会のみを開催し、移転先や移転日についての決議を行います(取締役会を設置していない場合は取締役の決定になります)。株主総会や取締役会での決議が終了した後のプロセスは、「移転先が現住所のある法務局管轄外の市区町村の場合」と類似しています。

移転完了後には、法務局を含む各種機関での手続きが必要となりますが、これらの詳細については、「法人の住所変更における必要書類・届出先および申請期限」にて詳しく説明します。

 

法人の住所変更の際の必要な手続きと書類、そして期限

年金事務所

  • 健康保険・厚生年金保険適用・事業所所在地・名称変更(訂正)届
  • 登記事項証明書

提出期限:移転日より5日以内

 

労働基準監督署

  • 労働保険名称・所在地等変更届
  • 労働保険関係成立届

提出期限:移転日の翌日から10日以内

 

公共職業安定所

  • 雇用保険事業主事業所各種変更届
  • 給与支払者(特別徴収義務者)の所在地・名称変更届
  • 登記事項証明書

提出期限:移転日から10日以内

 

法務局

  • 本店移転登記申請書
  • 株主総会議事録(定款変更がある場合)
  • 株主リスト
  • 取締役会議事録または取締役決定書(取締役会を設置していない場合)
  • 印鑑届出書(管轄外の場合)
  • 印鑑カード交付申請書(管轄外の場合)

提出期限:移転日から2週間以内。ただし、年金事務所での手続きが関わってくるため、5日以内に完了させる必要があります。

 

税務署

  • 異動届
  • 所得税・消費税の納税地の異動に関する届出書
  • 給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書
  • 登記事項証明書

法務局での手続き後、速やかに対応が必要です。

 

消防署

  • 防火対象物使用開始届出書
  • 防火対象物工事等計画届出書
  • 防火・防災管理者選任(解任)届出書
  • 消防計画作成(変更)届出書

提出期限:移転日の7日前まで

 

郵便局

  • 転居届

新住所や移転日が確定したら、速やかに手続きを行ってください。

 

警察署

  • 自動車保管場所証明申請書

新住所や移転日が確定したら、速やかに手続きを行ってください。

 

金融機関

  • 通帳
  • 届出印
  • 本人確認書類
  • 登記事項証明書

新住所や移転日が確定したら、速やかに手続きを行ってください。

 

自治体

  • 法人等異動届出書
  • 給与支払者(特別徴収義務者)の所在地・名称変更届出書
  • 登記事項証明書

自治体によって、必要な手続きや書類が異なる場合があります。

 

法人の住所変更においては、提出期限が迫っている書類から順に、各所への届出や申請を進めていく必要があります。

 

年金事務所の手続き

移転に伴う年金事務所での手続きは、特に速やかに行わなければなりません。具体的には、移転日から5日以内に、以下の書類を準備し、住所変更の報告を忘れずに行ってください。

  • 健康保険・厚生年金保険適用事業所所在地・名称変更(訂正)届
  • 登記事項証明書

重要なポイントとして、登記事項証明書には、移転後の詳細な内容が明記されている必要があります。このため、年金事務所での手続きに先立ち、法務局での必要な手続きが全て完了していることを確認してください。

健康保険・厚生年金保険適用事業所所在地・名称変更(訂正)届については、日本年金機構の公式ウェブサイトよりダウンロードが可能です。

 

労働基準監督署の規定と履行すべき義務

労働基準監督署では、移転日の翌日から10日以内に、必要な書類を整え、手続きを進める必要があります。

  • 労働保険名称・所在地等変更届
  • 労働保険関係成立届

労働保険名称・所在地等変更届は、移転後の新しい所在地の労働基準監督署で取得できます。この書類は複写式用紙なので、窓口での手続き前に、所得しておきましょう。

労働保険関係成立届については、厚生労働省の公式ウェブサイトからダウンロードができます。

 

公共職業安定所での報告手続き

公共職業安定所では、移転日から10日以内に、住所変更の報告をおこなう必要があります。ただし、労働基準監督署で労働保険関係成立届を先に提出しておくことが要求されます。

手続きに必要な書類は、以下の通りです。

  • 雇用保険事業主事業所各種変更届
  • 給与支払者(特別徴収義務者)の所在地・名称変更届
  • 登記事項証明書

雇用保険事業主事業所各種変更届は、ハローワークインターネットサービスで、給与支払者(特別徴収義務者)の所在地・名称変更届は、各市区町村の公式ウェブサイトからダウンロードが可能です。また、登記事項証明書の提出が必須ですので、公共職業安定所に向かう前に、法務局での手続きを完了しておいてください。

 

法務局での手続きと注意点

法務局での手続きは、移転日から2週間以内が申請期限ですが、可能であれば5日以内に完了させることを強くお勧めします。これは、年金事務所での手続きで必要となる登記事項証明書を法務局で取得する必要があるためです。

法務局での手続きには、以下の書類が必要です。

  • 本店移転登記申請書
  • 株主総会議事録(定款変更がある場合)
  • 株主リスト
  • 取締役会議事録または取締役決定書(取締役会を設置していない場合)
  • 印鑑届出書(管轄外の場合)
  • 印鑑カード交付申請書(管轄外の場合)

本店移転登記申請書は、法務局の公式ウェブサイトからダウンロードができます。

移転先が現住所の法務局の管轄外の場合は、住所変更と同時に新しい印鑑カードの発行手続きも合わせて行うようにしましょう。

 

地方税務局

移転に先立ち、移転する前の地域の地方税務局で、必要な手続きを進める必要があります。具体的な提出期限は定められてはおりませんが、法務局での全ての手続きが終わった後、遅滞なく対応することが一般的に推奨されています。

以下の書類が必要となります。

  • 変更届
  • 所得税および消費税の納税所在地変更届出書
  • 給与支払事務所の設置・変更・廃止届出書
  • 登記事項証明書

国税庁の公式ウェブサイトを通じて、登記事項証明書を除く全ての書類をダウンロードすることができます。

 

追加手続き

法人が住所を変更した後は、様々な機関で追加の手続きが必要になります。

  • 消防署
  • 郵便局
  • 警察庁
  • 金融機関
  • 地方自治体

移転先の地方自治体には、法人市民税の観点から、法人等異動届出書および登記事項証明書の提出が求められます。また、社員が居住する各自治体には、給与支払者(特別徴収義務者)の所在地・名称変更届出書及び登記事項証明書を提出しなければなりません。

金融機関から送られる転送不要の郵便物は、新しい住所には送られてこないので、新しい住所が確定した段階で、郵便局での手続きを忘れずに行ってください。消防署での手続きには申請期限があり、移転日の7日前までに行う必要があります。

このような各種の手続きは、移転に伴う多くの要件や規定をクリアするために重要ですので、注意深く、かつ迅速に対応してください。

 

法人移転に伴う注意点と手続き詳細

以下では、法人の住所変更にあたって重要な注意点や手続きについて詳しく説明致します。

 

商号の重複確認と移転先の調査

移転先で同一商号が既に登記されている場合、住所変更は受理されません。これは、商業登記法第27条に基づき、同一の住所に同一商号の登記が許可されないという規定があるためです。

複数の企業が入居する大規模オフィスビル等では、同一の商号が存在する可能性が高まります。したがって、移転の決定を行う前に、商号の調査を行うことが重要となります。商号調査とは、指定された住所に、同一商号の会社が存在しないか確認する作業です。法務局や法務省の登録情報サービス等を利用して行うことができます。

 

期限の遵守が基本

法人の住所変更に関する手続きは、定められた期限内に完了させるのが基本原則です。

期限を過ぎた場合でも手続きは受け付けられますが、違反に伴うペナルティが課せられる可能性があるため、慎重な対応が求められます。例えば、登記懈怠と見なされた場合、企業の代表者は最大100万円の罰金に直面する可能性があります。少数の日数の超過であれば罰金が課されないこともありますが、他の関連機関での手続きも考慮し、移転が完了したら迅速に手続きを行うべきです。

 

管轄範囲による書類の違い

もし移転先が現在の法務局の管轄外の場合、管轄内での移転よりも、提出が必要な書類が増えます。追加される書類には、本店移転登記申請書2部、印鑑届出書、及び印鑑カード交付申請書が含まれます。

 

管轄内への移転に必要な書類

  • 本店移転登記申請書
  • 株主総会議事録(定款変更が含まれる場合)
  • 株主リスト
  • 取締役会議事録もしくは取締役決定書

 

管轄外への移転での必要書類

  • 本店移転登記申請書(2部)
  • 株主総会議事録
  • 株主リスト
  • 取締役会議事録または取締役決定書
  • 印鑑届出書
  • 印鑑カード交付申請書

2部の本店移転登記申請書が必要なのは、移転前と移転後の手続きを同時に行う必要があるからです。

さらに、移転前の場所で交付された印鑑カードは無効となるので、印鑑届出書と印鑑カード交付申請書を揃えて、移転前の法務局に提出しなければなりません。

 

法人の移転における住所変更についての一般的な問い合わせ

このセクションでは、法人の住所変更について一般的によく寄せられる疑問について解説いたします。

 

登記が完了するまでに要する時間は?

法務局にて全ての必要書類が提出された後、登記が完了するまでの期間は通常、おおよそ1週間から10日程度とされています。

ただし、法務局の混雑状況により、所要日数は変動する可能性がございますので、移転が完了次第、迅速に必要な手続きを開始しましょう。いくつかの法務局では、公式ウェブサイトや窓口で登記完了の予定日を明示しておりますので、その情報を利用し、各種の手続きの計画を立てることができます。また、提出書類に不備が存在する場合、通常よりも多くの日数を要する可能性があります。そのため、提出前に書類の内容を十分に確認し、確実に手続きを進めていくことが重要です。

 

自分で手続きを行うべきか、専門家に依頼すべきか?

自社で手続きを行う場合、約40,000〜50,000円の司法書士への支払いが削減できます。ただし、手続き自体が複雑であり、本店移転登記申請書の作成には特定の知識が求められます。また、手続きには一定の申請期限が存在するため、スムーズな処理のためにも専門家への依頼がお勧めです。

 

変更登記をサポートするツールの利用

できる限り自社での手続きを望む場合、変更登記をサポートするツールの利用が一つの選択肢となります。これらのツールを使用することで、必要な情報の一部を入力するだけで、住所変更に必要な書類が自動で生成されます。

自社でのタスクは、生成された書類に印を押し、収入印紙を添付し、法務局へ郵送するだけです。この方法で、書類作成にかかる時間と労力が大幅に削減され、効率的に業務を進めることができます。ツールの費用は、主に10,000円程度となっています。

 

オンラインでの申請は許されているのか?

法務局での住所変更手続きは、代表取締役がマイナンバーカードを利用することで、オンラインでの申請が可能となります。

マイナンバーカードの情報を読み取るために、ICカードリーダライタの使用が必要となります。オンライン申請のプロセスは、以下のようになります。

  • 申請書情報の作成
  • 申請書情報への電子署名の追加
  • 申請書情報の送信
  • 登録免許税の支払い
  • 必要書類の提出

必要な書類は法務局の窓口、または郵送にて提出ができます。

 

まとめ

オフィスの移転は、住所の変更以外にも、新しいオフィスのレイアウトの計画や、取引先への通知など、多くの検討事項が発生します。円滑に業務を継続するためにも、移転前後の住所変更手続きを含め、事前に計画を練り直しましょう。

特に、法務局と年金事務所での手続きは移転後5日以内に完了させる必要がありますのでご注意ください。さらに、移転先でのオフィス家具の選定も考慮する必要があります。

UNION TECでは、最適なレイアウトやオフィス家具の選定のアドバイスを行っております。新しいオフィスの設計に困った際は、何でもUNION TECまでご相談ください。

 

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