こんにちは! ユニオンテック マーケティング担当のYです。
本コラムでは「従業員・企業がともに成長していけるオフィスになるための知識」を継続的にお伝えしていきます。
今回は、冒頭の通り、働きやすいオフィスにするために、従業員が「働きにくい」と感じているオフィス内の集中力の妨げに繋がっている要素について書いてみました。
唐突ですが、日本企業の労働生産性が伸び悩む現在、その課題を解決するために必要とされているのが、組織力の強化やそのための「働き方改革」です。そこで昨今、働き方改革に付随して『従業員エンゲージメント』という考え方が、企業において重要視されるようになってきていることはご存知でしょうか。
エンゲージメントとは、端的に言えば従業員の『「I Love Company」度合い』を数値化したものになります。かなり大まかに説明するとこのような流れになります。
「オフィスが使いづらい」▶︎「業務効率低下」▶︎「会社に不満」▶︎「モチベーションが下がる」▶︎「会社に期待しない」▶︎「業績悪化」
「オフィスが働きやすい」▶︎「業務効率向上」▶︎「仕事が評価されて会社に好感」▶︎「モチベーションが上がる」▶︎「会社のために貢献したい」▶︎「業績UP」
上記における「仕事が評価されて会社に好感」「モチベーションが上がる」「会社のために貢献したい」はエンゲージメントです。
ユニオンテックでは、オフィス環境によって、従業員の『「I Love Company」度合い』(エンゲージメント)を高めることができると考えています。中でも、オフィス移転や改装はその絶好機です。「働きやすさ」「働き方改革」にもさまざまなアプローチがありますが、今回は働きやすいオフィスの根幹となる「仕事に集中できるワークスペース(執務室)」に重点を置いて考えていきましょう。未だに日本の多くの企業で採用され続けている、「オープンオフィスレイアウト」を題材としました。
もちろん、コミュニケーションが取りやすい、スペースを有効に使えるなどのメリットもあるのですが、“オープンオフィスレイアウトだけ”の環境だとデメリットもあるということが前提の話になります。
引用:JOIFA『「オフィスワーカーから見た、オフィス環境ニーズのトレンド」 を探るための調査の実施と、分析結果を踏まえた提言・提案 』ワーカーアンケート集計・分析結果報告より
本題へ入る前に、日本のワーカーたちが、自分のオフィスについてどのように感じているかを、アンケートから見ていきます。
上のグラフは、『一般社団法人 日本オフィス家具協会 顧客政策委員会』(JOIFA)が2017年に発表した、『「オフィスワーカーから見た、オフィス環境ニーズのトレンド」 を探るための調査の実施と、分析結果を踏まえた提言・提案 』ワーカーアンケート集計・分析結果報告から抜粋したデータです。
グラフの赤い部分に注目してください。そこに示されたパーセンテージは、オフィス内装や家具に満足していない人たちの割合です。「働きやすいオフィス」とはかけ離れた結果だと思います。
この報告書は、首都圏に存する事業所に勤務するワーカーに対し、日本オフィス家具協会がインターネット調査を行って得られた集計結果になります(調査依頼数 4,913 有効回答数 3,316)。
引用:JOIFA『「オフィスワーカーから見た、オフィス環境ニーズのトレンド」 を探るための調査の実施と、分析結果を踏まえた提言・提案 』ワーカーアンケート集計・分析結果報告より
その一方で、グラフ2を見てもらえばわかりますが、ワーカーたちはオフィス環境が、成果や意欲に影響すると思っていることが明らかになっています。それは即ち、「オフィスが働きやすくなれば、もっと会社に貢献できるのに」という、ワーカーたちの会社へ対する期待の裏返しとも言えます。
今現在もアイランド式のオープンオフィスレイアウトの中で働いているという人が多いのではないでしょうか。日本ではこれまで、多くの企業が働きやすいオフィスとしてこの形を採用してきました。むしろ、働きやすいかどうかをそこまで意識せずに導入したというところが実際でしょう。
オープンオフィスレイアウトとは、パーテーションなどもなく横一列に机が並び、対向にも同様に机が置かれた、文字通り島型のようなデスク配置のことを指します。「お誕生日席」に、上司が座っている形が典型的なものです。
筆者もオープンオフィスレイアウトの中で働いたことがありますが、仕事中の集中が妨げられたのは、周囲のEnterキーのハードヒット音や周囲の人同士の会話、電話の声、同僚が何度も通過する背後の気配、向かいの人の動作や会話などでした。
近年はさまざまな脳に関する研究・調査が進んでおり、オープンオフィスレイアウトの中では、脳が優秀すぎるあまりに、働く上での不利益(生産性の下降)に繋がっているケースが報告されています。視覚情報以外にも、私たちの脳は他者の話し声や他人から見られているような感覚も敏感に感じ取るのです。では、具体的にそのいくつかを見ていきましょう。
なお、ここまで書くと、オープンオフィスレイアウトが「悪」かのように感じるかもしれませんが、オープンオフィスレイアウトにもメリットはあって、働き方によってはその方が仕事がしやすい場合などもあるのです。詳しくは下記記事もご覧ください。
ウォール・ストリート・ジャーナル(米・経済紙)の記事では、視界に入る物の動きなどの視覚的ノイズがワーカーの集中を阻害することに言及していました(https://www.wsj.com/articles/why-you-cant-concentrate-at-work-1494342840)。
ここで語られている視覚的ノイズとは、オープンオフィスレイアウトで仕事をしている人たちにとっては、視界の中のモニター外の領域に写り込む、人やモノ、その動きです。
先ほどの筆者の例を当てはめるならば、向かいの人の動作などがノイズということです。
米・プリンストン大学の心理学、神経科学研究所のSabine Kastner教授の調査によれば、脳は視野に入るものの動きを認知してしまうため、集中するためにはそれらを除去しなければならないのですが、私たちの脳は、視覚的ノイズをブロックする能力に長けていないと説明しています。
その結果、脳は集中できないだけでなく、さまざまな視覚情報を処理せねばならないために能力を浪費し、その機能が衰えてしまうと言うのです。
前後左右からの視線を意識しないで済むレイアウトの一例
ワーカーの集中力を散漫にする要素はいくつもありますが、他者から感じる気配(視線)もそれに該当します。
オープンオフィスレイアウトのようにパーテーションもなく、横並びにワークデスクが配置されていると、実際には見られていなくても、向かい側に座る同僚からは監視されているような気分にもなりますし、左右の同僚からはいつ何時も自分のモニターを覗き見られているような感覚に陥るという人も少なくないのではないでしょうか?
筆者は、前述のお誕生日席にいる編集長の視線をバッチリ感じられるオープンオフィスレイアウトだったため、肩身の狭さと言ったら当時は計り知れないものがありました(笑)。今考えれば、「かなり働きやすいオフィス」とはいえませんでした。
前出のウォール・ストリート・ジャーナルが引用した研究結果によれば、中国の携帯電話工場で行った調査の結果、現場の監督から見えない環境で作業に取り組む方が、見られている環境よりも10〜15%ほど、生産性が向上したそうです。
その理由は、規則通りにやらせたいという監視の目から逃れたことで、ワーカーたちは業務上の問題を改善する手段を試せたり、効率的な方法を考え出すことができたからだと結んでいます。
過去に筆者が仕事中に気が散って仕方なかったのが、他者の電話です。たとえば近くにいる同僚が「このたびは誠に申し訳ありませんでした」と、ひたすら陳謝していたとしたら……。内容、すっごく気になりませんか。これ?
要するに、これも意図せず脳が会話の内容を追ってしまってるそうなんです。だから「気になってしまう」と。興味深いのは、電話の通話声(一人喋り)の方が、周囲で対面会話される内容以上に私たちが気になってしまっているということです。
米・サンディエゴ大学のVeronica V. Galván准教授は、テストを行なってそのような調査結果を発表をしました。
そのテストとは同じパズルに挑戦する大学生グループの片方には2人の人物を近くで会話させ、もう片方のグループにはその近くで携帯電話の通話をさせるというものです。すると、電話の通話を聞かされた学生たちの方が注意力が散漫になったという結果と、彼らの方が話している会話内容を覚えていたという結果が得られたと言います。
Galván准教授のレポートでは、「一人の人物の会話だけしか聞こえていない場合、それを聞いている人は意図せずも聞こえた言葉から相手の会話を絶えず探ろうとしてしまう」そして、「本来行おうとしていた行動、目的以上に注意を引きつけられている」と説明しています。
ここまで長々と書いてきましたが、要するに仕事に集中するために欠かせない私たちの脳は、オフィス内の周辺環境や人々の言動によって勝手にノイズを察知し、「そうなれない」状況に追いやられているということがわかりました。
とは言え結局のところ、仕事に集中するためには邪魔を排除するしかない訳ですが、脳が優秀すぎるためにオープンオフィスレイアウトではそれが容易ではありません。だとしたら、ワーカー達はノイズに溢れたワークプレイスから「体ごと逃げるしかない」のです。
それならば企業は、大切な従業員の作業効率、生産性を確保するためにも、働きやすいオフィスだと感じてもらうためにも、ワークプレイスや働き方の選択肢を用意してあげる必要があります。
企業は手始めに、フリーアドレスやグループアドレス化することが、マストで求められるでしょう。制作・クリエイティブ系の職種のワーカーには、半個室的な集中ブースやさまざまな用途で自由に使える個室を設けてみたり、反対に電話のためのブースを設けるということもできます。
オフィスレイアウトの改善やパーテーションの設置・活用で、他者の視線や動作を感じにくくする工夫もできるでしょう。より視点を広げるなら、喫茶店やコワーキングオフィスなどのテレワークを認めるという「制度」で対応するという手段もあります。
これらによって、企業はワーカーの働き方、働く場所に選択肢を持たせることで、集中力改善、生産性の向上につなげることができるし、働きやすいオフィス環境を与えてくれたことに対するワーカーからの感謝の気持ち、愛社性の獲得が期待できます。
あなたは自分のオフィスでの「働き方、働く場所の選択肢」について、改めて考えてみる価値があるとは思いませんか?
ユニオンテックでは、独自のモニタリング手法を用いて、オフィスを実際に使う従業員が求めている意見を可視化・数値化し、オフィスづくりに反映させていきます。オフィス移転・改装にお困りの際はぜひご相談ください。
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