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株式会社オフィスバンク オフィス事業本部 第1営業部 スタートアップ支援チーム 島袋 渉 様
AIQ株式会社 PdMチーム プロダクト開発部 アパレル事業推進Pjt. クリエイティブディレクター 髙島孝太郎 様
同 代表取締役社長 CEO兼COO 渡辺 求 様
ユニオンテック株式会社 ワークスペースプロデュース事業部 ワークスペースプロデュース1部アカウント1G シニアデザイナー 副島嗣正
何を作るかも重要だけど誰と作るかのほうが重要だと常々言っているんです。ユニオンテックの皆さんは、まさに「こういう人と一緒に作っていきたい」と感じられる熱量を持っていたので、大きな決め手になりました。
AIQ株式会社 代表取締役社長 CEO兼COO 渡辺 求 様
“こんな会社にしたい”と思うイメージ、社員の働き方改善など、お客様が思い描くご要望に対し、内装デザインを通してユニオンテックがどのようにお応えしたか?など、 プロジェクトの裏側にある“ストーリー”を覗くことができる「オフィスメイキングnote. 」の第1弾。
AIによるマーケティングDXをはじめとする産業DXの実現に取り組むAIQ(アイキュー)様は、事業拡大を視野に組織体制強化と継続的な人員増加において、従業員が最も働き易い環境と事業成長創出するため本社の移転を計画されました。当計画の中核メンバーの対談を通じて、その裏側を深掘りします。
―― AIQ様は2017年に創業されたとのことですが、今回の移転は何度目でしょうか?
渡辺 このオフィスが6か所目なので、5度目の移転です。前回のオフィスは新宿御苑だったんですが、契約更新の期限が迫っていて。社員の人数も増えてきましたし、もっとキャパシティの大きいところに移りたいなと移転を決めました。これまでオフィスにはあまりお金をかけていなくて、シェアオフィスだった時期もあるんです。ですが無事資金調達もできましたし、このあたりで、当分移転しなくてもいいようなしっかりとしたオフィスを構えたいという思いもありましたね。
―― では、「こんなオフィスにしたい」というこだわりや理想像も…
渡辺 もちろんありました。例えば、見栄え。我々は、インフルエンサーの方々とビジネスをしているので、オフィスに来ていただく機会も多いんですが、インフルエンサーの方々からしたら、一緒に仕事をしている会社が古かったり、イケてなかったりしたら嫌だと思うんですよ(笑)。逆に、おしゃれだとテンションが上がるでしょうし、我々が次に案件をお願いしたとき受けていただける可能性も高まる。なので、デザインは気にしていましたね。
また、「Moribus(モリバス)」というプロダクトを使っていただいている企業向けのユーザー会も開いているのですが、毎回貸し会議室を借りていたんです。すると、テンションが上がらない会議室に当たってしまうこともあって。新しいオフィスでは、社内でユーザー会が行えるような環境も整えたかったんです。プレゼンできるようなステージがほしいという願望もありました。
―― そうして、まずは物件探しを始めたかと思いますが、どんな条件で探したのでしょうか?
渡辺 創業の地である秋葉原・神田近辺で探しました。あの辺りならアクセスもいいですからね。新宿御苑は丸ノ内線しかないので、社員の方々も不便だったと思いますし。そうして探しはじめてしばらく経った頃に、オフィスバンクさんから電話がかかってきたんですよ。
島袋 僕の部下が、たまたま渡辺さんに電話をしたんですよね?
渡辺 「えっ、何で物件探ししているのを知っているんですか!?」と言ってしまったくらい、奇跡的なタイミングでした。相当獲得単価が安かったと思いますよ(笑)。
島袋 ははっ(笑)。物件を探す場合、複数の会社にあたってみるのが一般的で、AIQさんも当然つながりのあるところで見ていたようなんです。そうして秋葉原・神田エリアで程度候補が決まっていたんですが、マッチしなかったところで部下が電話をかけたようですね。希望エリアの物件は一通り見ているとのことだったので、少し違うエリアで新たにご提案させていただきました。その中に飯田橋の後楽森ビルがあって、気に入っていただけたんです。
―― 移転先を後楽森ビルにした決め手は何だったのでしょうか?
渡辺 それはもう、入ってきてすぐに見える景色です。この抜け感はすごいでしょう?
島袋 執務エリアのほうもこの景色が広がっていますからね。なかなかないですよ、こういう物件は。
渡辺 実を言うと、今までは景色をあまり気にしたことがなかったんです。どうせパソコンばかり見ることになりますし(笑)。なので3つ目のオフィスは地下にあったくらいなんですけど、実際に働いてみると窓がないだけで息が詰まるんです。新宿御苑のオフィスも窓はあったけど駐車場しか見えないような窓だったから、それこそテンションが上がらない。だから今回は眺望も気にしようと思っていたら、この物件に出会えました。
―― その後は業者の選定へ。ユニオンテックにもこの段階で声をかけていただきました。
渡辺 後楽森ビルに入ると決めてから、同じビルに入っている会社さんをいくつか検索してみたんです。そうしたら、ユニオンテックさんのサイトに載っているソウルドアウトさんのオフィスが引っかかったんですよ。その事例が素敵で。ソウルドアウトさんには知り合いがいましたし、同じビルのオフィスを手掛けた業者なら一旦見てみたいなと思い、こちらから提案してユニオンテックさんをコンペに加えさせてもらいました。島袋さんから提案してもらった2社と合わせて、3社でコンペをしたことになります。
島袋 本来であればこの規模だと5、6社でコンペをして、最終的に残った3社の中から選定するという流れになるんですが、今回は時間がタイトだったこともあり、最初から3社でした。
―― 実際にソウルドアウト様のオフィスも見学されたそうですが、いかがでしたか?
渡辺 まずいいなと思ったのは、エントランスでした。最初の印象って、とても重要じゃないですか? 気に入っているポイントがどれだけたくさんあっても、最初に受けた印象のほうが強い。そういう意味でエントランスの作り方をちゃんと見ておきたかったんですが、ロゴがパッと目に入る素敵な受付になっていました。なおかつ、オフィスのコンセプトが明確なんです。ソウルドアウトさんのオフィスを作った責任者の方に同席していただいて、お話を聞きながら回ったのですが、「この場所はこういうコンセプトがあるから、こう使ってもらいたい」というこだわりを感じられました。入口でちゃんと掴んで、入った後はこだわりを感じる。この両方ができていたのはすごいなと。
―― プレゼンを経て最終的にユニオンテックを選んでいただいた決め手も教えてください。
渡辺 それはもう、(本プロジェクトでPMを務めた)根津さんですよ。我々が出した条件はかなり厳しかったと思うんです。やりたいことを言うわりにコストはこれだけか、というような。だけど、そこにちゃんと向き合って熱量を持って提案していただけました。あとは、準備もしっかりやっていただけたのかなと。ソウルドアウトさんのオフィスを見に行かせてもらっただけでなく、オカムラさんのショールームにも「行きましょう」と言ってくれて。そんなふうに提案してくれる会社は他になく、ダントツで良かったです。
私は、何を作るかも重要だけど誰と作るかのほうが重要だと常々言っているんです。ユニオンテックの皆さんは、まさに「こういう人と一緒に作っていきたい」と感じられる熱量を持っていたので、大きな決め手になりました。
副島 そう言っていただけて嬉しいです。ほかには、従業員の皆さんにアンケートをとって、課題や要望を明確にしたのも僕らなりの試みです。当然、全部を叶えることはできませんが、「皆さんの思いをできる限り汲み取った、最適なオフィス作りを」という覚悟ができたので、良い収穫になりましたね。もともといただいていたオフィスコンセプトとアンケート結果を合致させてプレゼンに向かえたことも良かったです。
―― ちなみに、AIQ様がプレゼン前に展開したオフィスコンセプトは、かなり明確だったとか。
副島 はい。普段は席数や部屋数といった条件のみが打ち込まれた書類データをもらうことが多いんですが、今回はPDFでしっかりとビジュアライズされたオフィスコンセプトをいただいて。やりたいことや思いがありありと伝わる状態だったので、こちらも熱くならざるを得ないような状態でした。
パースの修正なども、猛スピードで対応しました。先ほど仰っていた通り、抜け感が印象に残りやすいビルなので景観にこだわったつもりではあったんですが「もっとこだわってほしい」というご意見をいただき、黒い壁からガラスに変えましたし、「使い方がイメージできない」という執務室もシンプルに変えました。
ご提案初期のパース
渡辺 今見ると、最初の案もすごく素敵ですよね。何故このままいかなかったんだろうと思うくらい(笑)。ただ、修正後のガラスになったパースを1回目に提案されていたら、「寂しい」と思っていたかもしれません。1回目のデザイン要素が多いパースを見た上で、「ここからさらに良くするにはどうしようか」と我々が思っていることを伝えられたので、ステップとしては良かったのでしょうね。
―― オフィスを作る過程で、大変だったと感じたことを伺いたいです。
渡辺 いろいろありましたよ(笑)。私が比べることはできませんが、ユニオンテックさんの中で一番大変な企業だったんじゃないかなと思っています。期間が短いのに、言いたいことばかり言うから。(施工管理を担当した)植木さんも大変でしたよね、実はここには見えないような裏側の苦労もあり、とても感謝しています。プロジェクター1台選ぶにも、「どんだけ色んなところにいくねん」と(笑)。しかも、ビルオーナーさんも工事手配調整が難しかったようで、大幅な変更提案がありました。
島袋 予定では2月中にオープンするはずだったんですが、スケジュールがタイトで調整が大変でしたよね。
渡辺 当初のスケジュールから変わってしまったので、各所でご調整いただいてからのスタートになりました。その時点で波乱が起こりそうだなとは思っていましたが、案の定いろいろありすぎて、思い出せません(笑)。
副島 途中、AIQ様のご要望にうちが応えきれていない時期があったんです。そこでお叱りを受けたことがありました。
渡辺 私は「何でこの色なの?」「何でここにこれをつけるの?」とやたらと聞いてしまうくせがあって。とはいえ、そこで我々が具体的な案を出し始めてしまうと我々が考えるオフィスになり、我々の想像を超える120%、200%のオフィスにはならないですから。
副島 あのときは本当にご迷惑をおかけしてしまって、申し訳なく思っております。
渡辺 ただ、我々も“待っているだけ”になりすぎていたのかなと思って。髙島を引っ張り出しました。髙島は、うちの会社のウェブページや名刺、パーカーなどのデザインをしているので「AIQはどんなコンセプトなんだろうね」「どうやってオフィスに落とし込むべきだろう」と話し合ったんです。
―― そこで髙島さんはどんな案を出されたのですか?
髙島 コロナ禍を経て、コミュニケーションに対して課題があると考えていたので、そこを解決するために「オープンラボのような空間があると良いんじゃないか」と提案しました。あとは、このタイミングでコーポレートカラーを決めようという話になり、4色決めて提供させていただきましたね。うちとしても会社のコンセプトを決めるいい機会になりましたし、ユニオンテックさんにはオフィス作りの過程でいい感じに料理していただけたと思っています。
渡辺 しかも、コーポレートカラーを決めてまとめてお話をしようとしたタイミングで、ほぼ同じようなアイデアがユニオンテックさんからも出てきたんですよ。
副島 舵を切る方向が見えてからは、オープンラボが固まりすぎないように少し離れた配置にして、流動性を高めました。あとはコーポレートカラーをいただいたので、差し色を一気に変えました。黄色は警戒色ということもあり、割合によっては印象がガラッと変わってしまうので、ソファーの一部のみに入れてさり気ないアクセントにさせていただきました。
AIQ様のコンセプト資料
―― 渡辺社長から見て、今回のオフィスは期待を超えることはできたでしょうか?
渡辺 超えたと思います。ずっと平面図で見ていたので想像がつきづらかったんですが、出来上がったものを見たとき「すごくいいオフィスだ」と。僕らは、平面図から立体を感じる力がなかったんでしょうね。そこは申し訳なかったなと思っています。
―― 当初掲げていたオフィスコンセプトは実現できていますか?
渡辺 できているところとできていないところがありますが、それよりもディスカッションをしながら一緒に物を作れたことが良かったです。それこそ120%、200%を追求するオフィス作りを望んでいたので、そこは充分達成できたかなと。評判もすごくいいですよ。知り合いの経営者に来てもらったときは、よく「写真撮って良いですか? インスタに載せたくて」と言ってもらえます。「次のオフィスの参考にしたい」という人もいますね。本当にいいオフィスを作ってもらいました。たぶん、これを越えるのって難しいですよ。
AIQ様へお贈りした移転記念ムービー
Photo=Yasuharu Hikawa Interview=Mayuge Matsumoto