【実践的解説】インナーブランディングとは? 事例と実施方法で徹底理解 | 企業文化の革新へ
ノウハウ 2023.10.10

インナーブランディングは、従業員の愛着と企業理念の浸透を促し、モチベーション生産性向上に直結します。本記事では、インナーブランディングの定義から事例、実施方法まで詳細に展開し、企業価値向上の一助となる知見を提供します。疑問点とその解答も掲載しており、インナーブランディングの導入を検討するあなたの参考になるでしょう。

 

インナーブランディングの定義

従業員に対するブランディング活動であるインナーブランディングは、企業の理念、ビジョン、価値観を社内に深く伝えることを目指しています。「インターナルブランディング」とも称され、多くの企業は「アウターブランディング」に焦点を当てているものの、企業の拡大においてはインナーブランディングも不可欠な戦略と言えます。

アウターブランディング」は、社外の顧客や消費者へのブランディングで、企業の魅力やブランドの良さを伝え、他社との区別やファンの獲得を目的としています。このアウターブランディングは、従業員が理念やビジョンをはっきりと認識している状態で進めることで、一貫したメッセージや企業のイメージを発信できます。だからこそ、ブランディング活動を成功に導くためには、初めにインナーブランディングを重視することが重要です。

「インナーマーケティング」や「インターナルマーケティング」といった類似のフレーズが存在しますが、これらはしばしば同じ意味で使われるものの、正確には異なります。マーケティングは、対象の感情や要望を理解し、サービスや製品を提供する仕組みを構築することであり、ブランディングはマーケティングを通じて要望を理解した上で進行する活動です。

様々なブランディング活動が存在しますが、本稿では社内の従業員に企業理念やビジョン、価値観を伝えるインナーブランディングの実例や実践の要点に焦点を当てて解説します。

 

インナーブランディングの4つのメリット

インナーブランディングの主なメリットは以下の通りです。

  1. 従業員のエンゲージメント向上
  2. 労働の生産性向上
  3. 企業のブランドイメージ向上
  4. 優れた人材の確保

これらの利点を理解し、計画を立てることで、より効果的なインナーブランディングを実現できるでしょう。それぞれについて詳しく説明します。

 

従業員のエンゲージメント向上

インナーブランディングを通じて理念やビジョンが浸透することで、従業員は企業に対する愛着や共感を容易に感じるようになります。これは企業理念やビジョン、仕事への理解が深まるからです。

エンゲージメントは、従業員が自社に対して愛情や感謝の心を持つことを意味します。エンゲージメントが高まれば、従業員のモチベーションが向上し、業績向上に貢献します。例えば、企業や仕事に対する誇り、仕事への積極性や熱意の増加、問題を自発的に発見・解決する能力など、企業と個人の成長に向けて積極的な動きが見られるでしょう。

また、共通の理念やビジョンを共有することで、企業と従業員の意識のギャップが減少し、理解の欠如による誤解や不満、疑惑などが解消され、仕事への不安が軽減します。ビジョンを実現するために企業に貢献したいという意志が高まることで、モチベーションも向上するでしょう。

 

生産性向上の秘訣

スタッフ間で会社の理念やビジョンが共有されると、オフィス内に強烈な連帯意識が生まれます。ビジョンの実現のためにセクションを超えて互いに助け合う機会が増え、協調体制の強化による生産性向上にもつながるでしょう。

さらに、全スタッフが同じ目標を目指して仕事に取り組むと、共通の目的とその目的への道筋が共有できている状況になり、一人ひとりが「会社としての目的を達成するために今何をすべきか」を判断できるようになります。すると、各々が優先的に取り組むべきタスクを見定めて処理できるようになるため、業務効率や生産性アップにつながります。

 

ブランドイメージの向上

スタッフ全員が会社のビジョンや価値観をしっかり把握していると、営業先との交渉や顧客向けのプロモーションイベント、企業SNSなどで情報発信する際に適切にブランドイメージを伝えられます。

また、会社に対する愛着や誇りを持っているため、ブランドイメージを損なうような行動をせず、熱意と丁寧に伝える姿勢を見せられるでしょう。そんなスタッフの態度は顧客からの良い印象や満足度にもつながります。自社に愛着があると、スタッフが自ら積極的に外部へ情報発信をしてくれる可能性も高まります。そのため、インナーブランディングは効果的なアウターブランディングにもつながる戦術です。

 

才能ある人材の獲得

会社へのコミットメントが高まると、スタッフの定着率が上がります。これはスタッフが会社の理念やビジョンに共感し愛着を持つことで、その会社で働くこと自体に満足感や達成感を感じて離職しにくくなるためです。優れた人材が定着すれば、新たに入社したスタッフに対しても質の高い指導が行えるようになるでしょう。すると教育体制の強化ができます。教育体制が強化されると組織全体の戦力が向上し、長期的な良好な循環へつながるでしょう。

また、採用においては会社が目指す方向性やビジョン、価値観を適切に伝えられるため、会社にフィットした人材を採用しやすくなります。

 

インナーブランディングの例

インナーブランディングを成功に導くために重要なのは、自社ではどのような取り組みが効果的かを考えることです。ここではインナーブランディングの例を紹介するので、策定検討の参考にしてみてください。

 

社内報・社内ポータルサイトによる情報共有

社内報や社内のポータルサイトを活用することで、会社の現状共有から経営者・スタッフのトピックスまで幅広い情報を発信できます。

例えば、スタッフの日常の気づきが記された日報を基に社内報を制作し、全スタッフに配布する取り組みを行っている企業では、経営者とスタッフの相互理解が深まりました。この企業では、社内報によって会社全体の業務が可視化され、スタッフ一人ひとりが「自分の役割は何か、その役割をどう果たせば良いのか」を考えるきっかけとなり、会社のビジョン実現に向けた自主的な動きを促しています。

このように、社内報や社内のポータルサイトを利用すればスタッフ全員へ情報が届けられます。そのため、セクションを超えた会社全体での情報共有が可能となり、作成する際に現場の最新情報も取り入れられるという利点があります。

 

企業イベントによる従業員の絆強化

設立記念の宴や賞賛の儀式、教育旅行など、企業イベントは日常の仕事とは違う環境でコミュニケーションを享受できます。イベントのテーマに企業として伝達したい要素を組み込み、従業員が楽しめるように計画することで、従業員間の絆が強化され、自然に情報が共有されるでしょう。

例えば、経営者と従業員が一つのチームを組み、新しいビジネスプランや問題解決策を提案する合宿を行っている企業では、この合宿を通じて新たに複数の子会社を設立し、大きな利益を上げています。経営者と従業員がチームを形成する合宿であるため、従業員は経営者の視野を近くで学ぶことができ、社内の情報や会社の周囲の状況への理解を促進することに貢献したのです。

社内の親睦会などのイベントも効果的ですが、業務と直接関係のないイベントの場合、参加を強要すると逆にモチベーションが低下する可能性もあるため注意が必要です。また、イベントを開催する際は感染症対策も十分に考慮する必要があります。

 

クレドを通じて企業の思想を浸透

クレドは、ラテン語で「信条」や「約束」を意味する言葉です。企業の価値観や理念を小さなカードに記載し、従業員に配布する方法として認識されています。いつでも企業の価値観や理念を振り返ることができ、仕事の判断に悩んだ際に参照してもらうと良いでしょう。クレドを作成する際のポイントは、企業の活動と異なる表現を避けることです。企業の目標やビジョンへの想いが強すぎると、実行が困難な高い理想や、実際の企業イメージとは異なる表現でクレドを作成してしまう可能性があります。

ですが、従業員が実行できないクレドでは意味がありません。それどころか「企業はこのようなクレドを掲げているのに、実際は異なる」という悪い印象を与える可能性もあります。そこで、クレドは企業の基本的な理念を伝えつつも従業員にとって理解しやすく、実行しやすい内容にしましょう。例えば、世界に誇る高品質なサービスで顧客満足度の高いホテルでは、「お客様への真心のこもったおもてなしと、快適さを提供すること」という明確で理解しやすいメッセージをクレドに定めています。

 

ワークショップによる意識改革

対話や協力のワークショップを実施し、従業員自身が思索する過程で企業に対する理解を深めてもらう方法も有効です。

たとえば、「どのようにして従業員一人一人が、自身の成長を実現できるだろうか?」という問いを解決するワークショップを月に1回開催している企業では、従業員自身が「やりたい」と感じる仕事の割合が40%から80%へと倍増し、売上が向上し、経営者と従業員のコミュニケーションが活気を帯びました。ワークショップでは、経営者のビジョンや企業のミッション、ブランドイメージや提供するサービス・製品について自由に意見を交換することで、従業員が自社のブランドを「自分のもの」として感じやすくなるでしょう。

これまでのブランドイメージや企業の資産を点検する「過去の整理」や、自社の強み・市場での位置付けを理解する「現在の分析」、そして未来に何をしたいかを考察する「未来の想像」についてワークショップを実施すると効果的です。

 

オフィスデザイン変更で作業スタイルの革新

オフィスの造りを通じて、企業の理念を体現することも可能です。例えば、オフィスの各所にコーポレートカラーを取り入れる、ブランドのメッセージを視覚的に展示することが推奨されます。

レイアウトの調整により、スタッフ間の協力がしやすくなることが生産性向上の一因となります。例えば、ミーティングスペースを設けたり、フリーアドレス方式を採用することで、コミュニケーションの促進が期待でき、チームの協調性や理解が高まりやすくなるでしょう。さらに、オフィスは従業員が長時間過ごす環境ですので、スタイリッシュかつ居心地の良い空間は、スタッフの満足度を向上させます。従業員のモチベーションが高まると、企業への信頼や愛情も育まれ、結果としてエンゲージメントが高まるでしょう。

 

インナーブランディング成功の要因

インナーブランディングを上手く展開するために、実施時に知っておきたい要点をこちらで述べます。

 

資金計画の策定

いかなる取り組みでも、始める際の初期費用は避けられません。インナーブランディングを行う上で把握しておくべき費用は以下の通りです。

  • ミーティングや社内の活動、対話などで発生する人件費
  • ブランディングのための素材やツールの導入に必要な費用
  • ウェブサイトやメルマガ・SNSの運営コスト
  • オフィスの配置変更に関する費用
  • 外部のエキスパートからのアドバイスやサービスの費用

資金が不足している場合、オフィスのレイアウトやデザインのリニューアルなど、コストが高くつく施策が難しいものとなります。企業にとって有益な活動が制限されると、インナーブランディングの効果を十分に発揮することが困難となります。したがって、適切な予算計画は不可欠です。

 

メッセージの具体化

企業の理念や目標、追求するビジョンやブランドの方向性は、具体的な言葉やデータを通じて明瞭に伝えることが求められます。伝えたい内容が不明確であれば、従業員間での共有や理解は難しくなります。同じ理念やビジョンを共有せず、従業員のエンゲージメントの向上は困難となります。例えば、現実的でないビジョンや非現実的な目標、不明確な経営哲学は共感を得ることが難しく、企業への疑念や批判を引き起こす可能性があります。

インナーブランディングを実現するためには、従業員が内容を正確に把握し、それに賛同し、行動に移すことが必要です。その際、一方的な価値観の強制ではなく、企業への熱意をもってもらえるように伝えることが大切です。必要に応じて、価値観やビジョンの再定義も検討することが重要です。

 

持続的な取り組みが必要

インナーブランディングがもたらす効果は一朝一夕には得られません。そのため、継続的で計画的な取り組みが不可欠です。従業員の心にしっかりと届くよう、ただ目標を伝達するだけや社訓を記憶させるだけでは十分な成果は望めません。従業員からの定期的なフィードバックや、業績や採用コスト、定着率を含む具体的な数値を通して、施策の成果を測定し、評価することが必要です。問題点を見つけた際は、タイムリーに修正を加え、取り組みを進化させていくことが求められます。

繰り返しの実践と微調整を通じて確立された流れは、組織文化として根付くでしょう。そのため、中長期的な視点を保ちつつ、企業の文化を醸成する意識でアプローチすることが効果的です。

 

インナーブランディングに関する疑問解明

インナーブランディング導入を考える過程でしばしば持ち上がる質問点について、詳しく説明します。

 

インナーブランディングが特に推奨される企業の特性は?

頻繁に従業員の入れ替わりが見られる企業は、インナーブランディングを特に重視すべきです。なぜなら、企業の価値観がしっかりと定着する前に従業員が退職してしまうリスクがあるからです。さらに、多角的な事業展開をしている企業もインナーブランディングが役立ちます。主要な事業以外の部門で働く従業員が、企業の理念やブランドイメージと疎遠になるケースが考えられるため、全ての従業員に企業のビジョンや理念を共感・理解してもらうことが重要です。

合併や買収を経験した企業も同じです。異なる背景を持つ従業員が共に働く状況で、企業への献身ややりがいを感じるのは難しいかもしれません。このような状況でのインナーブランディングは、一貫した価値観の共有や組織の一体感を醸成する手助けとなります。

インナーブランディングを省略すると、企業に対する誤解や不満が生じ、従業員のモチベーションが低下するリスクが増えます。結果として、高い退職率や業績の低下などの問題が生じる可能性が高まります。

 

適切な施策相談先とは?

インナーブランディングの専門家や、その分野に詳しい人材がいるコンサルティング会社・メンターサービスを活用するとよいでしょう。これらのプロの知識と経験により、正確な状況判断や戦略の立案が可能となり、企業内での取り組みの浸透や展開方針、実施体制の構築も円滑に進むはずです。

例えば、インナーブランディング専門のコンサルティングファームでは、以下のアプローチで業務を進行します。

  • 企業の現状を詳細に分析(アンケートやヒアリングを通じて)
  • 主要な問題点を特定し、取り組む方向性を明確にする
  • 優先度の高い施策の内容を設計
  • 具体的な施策の実施シナリオを策定
  • 企業内展開のための体制を構築
  • 具体的な行動プランの詳細設計と実施
  • 外部へのインナーブランディングの効果の宣伝

企業文化や行動の基準となる「クレド」の策定、行動プラン検討ワークショップの実施や、持続的な取り組みをサポートするイベントなど、専門家のサポートを取り入れることで、より効果的な施策の実施が期待できます。

また、オフィスの配置変更や移転を検討する際には、その分野の専門家に相談することを推奨します。オフィスのデザインや配置は、企業のブランドや理念を体現するものですので、インナーブランディングの観点からも適切な業者の選定が大切です。

 

インナーブランディングを効果的に学ぶ方法

インナーブランディングに関連する書籍は多数出版されており、まずはそれらの文献から学ぶのが手軽です。更に詳細に学びたい場合、関連するセミナーや講座の受講が効果的です。

公開されているセミナーや講座だけでなく、eラーニングや動画教材を用いた学習も一考に値します。さらに、企業向けに研修を提供するコンサルタントも存在するため、社内でインナーブランディングのリーダーとなる人材がしっかりと知識を習得することで、迅速かつ確実に計画を立案し、取り組むことが可能です。

 

まとめ

インナーブランディングは、従業員への企業の価値観やビジョン、理念を伝え、深い理解と共感、そして愛情を育む活動として定義されます。

従業員が企業やそのブランドへの強い愛着を感じると、それは企業の職員満足度や動機付けの向上、そして離職率の低減やブランドイメージの強化高品質の人材の確保、そして業務の効率向上に直結します。さらに、インナーブランディングの取り組みを進めることで、社内のコミュニケーションの質が向上し、横断的な連携や高水準の研修プログラムの確立が可能となります。

共通の目標やビジョンを共有することで、企業と従業員が強固な絆で結ばれ、企業全体としての価値が高まる。その結果、インナーブランディングは企業の継続的な成長と発展のための鍵となり得ます。皆さんも一度、インナーブランディングの取り組みを再評価してみてはどうでしょうか。

 

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