クリニック内装の基本ガイド|診療科別デザインのポイント
ノウハウ 2023.10.24

クリニック経営において、内装デザインは極めて重要です。内装のデザイン次第で、「患者の集客」「患者数の増加」に大きな影響を及ぼすこともあります。しかし、内装についての専門知識が限られており、どの点に注意すべきか、どの企業に相談すべきかについて戸惑うことがよくあります。

本記事では、クリニックの内装に関する包括的なガイドを提供し、おすすめのクリニックおよび歯科の内装業者12社を紹介します。この記事を通じて、クリニックの内装に関する理解が深まり、失敗のない業者選びができるようになるでしょう。

 

クリニックの内装の基本事項

事例:総合メディカルサービス 徳真会 QUARTZ TOWER 様

クリニックの内装において、最も重要な要素は「患者中心のデザイン」です。当然ながら、クリニックは患者が利用する施設であり、患者が快適に過ごせる空間を提供することが不可欠です。この観点から、クリニックの内装における基本事項に焦点を当て、以下を詳しく見ていきましょう。

 

内装のコンセプトを確立する

前述の通り、クリニック内装デザインは「患者中心の空間づくり」が鍵となります。クリニック訪問時に患者の不安を軽減し、リラックスできる環境を提供するには、「清潔感」が非常に重要です。清潔感のある内装は、患者に安心感をもたらし、リピート訪問の可能性を高めます。

「このクリニックは居心地が良い」「また来たい」と思わせるために、明るい内装は特に有効です。患者のプライバシー保護を考慮し、遮音設備を導入するなど、利便性やデザインだけでなく、患者のニーズに焦点を当てることが大切です。

 

診療科ごとのコンセプトを意識する

クリニックの内装を計画する際に、各診療科の特性に合ったデザインを考慮することが必要です。なぜなら、各診療科には異なる患者層が訪れるため、この点を無視すると患者の快適性に影響を及ぼす可能性があります。例えば、小児科と美容クリニックでは、求められるイメージが異なります。これは極端な例かもしれませんが、患者離れにつながるリスクもあるため、各診療科ごとに適切な内装デザインを意識しましょう。

 

診療科ごとの内装のポイント

事例:BLINC CLINIC TOKYO 様

診療科によって、内装デザインは大きく異なります。診療科ごとの内装については、クリニック側で最終的な決定を下すべきですが、以下では診療科別の内装イメージを紹介いたします。

 

内科

内科クリニックは最も一般的な診療科であり、幅広い年齢層の患者が訪れます。したがって、診療室と処置室の距離を短くして、患者の移動を効率化する内装デザインが一般的です。また、内科にもいくつかのサブカテゴリーがあり、それぞれの特性に合った内装デザインを考慮すべきです。

 

神経内科

神経内科はしびれなどの症状の治療やリハビリテーションを行うことが多いため、整形外科と同様にフラットなレイアウトが基本です。X線検査装置は通常、床に設置されることが多いです。内装デザインはX線CT装置やMRI検査装置の有無に大きく影響されるため、事前にどの設備を導入するかを検討しておく必要があります。

 

循環器内科

循環器内科は心臓疾患の患者を診察するため、息苦しい患者や重症患者を迎えることがあります。そのため、車椅子での移動がしやすいように、広い廊下と段差の設計に注意が必要です。また、診察室の他に、超音波検査室、心電図検査室、X線検査室などの検査室が必要です。心電図検査は時間がかかることもあるため、プライバシーの確保が非常に重要です。

 

呼吸器内科

呼吸器内科は感染性疾患を取り扱うことが多く、感染拡大のリスクがあるため、隔離対策や動線に関して細心の注意が必要です。空気感染病患者を隔離するための待合室も必要な場合があります。患者は隔離待合室で事前検査を受け、診察室に案内される場合もあるため、待合室にデスクを設置する必要はありません。

 

消化器内科

消化器内科クリニックでは、内視鏡検査などの検査が一般的です。そのため、多くのトイレを設置することが必要です。最近は胃カメラ検査が苦痛でないため、遮音性を重視することは必ずしも必要ありません。

 

小児科

小児科の内装において、赤ちゃんや子供たちが安心できる環境を重視する必要があります。具体的には、院内感染のリスクを最小限に抑えるための導線設計や、子供たちがぶつかってもけがをしにくい素材やクッションの利用などが考慮されます。同時に、保護者の視点を忘れずに設計することも重要です。子供用の遊びスペースやベビーカーで移動できるエリアなど、保護者にとっても利便性の高い施設を提供することが求められます。

 

耳鼻咽喉科

耳鼻咽喉科は他の診療科に比べて患者数が多く、感染性のある疾患の患者が多いことが特徴です。そのため、患者を迅速かつ効率的に診察することが重要です。診察と検査を診察ユニット周りでスムーズに行えるよう、動線の設計に工夫が求められます。また、医師が診察室からクリニック全体を見渡せる配置も効率向上に寄与します。

 

皮膚科

皮膚科では主に保険診療が行われるため、多くの患者を受け入れる必要があります。待合室は広めに確保し、感染症患者が多いため、下足入れやスリッパの着脱を省略する配慮が重要です。また、皮膚科では新しい治療法や機器の導入が頻繁に行われるため、スタッフの教育やメーカーからの説明を受けるためのカンファレンスルームの設置も検討すべきです。

 

美容クリニック

美容クリニックでは、快適なパウダールームの提供とプライバシーへの配慮が求められます。美容に関心の高いクライアントが訪れる美容クリニックでは、メイクのリムーバルが必要な場合が多いです。また、施術後に化粧直しをすることが一般的です。そのため、充実したパウダールームを用意することはクライアントの満足度向上に寄与します。美容クリニックに通院するクライアントの中には、他の患者に自分の来院が気づかれることを避けたいと考える人もいます。そのため、設計において、他の患者との視線が交わらないような工夫も重要です。さらに、上品な雰囲気を演出することも魅力を高める要因です。

 

整形外科

整形外科は診療メニューが多岐にわたり、患者は受付からリハビリ室、検査室、診察室などへ様々な場所に移動します。したがって、スムーズな案内と移動を可能にする設計が必要です。

 

歯科

歯科クリニックでは、複数の患者が同時に診察を受けることが一般的です。そのため、複数の診察室を設け、患者への導線を設計することが重要です。

 

スタッフと患者の動線への配慮が肝心

「患者さまのための空間づくり」は不可欠ですが、患者さまに快適な環境を提供する一方で、スタッフが効率的に業務を遂行できる設計も欠かせません。

スタッフの動線が無視されたデザインは、患者さまにとっても不便な環境を作り出しかねません。スタッフと患者さまの動線を適切に区別することで、お互いにストレスなく過ごせるでしょう。患者さまに心地よい環境を提供しつつ、スタッフが快適に業務をこなせる設計を心がけることが大切です。

もしスタッフの動きを軽視したレイアウトになっていると、患者様自身が過ごす空間も心地良いものではなくなってしまいます。スタッフと患者様の動線がうまく分離されていれば、互いの干渉なく、ストレスフリーな時間を過ごせるはずです。患者様を第一に考えた空間作りを追求しながら、同時にスタッフが効率的かつ快適に業務をこなせるレイアウト設計の重要性を念頭に置くことが大切です。

 

クリニックの内装における重要なポイント

事例:クリニックフォア有楽町 様

ここでは、クリニックの内装を検討し改装する際に、以下の3つのポイントに留意する必要があります。

  1. 法規制の遵守が必須
  2. さまざまな設備への注意が必要
  3. 患者への配慮

 

法規制の遵守が必須

クリニックの内装を検討する際、自由な発想で空間をデザインすることは大切です。ただし、建築基準法やバリアフリー法、建築業法などの法律や規則を遵守することは絶対です。これらの法律や規則以外にも、都道府県や施設の規模によって異なる規定が存在することもあります。例えば、病床数が0のクリニックは、建築基準法上の特殊建築物に該当しないため、設計の自由度が高くなります。しかし、それ以外の場合は特殊建築物として扱われ、厳格な基準が設けられます。防火設備や避難経路などがその一例です。法的な詳細については、設計事務所、建築士、あるいは官庁の専門家に相談することが賢明です。

 

さまざまな設備への注意が必要

クリニックの内装工事において、電気、水道、空調などの設備についても十分に考慮する必要があります。大型の医療機器(例: CTやMRI)を導入する場合、これらは高容量の電力を必要とします。必要に応じて、電力供給量を増強するための工事を行う必要があります。ただし、クリニックによっては電力供給の増強が難しい場合もあるため、早い段階で確認が必要です。排水設備も必要です。例えば、トイレなどでの排水が必要な場所では、適切な給排水設備が必要となります。休憩室、流し台、トイレなどが離れている場合、複雑な配管工事が必要となり、内装費用が増加することもあります。換気と空調設備にも配慮が必要です。診察室、待合室、処置室などの数が多いクリニックでは、エアコンの設置台数も増えます。エアコン室外機の設置場所や費用など、内装にかかわる費用が思わぬほど増加することもあります。

 

患者への配慮

クリニックの内装設計時には、患者への配慮が非常に重要です。以下は患者への配慮が必要な事項の一部です。

  • 待合室の快適性: 待合室は患者が最初に接する場所であり、快適で清潔な環境が大切です。居心地の良い椅子、適切な照明、読書物やエンターテインメントが提供されていると患者のストレスを軽減できます。
  • プライバシーの確保: 患者は自分の診療や治療に関する情報をプライバシーを守られながら提供できるようにすることが重要です。診察室や処置室など、プライバシーを確保できるスペースを提供しましょう。
  • バリアフリー設計: 高齢者や身体的な制約のある患者に対するアクセシビリティを考慮して、車椅子の利用がしやすく、段差のない設計を採用しましょう。
  • 清潔さ: クリニック内は清潔で衛生的であることが求められます。これは内装デザイン、清掃、設備の保守に関連します。
  • 疲労軽減: 長時間の待ち時間や治療中に疲労が蓄積することがあるため、リラックスできる空間を提供し、患者の快適さを考慮しましょう。
  • カルテの取り扱い: 患者のカルテや個人情報は慎重に取り扱う必要があります。適切な収納方法やカルテの機密性を守るための対策を講じましょう。
  • コミュニケーション: 患者との円滑なコミュニケーションを助けるため、受付や案内板を設置し、スタッフは親切かつ分かりやすく対応するよう心がけましょう。

これらの要因を考慮し、クリニック内装のデザインと設計を患者中心に行うことが、患者の満足度を高め、信頼感を築く一助となります。

 

内装工事にかかる費用

クリニックの内装工事には、様々な費用が発生します。

 

クリニック内装設計費用

クリニックの内装工事を始める前に、設計図を作成する必要があります。このため、設計事務所や工務店に要望を伝えて設計図を作成してもらうことになります。設計費用の目安として、「工事金額の10%から20%」または「工事面積あたり5万円から8万円/坪」程度の費用がかかることが一般的です。ただし、クリニックの診療科によって設計費用や工事現場監督費用は異なることがあるため、事前に確認しておくことが重要です。

 

クリニック内装工事の坪単価

クリニックの内装工事の坪単価は、一般的には約40万円から/坪が一つの基準とされています。内装工事における費用は施工する面積によって大きく異なります。また、レントゲン室や特殊な医療設備が必要な場合、内装工事の坪単価は高くなることがあります。

 

クリニック内装工事の事例

クリニックの内装工事費用にはさまざまな工事費が含まれています。以下は、25坪の内装工事を行った場合の費用の事例を示した表です。

 

内装工事費用の事例内訳

25坪のクリニック内装工事にかかる費用

  • 仮設・解体工事費:約60万円
  • 建具工事費:約160万円
  • 軽量鉄骨・ボード工事費:約130万円
  • 内装仕上げ工事費:約130万円
  • 家具・什器:約160万円
  • 給排水衛生設備工事費:約130万円
  • 電気設備工事費:約150万円
  • 空調設備工事費:約180万円
  • 防災設備工事費:約50万円
  • その他:約100万円

総額:約1250万円

 

クリニック内装工事の節約法

クリニックの内装工事には多額の費用がかかり、クリニック経営において最も悩ましいポイントの一つです。ここでは、予算を抑えつつ高品質の内装工事を実現する方法をご紹介いたします。

 

複数の業者から見積もりを取る

クリニックの内装工事を予算内で実現するためには、複数の内装業者から見積もりを取ることが大切です。1社の見積もりだけでは、工事費が妥当な価格かどうかの判断が難しいことがあります。したがって、複数の業者から見積もりを取ることで、リーズナブルな価格で信頼性の高い業者を見つけるのが容易になります。ただし、安さだけでなく、実績やアフターフォローなども確認し、信頼性のある業者を選びましょう。見積もりを取りすぎると収拾がつかないこともあるので、最低でも3社、多くても5社程度に絞ることがおすすめです。

 

分離発注と一括発注を比較

クリニックの内装工事には、「分離発注」と「一括発注」の2つの選択肢があります。分離発注は、内装デザインや設計と施工を異なる業者に依頼する方法です。一方、一括発注は設計と施工を同じ業者に一括して依頼する方法です。これらの方法には費用面での違いがあります。大規模で新規開業する場合には分離発注が適しているかもしれませんが、内装工事のみの場合は一括発注の方が経済的です。内装業者を選ぶ際に、どちらの方法が最適か検討しましょう。

 

まとめ

事例:悠翔会くらしケアクリニック城東 様

クリニックの内装工事においては、医療方針や具体的な要望を実現するために、適切な内装業者の選定が不可欠です。しっかりとした計画と見積もり比較を行い、予算内でクリニックの内装を実現しましょう。

UNION TECでは、クリニックのコンセプトから施工、さらに集客の戦略まで全てのプロセスでトータルサポートをご提供できます。お気軽にご相談ください。

 

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