飲食店が加入すべき店舗総合保険とは?
ノウハウ 2023.10.24

飲食店を開業する際、多くの準備が必要ですが、その中でも保険に加入することは見落とせません。何らかのトラブルや問題が生じた場合、保険はお店や従業員を守ってくれる重要な要素となります。店舗総合保険とは、様々な想定されるリスクを広範にカバーするものです。一つの保険で多方面にわたる保護が期待できるため、加入前に例外事項の確認が必要です。

今回の記事では、開業時に加入しておくべき「店舗総合保険」とはどういうものなのか、説明します。

 

飲食店が加入すべき店舗総合保険とは?

飲食店の保険加入が不可欠な理由

飲食店は火災や天災、盗難、強盗などのリスクが高まる環境にあるため、これらの予測不能な事象に備えるために保険が必要です。また、飲食店は多くの顧客を接するため、賠償責任が発生する可能性も高く、このような賠償責任に対処するためにも保険が不可欠です。さらに、食材や料理の誤った調理による汚損や、従業員の職場でのけがや病気などもリスクの一部です。事業の中断、また配達用の車両のリスクに対処するためにも保険が役立ちます。これらの保険は、突発的な損害やリスクに対処し、事業の継続性を確保し、経営者と従業員を保護する役割を果たします。経営者は、保険エージェントや保険会社と協力して、最適なカバレッジを選択し、事業のリスクを軽減することが重要です。

個人事業主にも店舗総合保険は必要

個人事業主として店舗を経営している場合、企業であるかどうかに関係なく、店舗総合保険は必要です。なぜなら、もしも店舗に損害が発生したり、訴訟のリスクにさらされた場合、その対応には高額の費用がかかる可能性があるからです。店舗総合保険は補償対象が非常に幅広いため、加入することに多くのメリットがあります。条件によっては、保険料を経費に計上できることもあるでしょう。

 

店舗総合保険の特約の種類

店舗総合保険にはいくつかの特約がありますが、特に飲食店が注目すべき特約として、施設賠償責任保険特約、借家人賠償保険特約、食中毒保険特約が挙げられます(特約名称は保険会社によって異なることがあります)。

 

事業用と居住用の違い

まず、理解しておくべきポイントは、事業用と居住用の店舗では保険料の計算方法が異なるということです。居住用の店舗の場合、保険料は補償金額と期間に応じて決定されますが、事業用の店舗の保険では、床面積と補償金額によって保険料が算出されます。簡単に言えば、同じ補償金額であっても、広い事業用店舗は保険料が高くなるということです。

 

施設賠償責任保険特約

施設賠償責任保険特約は、店舗の施設が他人に怪我を負わせた場合の賠償金を保障します。店舗の外に掲げられている看板や、店内の備品などが原因で他人に怪我をさせる可能性があることを考えると、この特約は重要です。もしもの際、治療費や入院費、見舞金などの支払いが必要になりますが、保険に加入していれば、自己負担を軽減できます。

 

借家人賠償保険特約

飲食店は、強力な火力を必要とする焼肉店から電子レンジのみを使用するカフェまで、多様な形態が存在します。もし保険に加入していない状態で賃貸店舗を火災で焼失させた場合、賠償金と物件修復費用を自己負担しなければなりません。個人の貯金だけでは対処が難しいため、保険に加入しておくことが重要です。借家人賠償保険特約を加入すれば、万が一の火災の際に、自身の資産を保護することができます。通常、この特約は火災保険にオプションとして付属します。

 

食中毒保険特約

食中毒は一般的に大規模な発生よりも、個別の店舗での発生が多いです。それでも、どの飲食店も食中毒のリスクがつきものです。食中毒保険特約に加入していれば、食中毒の原因が特定できない場合でも補償が適用され、問題に対処できます。食中毒は発生した場合に素早い対応が求められるため、この特約は非常に役立ちます。飲食店経営におけるリスクをカバーするために、施設賠償責任保険特約、借家人賠償保険特約、食中毒保険特約の3つの特約を活用すれば、経営に安心感を持つことができます。

 

店舗総合保険と企業総合保険との違い

店舗総合保険は、個別の店舗や小規模事業向けの保険で、特に店舗に固有のリスクに焦点を当てています。主に小売店や飲食店などが利用します。一方、企業総合保険は中規模から大規模の企業向けの包括的なビジネス保険です。多様な業界や事業領域に適しており、従業員の健康保険やリタイアメントプランなど、より広範なリスクに対処します。

 

店舗総合保険の保険料の目安

一般的な飲食店の店舗総合保険の保険料相場について言えば、広さや事業規模による違いもありますが、おおよそ月額2,000円から7,000円程度が一般的な目安となることがあります。ただし、これは一般的な小規模から中規模の飲食店に関する一般的な数字であり、特定の店舗の保険料は、詳細な評価と調査に基づいて個別に設定されます。

 

保険の支払い実例

実際に店舗が被害を受けた際、補償が行われたのか、いくつかの保険金支払い実例を検証しましょう。どんな状況でどの程度の補償があったのかを理解しておくと、保険選びの際の参考になります。

 

厨房が全焼し休業

休業した日数が90日に達し、休業保険金として605万円、損害賠償として351万円が支給されました。揚げ物調理中の火災など、長期の休業が必要になる事故では、補償額も多くなります。

  • 休業日数:90日
  • 休業保険金:605万円
  • 財物保険金:351万円

 

車が店舗に突入

車が店舗に突入し、加害者が逃走した結果、オーナー自身の保険で対応せざるを得ませんでした。この事例では、13日間の休業が必要となり、休業補償として130万円、財物保険金181万円が支払われました。このように加害者が捕まらないこともあるのと、保険がいかに重要であるかを再認識させられます。

  • 休業日数:13日
  • 休業保険金:130万円
  • 財物保険金:181万円

 

隣の店舗かり延焼

隣の店舗からの延焼で什器や備品が全焼し、42日間営業停止を余儀なくされました。休業保険金として420万円、財物保険金として760万円が支給されました。自分の店舗が出荷原因でなくても、隣接している店舗からの延焼で損害をうけるリスクもあります。不慮の事態に備えるための保険加入がいかに重要かが分かる事例と言えます。

  • 休業日数:42日
  • 休業保険金:420万円
  • 財物保険金:760万円

 

雪害

降雪の翌日、解けた雪によって看板が破損しました。財物保険金として20万円が支払われました。自然現象によって店舗が破損することもあります。

  • 財物保険金:20万円

どの種類の損害にどの保険が適応されるか全てを把握するのは大変ですが、発生する可能性のあるリスクについては、把握しておくことで、不測の事態にも落ち着いた対応ができます。特に飲食業界では、店舗が直面する様々なリスクがあるため、保険加入が安心の秘訣です。

 

あわせて加入を検討すべき保険の種類

店舗総合保険では、考えうるリスクの大半はカバーできますが、すべてを補償するわけではありません。店舗総合保険では補償外のリスクに対しては、他の保険を検討する必要があります。飲食店経営で予測される様々なリスクを考慮に入れ、あわせて加入したい保険は以下の通りです。

 

地震保険

地震保険は単体での加入ができません。必ず火災保険と一緒に加入する必要があります。地震保険に未加入の場合、地震、噴火、およびこれらに伴う津波(これを「地震等」と呼びます)による建物の損傷、埋没、流失に生じる損害だけでなく、地震等による火災、および火災(原因にかかわらず)が地震等によって引き起こされる延焼や拡大による損害に対する補償も適用されません。特に海沿いの店舗では、津波による被害で店舗が流される危険性が否定できません。地震が頻発する日本では、このリスクを軽視するわけにはいきません。

 

店舗休業保険

店舗休業保険は、主に飲食店が突発的な出来事によって営業を停止せざるを得なくなった場合、収入の減少を補償する保険です。飲食店は休業中であっても、店舗の賃料や正社員の給与、水道光熱費などの固定費を支払わなければなりません。収入が途絶えたままで経費の支払いだけが続くと、内部留保も底をつき、経営は困難に陥ります。ここで店舗休業保険が重要な役割を果たすのです。

 

労災保険

労災保険は、労働者を対象とした社会保険制度で、労働者が労働中や通勤中に発生した怪我や、職業病(例: 白血病、肺がん、皮膚がん、甲状腺がん、腰痛、難聴、潜水病、高山病、伝染性疾患など)、長時間労働によって引き起こされる病気(脳出血、くも膜下出血、脳梗塞、心筋梗塞、狭心症など)、および労働による精神的負担から生じる精神疾患(例: うつ病など)に対して、必要な給付を提供する制度です。労災保険の対象は、原則として労働者であり、事業主や役員は通常、労災保険の適用外です。

労災保険の対象である労働者は、労働基準法に基づく定義に従います。この制度は労働者災害補償保険法に基づいており、同法と労働基準法には、雇用主に対する災害補償を義務付ける規定が含まれています。そのため、労災保険の対象となる労働者は、労働基準法に規定された通りの労働者です。労災保険の料金設定は、雇用者への年間予定給与額に基づき、それに0.35%を乗じて算出されます。例えば、年間予定給与が280万円なら、労災保険料は280万×0.35%で9,800円です。特に飲食業では、一般的な職場よりもやけどや怪我のリスクが高まるため、労災保険への加入は必ず確認しましょう。

 

店舗総合保険に加入する際の流れ

店舗総合保険を選び、自分の店舗に合ったプランを決めたら、次は保険に加入する手続きです。以下は、加入手続きまでの大まかなステップをご説明します。

 

加入店舗の物件情報を確認

保険会社が選ばれたら、まずは保険会社に自分の店舗に関する詳細情報を提供します。店舗の場所や周辺状況、建物の構造などを保険会社の担当者に伝え、現地調査を行ってもらいます。これによって、店舗に潜むリスクを評価し、保険内容や必要な特約、保険料を決定します。物件情報によって保険条件が変わるため、正確な情報提供が重要です。

 

店舗総合保険の補償内容を確認

物件情報と合わせて、選んだ店舗総合保険の補償内容を再確認します。リスクに備えられるか、自分の店舗に必要な保障が含まれているかどうかを確認します。物件情報に応じて特別な特約が提案されることもあるので、補償内容を細かく検討しましょう。

 

保険会社からの見積もりを取得

物件情報と補償内容を考慮した後、保険会社から正式な見積もりをもらいます。この見積書には契約の詳細情報が記載されており、契約内容や保険料の基準が示されます。見積書を入手したら、契約内容が期待通りであること、情報に誤りがないことを確認しましょう。見積書は重要な契約情報を提供してくれるので、慎重に検討することが大切です。

 

飲食店の保険選びのポイント

飲食店の保険選びには、大きく3つの注意すべきポイントがあります。

 

01. 保険料と補償内容のバランスを考える

保険会社によって、保険料と補償内容が異なります。一般的に補償内容が充実すればするほど、保険料は高額になります。従って、自分の飲食店に最適な保険を選ぶには、店舗の経営内容、提供する料理の種類、調理方法、店舗の規模、従業員数などを考慮する必要があります。複数の保険会社の提供する補償内容と保険料を比較し、最適な選択をしましょう。

 

02. 特約に注意

保険を選ぶ際に、特約(オプション)も見逃さないようにしましょう。特約を追加することで、補償内容をカスタマイズできますが、その分、掛け金も増えます。したがって、必要な特約だけを選ぶことが重要です。これについても複数の保険会社を比較し、自店に必要な特約を検討しましょう。

 

03. おすすめされた保険だけでなく他社も比較

店舗を借りる場合、不動産業者から特定の保険がおすすめされることがあります。しかし、これらのおすすめは必ずしも自分の店に最適なものとは限りません。他社の保険と比較検討を行うことがおすすめです。ただし、大家や管理会社が指定した保険に加入が必要な場合もあるため、事前に確認を行いながら検討しましょう。

 

まとめ

 

飲食店の開業にあたっては、立地や内装、メニュー構成、人件費など多くの要素が頭を占めがちです。ですが、予想外のリスクから身を守るために、飲食店向けの事業用保険への加入は欠かせないステップです。

火事や地震などの大規模災害に対する備えとして、建築物や従業員への保険掛けは、安定したビジネス運営に必須です。店舗を成功させ、安心してビジネスを展開するために、上手に保険を利用することが肝心です。

 

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