消費税の増税などが影響し、外食業界の業績が低迷している中で、テイクアウト専門店が注目を浴びています。通常の飲食店と比べて、比較的少ない開業資金で手軽にスタートできるため、飲食業に特化した持ち帰り専門店を開業しようと考える人も増えているでしょう。この記事では、テイクアウト専門店を開業する際のメリットやデメリットに加え、ステップや成功の鍵となる要点について説明します。ぜひ、テイクアウト専門店を始める際の参考にしてみてください。
最近、軽食、お弁当、スイーツなど、多くのジャンルでテイクアウト可能なお店が増えています。通常、外出して外で食事を摂ることを「外食」と呼び、家庭で料理を調理して食べることを「内食」と呼びます。一方、テイクアウトは「中食」として位置づけられ、惣菜やお弁当などを購入して家で食べることを指します。最近では、「中食」を選ぶ人々が増えており、ハンバーガーやパンなどの軽食から、パスタやカレーなどのランチ、クレープなどのスイーツまで、テイクアウト専門店の出店が目立っています。
外食産業が苦戦傾向にある中、なぜ今テイクアウト専門店が増えているのでしょうか。
という2つの理由が考えられます。以下で詳細説明します。
2019年10月1日、日本では消費税率が10%に引き上げられました。この増税に伴い、軽減税率制度も導入されました。軽減税率は、飲食業界における主要な食品に低い税率が適用されることを意味しています。この新しい税制度は、食品サービス業界における税金負担を軽減し、外食を促進することを意図して導入されました。軽減税率の導入により、外食産業における消費税負担が緩和され、料理や飲み物の提供が消費者にとって魅力的な選択肢となりました。テイクアウト専門店は、特にこの税率制度の恩恵を受けました。低い税率により、料理の価格が通常の外食よりも魅力的になり、多くの人々が外食ではなく、外で食事を楽しむためにテイクアウトを選ぶようになりました。また、テイクアウト専門店が軽減税率を活用することで、コストを削減し、顧客にリーズナブルな価格で美味しい食事を提供できるようになりました。その結果、多くの起業家がテイクアウト事業に参入し、多様なジャンルのテイクアウト専門店が増加しました。
コロナ禍(COVID-19パンデミック)は、外食産業に大きな影響を与えました。感染拡大のリスクを最小限に抑えるため、多くの人々は外食を控え、自宅で食事を摂ることを好むようになりました。この状況下でテイクアウト専門店は、需要の高まりに応じて急速に成長しました。テイクアウトは、外出せずに美味しい料理を楽しむための安全な選択肢であるという点で、多くの人々にとって魅力的でした。また、多くのレストランやカフェがダイニングイン(店内飲食)の制約を受けたため、テイクアウトを提供することは、収益を維持し、ビジネスの存続を支える方法として注目されました。さらに、外出制限や自宅待機が続く中、多くの人々が新たな外食体験を求め、テイクアウト専門店に注目しました。多様な料理ジャンル、新しいフードトレンド、手軽さ、品質の保証など、テイクアウトは多くの要因に訴求することができ、消費者の需要に応える形で拡大しました。
テイクアウト専門店のスタイルには、業種や業態に関わらず、以下のメリットがあります。
一方、テイクアウト専門店には以下のデメリットも存在します。
テイクアウト専門店のメニューには次の特性があります。商品が冷めたり、再加熱されたりしても風味が損なわれにくい具体的なメニュー例を挙げてみましょう。
これらのメニューは、デリバリーサービスにも適しています。デリバリーサービスへの対応も、テイクアウト専門店の特性の一部です。
テイクアウトの基本事項を理解したところで、テイクアウト専門店をスタートさせる流れを確認しましょう。
まずは、テイクアウト専門店をどんな形態で開業するのか検討します。既存の飲食店で始めるのか、テイクアウト専門店をいちから開業するのか、キッチンカーを使った移動販売をするのかを決めます。選んだ販売形態をもとに、メニューやオペレーションを決めましょう。パッケージしやすく、冷めても美味しいメニューにすることが重要です。無駄な工程を省き、スムーズに商品提供できる仕組みを考えましょう。価格帯、店内装飾、雰囲気などが店の個性を明確にし、ターゲット顧客層を想定することで、コンセプトを明確化します。
ビジネスプランの作成する際は資金調達や許認可取得に必要です。以下の通りです。
次に資金調達を計画しましょう。資金調達の方法は以下の通りです。
各調達方法にはメリットとデメリットがあるため、必要な資金や自己資金の額に応じて最適な方法を選びましょう。
資金調達と並行して、適切な店舗物件を選定しましょう。市場調査(競合店の数や交通の便など)を行った上で、店舗の立地を選ぶことが重要です。テイクアウトやデリバリー専門店の場合、シェアキッチンを利用する選択肢も考えられます。シェアキッチンには必要な厨房設備が備えられており、初期投資を抑えられるというメリットがあります。自宅でテイクアウト専門店を運営することも可能ですが、営業許可を取得するための条件(地域の用途地域や施設基準など)を満たす必要があります。
店舗物件を入手できたら、店舗デザインと工事を進めましょう。ビジョンに基づいて、内装(壁、床、天井など)や設備、機器、家具などをデザインすることが重要です。ビジョンと整合しない内装を採用すると、商品やサービスの魅力と一貫性が損なわれる可能性があります。店舗デザインを具現化するために、信頼性のある業者に工事を依頼しましょう。工事業者は得意な分野や提供範囲に違いがあるため、予算内で希望を実現できる業者を選ぶことが重要です。店舗内装デザインと工事に関する注意事項についても詳しく説明していますので、ぜひ次の記事を参考にしてください。
開業に必要な資格や届出、許可を取得するために、準備を進めましょう。これらの資格や申請により、法的な要件を満たし、顧客に信頼性のある商品やサービスを提供する基盤を築くことができます。また、衛生管理や安全対策を適切に実施するためにも、必要な資格や届出、許可の取得は重要です。
さらに、テイクアウト専門店を開業する過程には、メニューの開発も含まれます。先ほど紹介したテイクアウト専門店のメニューの特性を考慮しながら、持ち運びやすく、冷めても風味を損なわないメニューを開発することが鍵です。また、メニューを開発する際には原価率にも注意しましょう。メニュー全体の原価率をコントロールすることで、利益率を向上させることが可能です。飲食店の原価率を低く抑える方法についても詳しく紹介していますので、次の記事をぜひ参考にしてください。
開業までの数か月前に、必要に応じてスタッフを採用することを検討しましょう。テイクアウト専門店は通常、従業員の数を最小限に抑えることができます。求人広告を出したり、人材紹介会社を利用したりして、適切なスタッフを募集することができます。スタッフを採用する際には、応募者の資質やスキル、モチベーションなどを注意深く評価しましょう。採用後は、開業日までの期間に研修やマニュアルの共有などを計画的に行い、スタッフをしっかりと育てましょう。
人材採用と同様に、テイクアウト専門店の開業数か月前から、集客活動を積極的に展開しましょう。開業初期はまだ顧客に店舗の存在を知らせていないため、集客の努力が欠かせません。開業前から、営業状況や商品・サービスの魅力を顧客層に伝えるために、店舗情報を積極的に発信しましょう。顧客を引き寄せる方法について詳しく説明しているので、次の記事も参考にしてください。
テイクアウト専門店を開業する際には、必要な資格や届出、許可について詳しく理解することが不可欠です。食品衛生管理、調理、店舗経営に関する資格や、営業許可、開業届出などがあり、計画的な準備が必要です。
テイクアウト専門店を開業する場合、最も重要なのは食品衛生責任者の資格です。食品衛生法により、飲食店は必ず食品衛生責任者を配置する必要があります。この役職の主な責務は、食品衛生規則を確立し、従業員に衛生指導を行うことです。
次に、テイクアウト専門店を開業する際に必要なのは調理に関する資格です。テイクアウトやデリバリー向けのメニューを調理するためには、次のような資格が役立ちます。
調理に関する資格を取得することで、技術と知識を証明し、高品質な料理を提供できます。
店舗経営に関する資格も、テイクアウト専門店開業には重要です。店舗経営に関連する資格の例を以下に示します。
専門家の助けを借りることも選択肢の一つですが、各分野の知識とスキルを身につけることで、店舗経営に関連する問題に効果的に対処できるようになり、コスト削減や節税対策にも役立ちます。
さらに、テイクアウト専門店を開業する際には、営業許可を取得する必要があります。テイクアウトやデリバリーで提供する食品の種類によって、以下のような営業許可が必要となります。
これらの営業許可を取得するためには、地域の保健所に申請を行う必要があります。必要な書類(建物のレイアウトや内装の配置図など)を整えて申請し、保健所の検査をクリアすると、営業許可が発行されます。
また、テイクアウト専門店を開業する際には、開業の届出も必要です。個人事業主として開業する場合、開業から1か月以内に「個人事業開業・廃業等届出書」を提出する必要があります。法人として事業を設立して開業する場合、税務署へは開業から2か月以内に、また都道府県税事務所や市町村役場へは1か月以内に「法人設立届出書」を提出する必要があります。
テイクアウト専門店を開業するためには、適切な開業資金が必要です。開業資金の相場や内訳、調達方法、節約方法についてご紹介しますので、計画的に開業に備えましょう。
10坪程度のテイクアウト専門店を開業する場合、開業資金の相場は一般的に100万円から500万円程度です。ただし、具体的な金額は事業の性質や立地条件、物件の種類(居抜き物件かスケルトン物件か)、店舗の規模などによって大きく変動します。例えば、自宅を利用してテイクアウト専門店を開業する場合、物件取得費や工事費を大幅に削減できるかもしれません。しかし、店舗を借りる場合は、物件取得費や店舗改装費がかかるため、開業資金の額は100万円から500万円の幅があると考えてください。
以下は、テイクアウト専門店の開業資金の内訳を示した表です。10坪の居抜き物件(月額賃料10万円)を利用して開業する場合の資金計画です。詳細な内訳をご覧ください(居抜き物件にかかる費用は10坪で賃料月10万円と想定しています)。
この内訳に示されている通り、物件取得費や店舗工事費、設備・機器の購入費が開業資金の大部分を占めます。ただし、イートインの提供がない場合は、ダイニングエリアを設ける必要がなく、賃料や工事費を削減できるかもしれません。
テイクアウト専門店を開業する際に開業資金を節約する方法として、補助金や助成金の活用が考えられます。国や地方自治体からの補助金や助成金を受けることで、返済の必要がない資金を調達することができます。ただし、それぞれの補助金や助成金には申請条件や期限が設定されているため、詳細を確認しましょう。また、デリバリー専門のゴーストレストランとして開業することで、初期費用や運転資金を削減できるかもしれません。ゴーストレストランのメリットとデメリットについても、次の記事で詳しく説明しています。
テイクアウト専門店は、通常の飲食店と比べて、小規模で少ない人数で開業できるため、始めやすいです。しかし、商品に魅力がなかったり、地域の需要に合わない場合、長期で続けるのは難しいでしょう。そのため、立地調査や物件選びは慎重に行いましょう。また、スーパーやコンビニは競合になります。お店の雰囲気づくり、メニューのバリエーション、提供方法などを工夫し、他店にない魅力を際立たせることが成功の鍵です。さらに、テイクアウト・デリバリー専門店は通常の飲食店よりも開業費用が抑えられる傾向があります。したがって、集客に予算を割く余裕ができることがあります。ホームページ、SNS、チラシなどを活用して、魅力的な情報を発信しましょう。
はじめてテイクアウト・デリバリー専門店を出店する場合、わからないこともたくさんあるでしょう。UNION TECでは、店舗経営をトータルでサポートすることが可能です。ぜひご相談ください。
飲食店成功の秘訣|内装デザインのコツ・工事費用相場・施工事例を徹底解説
「食品衛生責任者資格」取得ガイド:養成講習、有効期限、営業許可の手続き全て解説!
SHOP(店舗/商業空間)のマーケティング・設計デザイン・施工サービスの案内資料です。ミッションや役員紹介、売上推移などの会社情報や、CX設計〜デザインの考え方やコンセプト、こだわり、私たちの強みを網羅的にご紹介しています。
無料ダウンロードはこちらから
スペースコンストラクション(空間施工)事業のサービス紹介資料です。工事のみのご依頼も承っておりますので、ぜひご覧ください。
無料ダウンロードはこちらから