飲食店経営の投資回収とは? 開始時の投資額と回収の時期・方法・戦略
ノウハウ 2023.10.23

この記事では、店舗の経営における投資回収の詳細をお伝えします。異なる店舗業態による初期投資の額や、回収のキーポイント、期間、方法、そして回収戦略の作り方についても触れていきます。

 

飲食店経営での投資回収率(ROI)とは?

飲食店経営の投資回収(Return on Investment - ROI)は、飲食業界における投資の成功度合いや効果を評価するための指標です。具体的には、飲食店を開業する際にかかる費用(開業費用)と、その店舗から得られる収益(通常は売上高や利益)の関係を示します。

飲食店経営の投資回収を計算するには、以下の式を用います。

ROI(%) = (得られた利益 - 投資額) / 投資額 × 100

この式において、投資額は飲食店を開業するためにかかる初期費用や運営資金を指し、得られた利益はその店舗からの収益を示します。ROIが高いほど、投資を行った飲食店経営が成功し、効率的な事業であることを示します。一般的に、ROIが高ければ、投資が効率的であると言えます。

飲食店経営の投資回収は、開業前の運営シミュレーションやビジネスプランの策定、投資家や経営者が収益性を評価し、事業戦略を立てるために重要な数値です。開業費用や年間の営業利益などの具体的な数値を用いて、ROIを計算し、投資のリターンを評価します。ROIが高ければ、飲食店経営が成功とみなされ、その投資は効果的なものであると判断されます。

 

投資回収が必要な理由

投資回収の重要性は、その達成度が店舗経営に影響を及ぼすからです。店舗経営を中長期的に安定させるために、計画的な投資回収が欠かせません。投資回収が長引くと、赤字に陥りやすく、店舗の休業や廃業のリスクが高まります。売上に対して過剰な設備投資を行うと、投資回収が難しくなる可能性があるため、注意が必要です。

特に開業前に借り入れを行った場合、開業後に売上から徐々に返済しなければなりません。投資回収ができない場合、返済も難しくなり、店舗経営が圧迫されるでしょう。さらに、投資回収が進まないと資金繰りが難しくなり、新商品やサービスの開発、人材採用の計画が立てにくくなります。高品質な商品やサービスを提供できなければ、集客や売上が安定しなくなるリスクが生じます。

 

店舗経営における初期投資額

店舗経営における初期投資額は、業種により異なります。異なる業種や業態の店舗は、施設、設備、機器、材料、賃貸料、ライセンスなど、必要な要素が異なります。例えば、飲食店と小売店では厨房や陳列棚の有無、接客用家具やディスプレイの違いがあります。壁、床、天井の工事、電気、水道、排水などの基本的な設備の設置が含まれ、建物内部が未完成状態で、内装や設備が一から整備される必要があるスケルトン物件や既存の店舗を譲り受ける居抜き物件でも初期投資額は変動します。

したがって、業種に応じて必要な投資額が変わります。また、店舗の規模(広さ)や立地(場所)も初期投資に影響を与えます。都市部や繁華街での賃貸料は高い傾向にあり、大規模な店舗の建設や改装には高額な費用がかかります。一方、郊外や住宅地に比べ、立地条件が優れている場所でも、高い初期投資が必要な場合があります。さらに、一部の店舗は高いブランド力や独自のコンセプトを持っており、その実現には多額の初期投資が必要です。高級レストランや高級ファッションブランドの店舗は、内装やデザインにお金をかけ、ブランド価値を高めています。

例えば、クリニックなど特殊な設備や高度な技術を必要とする施設は、設備の購入や技術の導入に高額の初期投資が必要です。技術や設備の特殊性は、初期投資の大きな要因です。

業種別の初期投資額の相場は以下のとおりです。

  • 飲食店:飲食店のスタートアップコストは、約100万~1,500万円です。
  • サロン:サロンの開始時の投資は、約100万~1,500万円が目安です。
  • ジム:ジムの開業にかかる投資は、約100万~1,000万円を想定できます。
  • クリニック:クリニックを開業する際には、数千万円の初期投資が見込まれます。

 

店舗経営で投資回収するコツ

効果的に初期投資を回収するためのヒントを掴むことで、店舗経営をより安定させることができます。収益を伸ばしつつ投資を回収するためには、開業する前のリサーチやプランニングのステップが欠かせません。

 

開業する前に、マーケットリサーチを徹底的に行う

開業前に、しっかりと市場を洞察し、収益性のあるビジネスモデルや商品・サービス、ターゲット層を選定することが大切です。特に、あなたの店舗の魅力やコンセプトに感銘を受けるターゲットが集結するエリアの特定が大切です。加えて、競合となる店舗の経営実態も確認しておくことが重要です。同じような商品やサービス、内装のデザインでは、顧客を引きつけるのが難しい可能性があるためです。様々な視点でのリサーチを行い、成功への道筋を築き上げましょう。

 

詳細な事業計画書の策定

開業前にしっかりとした市場調査を実施した上で、詳細な事業計画を策定することは、店舗経営での投資をうまく回収するための要点の一つです。さまざまなシナリオ(集客と売上が好調に進むケース、基本的なケース、基本以下のケース)を考慮して事業計画書を策定することで、開業後の未知のリスクにも対処できるようになります。特に基本のシナリオを下回る、つまり期待される集客や売上が得られない場合を予測し、それに基づくリアルな投資回収計画を組んでおくことが大切です。

 

投資計画時のポイントをしっかりと把握

さらに、投資をスムーズに回収するためには、投資計画時のポイントを確認することが必要です。具体的には、初期投資としてのコストや継続的な運営資金を的確に見積もることが求められます。また、損益分岐点やキャッシュフローの考慮を入れつつ、多角的に投資計画を見直すことをおすすめします。利益をしっかりと積み上げる段階になるまで、過度な設備投資を控えることを心掛けてください。

 

損益分岐点の計算を正確に行う

そして、正確な損益分岐点の算定は、売上の目安やビジネスを続けるか撤退するかの基準を設定するために重要です。損益分岐点とは、売上がちょうど収支がゼロになるポイントを指します。このポイントを超えると、店舗は黒字に転じます。この損益分岐点よりも売上が低い場合、新たな投資を避けるべきです。損益分岐点の算出には、売上から変動経費(例: 商品の原価や手数料)と固定経費(例: 人員費や家賃)を差し引く方法を取ります。それゆえ、これらの経費を正確に認識しておくことが必須となります。

 

キャッシュフローの確認は欠かせない

投資を決断する前、キャッシュフローを検討することが大切です。キャッシュフローとはお金の動きを指し、このキャッシュフローが正の値を取るか否かが、投資を行うかの判断の鍵となります。設備の導入や余分な資金、資金の調達や返金など、キャッシュの動きをきちんと理解してください。特に、大きな設備投資では多額の出費が生じます。これらの出費に備えて、きちんとした投資計画を策定することが求められます。また、販売した商品やサービスの収益が月末にまとめて受け取られる場合、損益計算と実際のキャッシュフローにずれが生じることがあるので、この点も考慮してください。

 

初期コストを最小限にして利益を最大化

言うまでもなく、初期投資が少ないほど、投資の回収も容易になります。なので、開業時のコストを低く抑えつつ、しっかりとした利益を積み上げる戦略が必要です。初めにコストを抑えてビジネスを始め、利益が出たらその後で設備の拡充や新しいメニューの開発に投資するのが良いでしょう。開業を考える際、「最高の店舗を持ちたい!」との願望は強くなるものですが、初期の段階での過度な設備投資や内装の豪華さは経営を厳しくする可能性も。必要な投資と節約ができる部分をバランスよく見極めることで、初期のコストを適切に抑えることができます。

 

開業に必要な資金の事前準備

さらに、スムーズな店舗運営と投資の回収を目指すためには、開業前の段階で必要な資金をきちんと揃えておくことが大切です。このための資金調達を進める際には、事業計画書とともに、詳細な設備投資計画書を作成しておくことをおすすめします。融資を受ける際、具体的な投資の額や利益の見込みなどが詳細に求められるためです。開業後の経営がスムーズに進むように、事前に開業に必要なコストや運営にかかる費用をしっかりと計画し、それに合わせて資金を準備してください。

 

月ごとの経費を詳しく把握する

店舗運営を円滑に進めるために、開業した後の毎月の経費を詳細に計上しておくことが重要です。しっかりとした計画を立てても、予想外のズレが生じることがあるので、事業計画書の見直しが時々必要となるでしょう。もし売上が計画より少なければ、経費の見直しや新しい集客策を考える必要が出てきます。一方で、計画通りの利益をしっかりと確保できた場合、予想通りに投資を回収できる見込みです。投資の回収が完了すれば、さらなる設備の更新や店舗の拡大といった新規投資のチャンスが広がります。

 

投資回収の期間と計算

店舗の経営において、投資の回収は非常に大切なポイントです。そのため、投資回収の期間や計算方法についてきちんと把握して、事業計画書や設備投資計画書の策定を進めることがおすすめです。

 

投資を回収する目安期間とその算出方法

一般的に、投資回収の適切な期間は3〜5年と言われています。この期間が長くなると、ビジネスの健全性に影響が出る恐れがあります。競合の新規出店や消費者の嗜好の変動など、様々な外部要因を考慮し、早期の投資回収を目指すことが肝心です。

投資回収期間を算出する式は以下の通りです。

投資回収期間(年)=投資合計額 ÷ 店舗の一年の収入

例として、初期投資が800万円、年間の見込み収益が200万円の店舗を立ち上げる場合、投資回収期間は4年(800万円 ÷ 200万円)となります。

この投資回収期間を算出する際には、店舗の年間収益の予測が非常に大切です。新しい設備の導入や人員採用による経費の削減、または売上の増加をしっかりと計算に取り入れることが大切です。

 

投資に対する利益率の算出法

投資回収の際には、投資利益率も一緒に計算することが欠かせません。投資利益率は、あなたが投資したお金に対してどれだけの利益が上がるのか(収益力)を知らせるものです。以下の式を用いて、その率を計算することができます。

投資利益率(%) = 利益 ÷ 投資金額 × 100

たとえば、500万円の設備投資で、利益として1,500万円が得られた場合、投資利益率は300%(1,500万円 ÷ 500万円 × 100)ということになります。この投資利益率が高ければ高いほど、良い投資成果を示しています。0%未満だと赤字と判断され、さらにマイナスが大きくなると、ビジネスの収益性が悪化しています。投資利益率という言葉は、コスト対効果と似た意味合いを持っています。

 

未来の利益の現在価値を求める計算式

正味現在価値、これは投資の結果として得られる利益を示すものです。金融商品の選定にも使われるこの指標は、店舗運営における設備や人材の選定にも役立ちます。

どの投資先が最も効果的かを判断する手がかりとして、以下の計算式を使用します。

正味現在価値 = 現在の価値(※)ー初期投資額

※現在の価値=将来獲得する利益 ÷ (1 +利益率)のN乗(N=利益を実現する年数)

たとえば、現在の価値が1,500万円で、初期投資が1,000万円であれば、正味現在価値は500万円(1,500万円-1,000万円)となり、この投資はおすすめできるというわけです。

 

効果的な投資回収計画書の立案方法

投資回収計画書、それはあなたが投資する内容とその後の返済戦略を示すドキュメントです。資金を借りる際、この計画書の提出が求められることが多いので、正確な作成方法を把握しておくことが大切です。

 

投資目的の明確化

初めに、投資の狙いをしっかりと明らかにしましょう。新しい設備の導入やスタッフの増員といった投資の背後にある意図を明確にするため、店舗の基本理念や未来像を実現する経営上の問題点を詳しく整理します。その上で、特定した店舗経営の問題への対策として、売上アップや運営費の削減などの明確な狙いとそれに関連する数値目標をしっかりと設けてください。明瞭な狙いと数値目標があれば、何にどれだけの資金を投入するかの判断がスムーズになります。

 

投資先の優先度を整理する

その次は、投資先にどのような優先度を設けるかを考えてみましょう。投資利益率や正味現在価値は、その判断の際の大切な参考ポイントとなります。また、投資の回収時期もしっかりと算出しておいてください。先程触れた数式を活用し、最も収益が期待できる投資先を中心に、適切な予算を計画してみてください。自らの感じや直感のみで優先度を決めてしまうと、正しい投資判断が難しくなる可能性があるので、その点には十分注意が必要です。

 

投資選択の正当性を確認する

もし、どの投資を先にすべきか迷っている場合、その投資の正当性を検証しましょう。基本として、売上の下降や機器の故障リスクが潜んでいる設備への投資を最優先とします。ただ、投資先の優先度は店舗の現在の経営フェーズや具体的な状態に応じて変わることも考えられます。例えば、ビジネスが好調で利益が順調に上がっている際には、更なる収益を目指す投資先へ次第に予算を振り向けることも考慮すると良いでしょう。

 

事業の計画書や収支の計画書の整合性をはかる

事業の計画書や収支の計画書ときちんと合致させるよう注意しましょう。特に、大きな投資が必要な時、文書の中に整合性がとれていないと、資金の調達やローンの手続きがスムーズに行きにくくなります。予想される「売上と利益はどれくらいになるのか」をしっかりと検討しましょう。

自分の資金を使用して投資する際、手持ちの資金が減少してしまうので、運営資金の確保を優先的に考えてください。もし資金を借りる場合、返済に困難が生じるリスクも考えられます。そのため、利息、返済期間、担保などを検討しつつ、無理なく返せる計画を策定しましょう。

 

まとめ

店を新たに始める際には、数百万から数千万円の初期投資が必要となることが多いので、効率的にその投資を回収する計画を立てることが大切です。さまざまなデータを参考にして、投資の適切さやどこを優先するかを判断し、その上で利益を最大化し、店舗経営の投資回収を進めていきましょう。

UNION TECでは、店舗の基本的なコンセプト設計から資金の調整、適切な場所の選定、内外のデザインや工事、そして集客まで、トータルでのサポートを行っております。ご検討の際は、お気軽にご相談ください。

 

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