飲食店のカウンター席完全ガイド|高さ別メリット、最適な幅・奥行き、素材選びまで徹底解説!
ノウハウ 2023.10.20

飲食店でよく見られるカウンター席。一般には店内の入口近くに配置され、来店客の最初の印象を左右する場所として重要な役割を果たします。カウンター席は、店内の雰囲気や営業スタイルに応じて、さまざまな側面でその重要性を発揮します。

この記事では、カウンター席の役割や設置に際してのポイントについて詳しく説明していきます。飲食店経営において、カウンター席がどのように店舗全体に影響を与えるのかを理解し、効果的に活用するための情報を提供します。どうぞ参考にしてみてください。

 

カウンター席の役割とは

カウンターは、銀行、郵便局、商店などでお客様との対応や会計を行う際に使用される長いテーブルのことです。飲食店でも、スタンディング形式やシッティング形式で設置され、お客様との間に仕切り台として長いテーブルを備えています。カウンター席には以下のような役割がありますが、その効果を最大限に発揮するためには適切な設計が必要です。

  • お客様と対面するため、コミュニケーションが取りやすくリピート客を増やしやすい
  • 料理やドリンクの調理過程をライブで見せることができ、エンターテイメント要素を提供
  • 一人で気軽に入店できるお店として印象づけ
  • カウンターから店内全体の様子が見渡せ、お客様やスタッフの動きを把握できる
  • 目線が同じで初対面同士のお客様が共通の話題を見つけやすい

カウンター席は、店主やスタッフとお客様との関係や、お客様同士のつながりなど、さまざまなドラマが生まれる場所といえます。良い飲食店の評判には、料理や雰囲気だけでなく、カウンター席の特別な魅力が影響していることが多いです。飲食店経営者にとって、カウンター席の適切な活用は重要な要素と言えるでしょう。

 

飲食店でカウンター席を作るときのポイント

カウンター席の高さには、ローカウンター、ミドルカウンター、ハイカウンターの3つの種類があります。店舗のコンセプトやターゲット層に応じて、最適な高さを選ぶことが重要です。高さの違いによって、店舗の雰囲気を大きく変えることができます。

カウンター席の高さは、顧客の視線に影響を与えるため、彼らが店舗に対する印象を左右します。高さが不適切だと、顧客は圧迫感を感じる可能性があります。適度な高さで設計されていると、顧客の視線が従業員に近づき、親しみやすさを感じてもらえるでしょう。

以下では、カウンター席の高さごとの特徴、メリット、デメリット、おすすめの店舗タイプなどについて説明します。

 

ローカウンター

ローカウンターの高さは一般的な家庭用ダイニングテーブルと同じくらいです。このため、顧客はすでに馴染んでいる高さと言えるでしょう。ローカウンターには、通常高さが約70cmほどで、椅子の高さは約40cm程度です。この設計により、日本人の平均的な身長(2016年の統計によれば、男性は170cm前後、女性は155cm前後)のお客様が座った際に、足が地面についたままでも長時間座っていても疲れにくくなります。このため、ローカウンターはお客様に長時間の滞在を促すことを意図する店舗(例:ホテルのバー、小料理屋、居酒屋など)に特に適しています。ローカウンターの利点として、以下の点が挙げられます。

  • お客様の滞在時間が長くなり、客単価を高めやすい。
  • 幅広い年齢層の顧客に適している。
  • カウンターの裏側(従業員の作業エリア)をお客様から見られない。

一方、ローカウンターのデメリットとして、従業員がお客様を見下ろす形となり、圧迫感を与える可能性がある点が挙げられます。このデメリットを軽減するために、従業員はしゃがむか、お客様と同じ目線で会話するよう心掛けることが重要です。

事例:鮨 りんだ 様

 

ミドルカウンター

ミドルカウンターは、一般的な家庭用キッチンのカウンターと同じ高さで、ローカウンターとハイカウンターの中間に位置します。通常、ミドルカウンターの高さは約85cm前後で、椅子の高さは約65㎝程度となります。この設計により、日本人の平均的な身長に合わせており、座った際に足のつま先がほんのり床につく高さとなります。従業員とお客様の目線が近づくため、親しみやすい雰囲気を醸し出すことができます。これは、カジュアルなレストランや寿司屋などの飲食店に特におすすめです。ミドルカウンターのメリットは以下の通りです。

  • ハイカウンターよりも顧客が快適に座ることができる。
  • 高身長のお客様にも長時間の滞在を期待できる。
  • ハイカウンターと同じく、従業員がお客様とコミュニケーションを円滑に取り、安心感を提供しやすい。

一方で、ミドルカウンターのデメリットとして、対応するイスのバリエーションが限られているため、店舗のコンセプトに合わせるのが難しい場合があります。そのため、事前に対応しているイスの種類を調査することが重要です。

 

ハイカウンター

ハイカウンターは、立ち飲みカウンターと同様の高さを持つカウンターで、通常の高さは約100cm前後です。これに対して、椅子の高さは約75cm前後となり、一般的な日本人が座っても足を床につけることは難しい高さです。従業員とお客様の視線が同じ高さになり、コミュニケーションが取りやすく、圧迫感が少なくなります。このため、バーや立ち飲み屋などの飲食店でよく見られるカウンタースタイルです。ハイカウンターのメリットは以下の通りです。

  • 従業員がお客様と円滑にコミュニケーションをとるため、安心感や信頼感を提供しやすい。
  • 店舗の間口が狭い場合でも配置しやすい。
  • 顧客の回転率を高めるのに適しています。

一方で、ハイカウンターのデメリットとして、顧客の滞在時間が短くなる可能性があります。このため、リラックスした雰囲気を提供したい場合や、顧客が長時間滞在することを重視する店舗には適していないかもしれません。対策として、足をかけることのできる椅子を配置することで、顧客の快適さを向上させることができます。

事例:株式会社レーサム 『レストランこう』様

 

一人当たりのスペースと奥行き

カウンター席の適切な幅や奥行きを選ぶことは、顧客の集客率や利益率に影響を及ぼします。顧客同士の距離が近すぎると問題が発生し、逆に離れすぎても問題です。それでは、適切なカウンターの幅と奥行きの決め方を詳しく見ていきましょう。

 

一人当たりのスペース

まず、適切な幅を決定します。一般的な日本人の体形を考慮すると、1人当たりのカウンターの幅は約60cm前後が適しています。例えば、カウンター全体の幅が480cmであれば、8席を配置することができます。540cmの場合は9席が可能です。しかし、1席あたりの幅によって、顧客の居心地や回転率が異なります。顧客に広々としたスペースを提供したい場合は、1席あたりの幅を60cmよりも広くすることがおすすめです。逆に、顧客同士の距離を詰めたり、回転率を高めたい場合には、1席あたりの幅を60cmよりも狭くすることが必要です。

1席あたりの幅を決めたら、必要な席数を計算します。たとえば、6席が必要な場合は、カウンターの幅は360cmに設計されます。7席が必要な場合は、カウンターの幅は420cmになります。店舗の広さやレイアウト、売上目標などに合わせて、座席数を検討することが大切です。

 

カウンター席におけるパーソナルスペース

カウンター席で食事をする際、窮屈な感覚を経験したことはありませんか?その原因は、カウンターの幅と奥行きに関連している可能性があります。例えば、隣の席と距離が近すぎて、肘が当たってしまったり、注文した料理がカウンター上に収まり切らなかったり、隣のお客様の料理がこちらにはみ出している光景に遭遇することがあります。これらの状況が、「この店、くつろげないな…」と感じる原因になりえます。快適な環境を提供するために、カウンターの幅と奥行きに注意が必要です。

まず、一般的な飲食店のカウンター席では、一人当たりの幅が約600㎜が標準とされています。個人ごとに「パーソナルスペース」というものがあり、それを尊重することが重要です。距離には個人差があるかもしれませんが、通常、一人当たりの幅が600㎜以上確保されていれば、多くの人が不快に感じることは少ないでしょう。

さらに、カウンターの奥行きは450㎜以上が望ましいです。お客様が注文する料理の数や、それらの料理に使用するお皿のサイズを考慮する際に重要な寸法です。可能であれば、カウンターの寸法を確定する前に、実際に使用するお皿を並べてみて、どれだけの幅と奥行きが必要かを検討することが役立ちます。既存のカウンターがある場合、カウンターに収まりやすいお皿を選ぶのも良いアイデアかもしれません。

 

奥行き

次に、適切な奥行きを決定します。一般的な日本人の体形に合った奥行きは約60cm前後です。たとえば、1席あたりの幅が60cmのハイカウンターの場合、奥行きが35cmほどでも十分です。店舗の業態や間取りに応じて、奥行きを決定しましょう。

飲食店の場合、顧客1人当たりの料理や飲み物の注文量を考慮し、カウンターの幅を計画することが重要です。感覚だけで幅や奥行きを決定してしまうと、顧客が不快に感じる可能性があるため、料理や飲み物の配置を考えながら実際に計算を行いましょう。具体的な要因として、「顧客が一度に注文する量はどのくらいか」「食事のペースはどれくらいか」などを考慮することが大切です。

 

カウンター席に使う素材

カウンター席の素材選びは、高さ、幅、奥行きと同様に非常に重要です。適切な素材の選択によって、店舗のコンセプトを表現することが可能です。素材は店舗の雰囲気だけでなく、費用や修繕費にも大きな影響を及ぼすからです。

 

木材

木材は種類によって異なり、カウンターの素材として合板、集成材、突板、無垢材などが適しています。

  • 合板:薄い木の板(ベニヤ)を繊維の方向を直角にして重ね合わせた材料です。カウンターに使用する主なメリットは、コストが比較的低いことです。しかしその一方で、節があるため見た目がやや荒っぽく見えるというデメリットもあります。
  • 集成材:小さな天然木材を接着剤で再構成したもので、カウンターに使用する際のメリットは、反りにくく、強度と品質が安定しているため、取り扱いが比較的容易であることです。また、材料を効率的に利用できるため、コストを抑えることも可能です。ただし、集成材には無垢材のような天然の木材の風合いが感じられないというデメリットも存在します。
  • 突板:薄くスライスされた木材を他の板(ベニヤなど)に貼り合わせたものです。突板を用いたカウンターの主なメリットは、天然の木材の風合いや質感を再現できることです。ただし、傷がついてしまうと下地が見えてしまうため、丁寧に取り扱う必要があります。
  • 無垢材:無加工の天然木材で、そのままカウンターに使用されます。非常に高い強度を持つため、多くの業務用家具に利用されています。無垢材の主なメリットは、天然の木材特有の木目や風合いを楽しめることです。ただし、他の木材に比べて高価な傾向がある点がデメリットです。

 

左官素材

左官素材は、2000年代まであまりカウンターに使用されなかった素材でした。しかし、2010年代に入り、新しい素材が広く使われるようになり、飲食店などのカウンターに適していることが認識されました。具体的には、モルタル、セメント、モールテックなどの無機質な左官素材がカウンターの仕上げに用いられ、その特長として耐久性と耐火性に優れていることが挙げられます。また、左官素材はカウンターをモダンな雰囲気に仕上げるのに適しており、落ち着いた雰囲気のバーやカフェに好評です。現在、さまざまな左官素材が市場に出回っており、好みに合わせてカラーや質感を選びやすくなりました。一方で、左官素材はコストが高いため、他の素材と比較して施工にかかる費用が高くつく可能性があります。また、見た目が似ていても、仕上げの方法によって施工費用が変動することに留意してください。また、左官素材はヒビ割れが生じる可能性が他の素材と比べて高いため、選択の際に検討が必要です。

 

メラミン樹脂

メラミン樹脂は、メラミンとホルムアルデヒドから合成される樹脂で、木材や左官素材よりも比較的新しい素材です。メラミン樹脂は木目柄、石目柄、金属柄など、多彩な模様が存在し、自身の好みに合ったカウンターをデザインするのに適しています。また、低コストでカウンターを施工でき、傷や汚れがつきにくく、水にも強いため手入れが容易です。また、抗ウイルス機能を持つ素材もあり、カウンターを衛生的に保つことができます。

一方で、メラミン樹脂の模様は印刷されているため、本物の質感を再現することが難しく、人工的な印象を与えることがあります。そのため、清潔感やカジュアルな雰囲気を演出したい場合に適しており、店舗のコンセプトに合わせて検討する価値があります。

 

まとめ

店舗のコンセプトに合わせて、高さや幅、奥行き、素材などをデザインすることで、快適で雰囲気の良いカウンター席を提供できます。顧客がカウンター席でくつろぎ、満足度を高めることができれば、将来的には集客が増加することが期待されます。

飲食店にカウンター席を設ける際は、お客様に居心地良く過ごしていただき、リピーター獲得を目指しましょう。

 

【SHOP】会社・サービス案内

SHOP(店舗/商業空間)のマーケティング・設計デザイン・施工サービスの案内資料です。ミッションや役員紹介、売上推移などの会社情報や、CX設計〜デザインの考え方やコンセプト、こだわり、私たちの強みを網羅的にご紹介しています。

無料ダウンロードはこちらから

 

【施工】ユニオンテックの職人集団のご紹介

スペースコンストラクション(空間施工)事業のサービス紹介資料です。工事のみのご依頼も承っておりますので、ぜひご覧ください。

無料ダウンロードはこちらから

ご相談は
こちら