2011年の東日本大震災や、最近では2024年1月1日に石川県能登地方で発生した震度7の地震など、過去の地震から学ぶべき多くの教訓があります。これらの出来事は、帰宅困難者の発生や企業サービスの停止といった影響を生んでいます。地震は予測が難しく、その影響は計り知れません。
これらの出来事から得られる最も大きな教訓は、地震に対する備えがどれほど重要であるかです。地震が発生した際には、従業員の安全確保や事業継続のための対策が急務となります。そして、地震の被害を最小限にするためには、日頃からの対策が欠かせません。
多くの企業は既に地震対策を実施しているかもしれませんが、これを機に一度振り返り、改めて対策を見直すことは重要です。従業員の安全と事業継続を守るために、我々は常に最新の対策を講じるべきです。この記事では、オフィスにおける具体的な地震対策のポイントを紹介し、安全と確実な事業継続のためのステップを提案します。ぜひ、日頃の地震対策の見直しを行い、オフィスと従業員を守り抜くための手段を模索していきましょう。
労働契約法第5条では、「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」と定められています。
出典:e-GOV法令検索「平成十九年法律第百二十八号 労働契約法」より
この法令は、従業員の安全確保が企業にとって義務であることを規定しています。地震は予測が難しく、発生時には迅速かつ適切な対応が求められます。従業員がオフィスで働く際に、安心して業務に従事できる環境を提供することは、法的な責務であり、同時に企業の社会的責任でもあります。
従業員の安全確保は、企業文化の一環として位置づけられるべきであり、地震対策はその中でも特に重要な一翼を担います。適切な対策を講じることで、法令順守だけでなく、従業員のモチベーション向上や企業イメージ向上にも寄与します。
地震により交通機関がマヒした場合、従業員が帰宅できない状況が生じる可能性があります。首都直下地震帰宅困難者等対策協議会の「首都直下地震帰宅困難者等対策協議会 最終報告」(平成24年9月10日)によれば、交通機関の復旧の見通しが立たない場合には、従業員をオフィスに一定期間待機させるよう明記されています。
この報告書は、帰宅困難者への対応策を示したもので、従業員の安全確保と同時に、オフィス内での生活に必要な設備や物品を備えることが求められています。オフィスが従業員にとって一時的な避難所として機能することで、安全かつ円滑な事態対応が可能となります。
地震時の混乱や不安を最小限に抑え、従業員が安心して業務に専念できるような環境を整えることは、企業としての社会的責任を果たす重要な一環と言えるでしょう。
オフィス内での地震対策は、事業継続計画の一環としても非常に重要です。被害を最小限にしながら、迅速な業務再開を図ることが求められます。しかし、これだけでなく、企業が従業員をはじめとする人々の生活を守るためにも、災害時でも事業を継続できる体制をつくっておくことが大切です。
災害時に事業が継続できると、従業員やその家族、地域住民にとっては安心感をもたらします。企業が通常どおりの事業活動を続けることで、商品やサービスの提供が継続され、消費者に安心感が生まれます。これは、単なる経済的な事だけでなく、社会的な安心感ももたらすのです。
また、事業が継続できることは、地域社会においても大きな影響を与えます。企業が地域社会と密接に関わり、災害時にも貢献できるような体制を整えることで、共同体としての絆が強まります。これによって、企業は社会的な信頼を築き上げ、災害時における共同の復興活動にも一役買うことができます。
緊急時の対応だけでなく、事前の備えとしての地震対策は、企業にとって経済的な安定性だけでなく、社会的な安心感をもたらす重要な要素となります。
オフィスの建物は十分な耐震性を持たせることが必要です。賃貸のオフィスビルの場合、地震対策はオーナーや貸主に委ねられているのが現状ですが、自社が所有しているオフィスビルの場合は、自らが積極的に建物の耐震対策を検討する必要があります。特に、現行の新耐震基準に準拠しているかどうかの確認が重要です。
1981年6月1日から施行された新耐震基準は、現在も適用されています。新耐震基準で建てられた建物は、震度6強から7程度の地震が発生しても倒壊または崩壊のリスクがほとんどないとされています。一方、旧耐震基準で建てられた建物は、同程度の揺れが発生すると倒壊や崩壊のリスクが高まります。
オフィスビルが旧耐震基準の場合、新耐震基準を満たした建物への移転を検討することが重要です。新しい基準に適合する建物に移転することで、地震発生時においても安全性が向上し、従業員や資産の保全が確保されます。移転を検討する際には、建物の所有者や管理者と協力して、スムーズかつ円滑な移転プロセスを進めることが肝要です。
地震リスクの高い地域に拠点を構える企業は、積極的かつ継続的な耐震対策を進めることで、災害時においても事業を安定的に運営し、社会的な安心感を提供する一翼を担うことができます。
地震の揺れにより、オフィス家具が転倒することがあります。総務省のサイトによれば、地震時において転倒した家具が原因で発生する事故やけがのリスクが高まります。そのため、家具の固定や補強を行うことで、安全性を向上させる必要があります。
特に、1995年に発生した阪神淡路大震災では、日本建築学会が行った「阪神淡路大震災 住宅内部被害調査報告書」により、約6割の部屋で家具が転倒し、散乱したという報告があります。この結果からも、地震による家具の転倒は一般的であり、その危険性が浮き彫りになっています。
従業員には地震時の行動や避難手順を知らせるため、継続的な防災研修や避難訓練を実施しましょう。これにより、従業員が地震に対して正しい行動をとり、安全かつ迅速な避難が可能となります。
自社で地震対策を進めるためには、地震対策に関する知識が豊富な担当者が必要です。しかし、従業員内でそのような担当者が不足している場合でも、外部機関が提供する防災担当者向けの研修を活用することができます。一般社団法人日本防災共育協会では、防災担当者向けの研修を実施しており、具体的な方法や手順を学ぶことができます。
さらに、防災対策の一環として、従業員が手順や行動を簡単に確認できるような防災マニュアルを策定することも重要です。このマニュアルは、研修で学んだ内容を補完し、地震が発生した際に即座に適切な行動がとれるようにサポートします。定期的な更新と共に、従業員が安心して業務に従事できる環境を整えましょう。
全従業員が避難経路と避難場所を把握していることが重要です。定期的な説明や確認を行いましょう。これに関連して、法令や建築基準に基づく指針も確認しておくことが重要です。
消防法第8条2の4では、学校、病院、工場、事業場、興行場、百貨店、旅館、飲食店、地下街、複合用途防火対象物その他の防火対象物において、避難の支障になる物件が放置されないように管理することが求められています。同時に、建築基準法施行令第119条では、廊下の幅に関する具体的な基準が示されています。
これらの法令や基準を踏まえ、日頃から避難経路が確保され、避難しやすいように通路や廊下を防がず、動線を確保できるような配置を想定しましょう。特に、非常階段や避難口においては、障害物の放置やみだりな物品の保管を避け、適切な管理を行うことが求められます。
避難経路の明確な指示や適切な通路の設計は、地震時の安全な避難を保障し、従業員が円滑かつ迅速に避難できる環境を整える重要な手段となります。法令順守だけでなく、これらの規定を遵守することで、安全なオフィス環境の構築に寄与します。
地震で帰宅困難になった際、食料や日用品の確保を常備しておくことが重要です。東京都首都直下地震帰宅困難者等対策協議会の最終報告書によれば、備蓄量の目安は3日分とされています。食料品や飲料水などの賞味期限がある品目もあるため、期限が切れないよう定期的に確認することも忘れずに行いましょう。
具体的な備蓄品の例を以下に挙げます。
これらの備蓄品は、避難生活や待機生活において大変役立ちます。日頃から確認と補充を怠らず、災害時に備えることで、安心して対応できる状態を維持しましょう。
オフィスのレイアウトや家具配置を検討し、地震時の安全性を高めるための調整を行います。以下は、特に重要なオフィスデスク周辺、壁面のオフィス家具、移動ラック、パーテーションに関する転倒防止対策の例です。
これらの対策を講じることで、オフィス内の家具や什器が地震による揺れに対して安全に対応し、従業員の安全を確保します。災害を考慮したレイアウトは、予防と備えの重要な一環となります。
重要なデータは定期的にバックアップを取ることが極めて重要です。地震などの災害に備え、データの損失を防ぐために以下の詳細な対策を検討しましょう。
データは定期的にバックアップするスケジュールを確立します。毎週や毎月など、データの変更頻度に合わせた頻度でバックアップを行います。
バックアップデータは単一の場所にだけ保存せず、複数のバックアップ先にコピーします。オフサイトの場所にもデータを保存することで、本社が被災した場合でもデータを保護できます。
クラウドサービスを利用してデータを保存することで、オフィス内のサーバーやストレージが損傷した場合でも、データへのアクセスが可能となります。
バックアッププロセスを自動化することで、人為的なミスや忘れが生じる可能性を低減します。定期的な自動バックアップを設定して、データの保護を確実にします。
バックアップされたデータは暗号化して保存し、機密性を確保します。また、セキュリティ対策を施したクラウドサービスを利用することで、不正アクセスからデータを守ります。
バックアップだけでなく、災害時の迅速な復旧計画も策定しておきます。データを効率的に復旧し、業務の中断を最小限に抑えるための手順を整備します。
これらの対策を組み合わせることで、地震やその他の災害によるデータ損失のリスクを最小限に抑え、業務の安定性を確保することができます。
本記事でまとめた対策は一度だけでなく持続的かつ継続的なものであるべきです。従業員への教育と定期的な防災研修、そして災害時の迅速な復旧計画の策定が、オフィスと従業員を地震から守り抜くために不可欠です。全社的な協力体制を築き、安全なオフィス環境を確保していきましょう。
重要なデータは定期的にバックアップを取ることが極めて重要です。地震などの災害に備え、データの損失を防ぐために以下の詳細な対策を検討しましょう。
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