全国には68,500の歯科診療所が存在しており、これは医療施設総数の約4割に相当します。実際の施設数はコンビニよりも10,000軒以上多いということです。このため、歯科経営者は競合他社を意識する機会が増えていることでしょう。歯科クリニックを新たに開業する場合、または既存のクリニックをリニューアルする際には、効果的な内装が患者の獲得に大いに寄与します。そこで、今回は歯科医院の内装を決定する際のポイント、工事の費用相場、選択方法について詳しく説明いたします。
歯科クリニックの内装デザインにおいて、注目すべきポイントは「診療ブースのプライバシー向上」と「居心地の良いデザイン」です。
近年、多くの歯科クリニックが診療ブースを個室化する方向に進んでいます。個室の診療ブースでは、患者が治療中に他の患者と接することがありません。これにより、患者の来院しやすさが向上すると期待されています。また、新型コロナウイルスの感染予防の観点からも、個室の診療ブースは安心感を提供します。患者にとっても、個室であることから「適切な感染対策が行われている」との印象を持ちやすいでしょう。
過去、クリニックのデザインは主に「清潔感」を重視し、白色から淡い水色などの冷たい色調が一般的でした。しかし、現在では、患者の「快適さ」がより重要視され、木の質感や観葉植物など、自然を感じる要素を取り入れた歯科クリニックが増加しています。
歯科クリニックは他の医療施設と比較して、患者が恐怖心を抱きやすい特性があります。そのため、患者がリラックスしやすく、待ち時間を快適に過ごせるよう、温かみのあるデザインが評判です。
歯科クリニックの内装デザインにおいて最も重要なのは、以下の2点です。
これらについて、詳細を以下で掘り下げていきます。
内装は歯科クリニックの印象形成に直接影響します。患者が最初の診療から最後のメンテナンスまで通い続け、信頼感を抱いてもらうために、くつろげる雰囲気を提供することが肝要です。特に、近年では初診前にインターネットを活用して情報収集を行う患者が増えています。患者は公式ウェブサイトやポータルサイトで内装の雰囲気をチェックし、安心感や質の高い対応、待ち時間、他の患者との距離感などに着目しています。
まだ訪れたことのない患者を引き込むために、歯科クリニックはリラックスできる雰囲気と安心感を提供し、これらの特長を積極的にアピールする必要があります。
たとえ内装が洗練されていても、治療の受けづらさや、患者様の不安を引き起こす点があれば、その歯科クリニックは選ばれにくいものです。たとえば、受付が木の素材でスタイリッシュながらも、物の多さで雑然として見えたり、逆に、シンプルすぎて冷たさを感じさせるインテリアではないかと感じることも。さらに、プライバシーの確保や感染予防といった面での対策がしっかりと行われているかも、患者様の安心感に直結します。個室の診療ブースの設置だけでなく、ガラスの壁には目隠し効果のある加工を施したりすることで、通行人との視線の接触を避けるなど、患者様の視点での細やかな配慮が、安心できる空間作りにつながります。
実際に、歯科クリニックの内装デザインを実際に選定する際、どのような視点でアプローチするべきか、ポイントを押さえておきましょう。
清潔を感じさせる内装デザインは基本中の基本ですが、それを維持することのしやすさも同様に大切です。たとえば、来院された患者様にエントランスで靴をスリッパに替えてもらうことで、クリニック内の清潔さを保つことが可能です。治療エリアに靴を履いて入るスタイルの場合は、掃除のしやすい配置や、汚れが落としやすいフローリング材の選定などが考慮されます。その上、洗面所には水はねを防ぐ深いタイプのシンクを選び、掲示物は電子ディスプレイを使用することで紙の使用を減らし、ソファ選びには清掃が容易で汚れが目立ちにくい材質を選定するなど、「維持のしやすさ」を考慮したデザイン選びが求められます。
待合室は、歯科クリニックへの第一歩となる大切な空間です。広々とした空間を意識し、開放的な気持ちになれるよう配慮しましょう。壁や床には、明るく爽やかな色を採用し、木の温もりや自然の風合いを感じる素材を推奨します。
待合室や診察室の照明には、心を落ち着かせ、リラックスして待てるような温かみのあるものを選びましょう。冷たく感じる蛍光灯ではなく、優しい光の照明を用いることが大切です。
滑らかで白い壁や天井は清潔感を演出しますが、時間の経過とともに出来る汚れや傷は、不潔と感じさせてしまう可能性があるので注意が必要です。白い壁でも、メンテナンスしやすいものや汚れにくい特性のある壁紙を選ぶことで、長期間の美観を保つことが可能です。床材には、傷が目立ちにくいものを採用すると良いでしょう。木目調やパターンが入った床は、細かい傷を目立たなくします。
インテリアは、来院される方の層に合わせた選択を心がけましょう。子どもが訪れることの多い歯科クリニックでは、キッズスペースや子供向けの診療室のインテリアにも工夫が必要です。子どもたちが「楽しい」と感じるような、明るくポップな色のインテリアが効果的です。一方、年配の方が多く訪れるクリニックでは、落ち着いたベージュやブラウンの配色が適しています。快適な座り心地のソファで、待合室が憩いの場となれば、来院しやすい環境が整うでしょう。
歯科クリニックの患者さまは、地元の方が中心となることが多く、知人同士の出会いも考えられます。治療内容を他人に知られたくない、または治療中の様子を見られるのを避けたいという思いに応えるため、プライバシーの確保に配慮が必要です。治療室をプライベートな空間にしたり、患者さま同士が顔を合わせない動線を計画したり、待合室で視線を遮るアイテムを配置するなど、少しの心遣いで安心感を提供できます。
歯科クリニックにおける内装工事の一般的な費用は、坪あたり30~40万円とされているのが通常です。しかし、場所や施工する会社、使用材料の質などにより、費用は大幅に変動することを覚えておきましょう。
クリニックの面積が広がれば総工費も増えますから、土地や建物を選ぶ段階で、将来の患者数も計算に入れる必要があります。さらに、クリニックの運営には、ユニット、レセプトコンピュータ、その他の医療機器や設備、電気や水回りなど、多岐にわたる設備投資が求められます。内装への投資は重要ですが、その他の多くの必需品も考慮し、出来る限りの経費削減を図ることが賢明です。
費用を抑えるためには、内装材のグレードを落とす、インテリアは既成品を利用するなどの選択肢があります。自分の理想を追求しすぎて予算を超過してしまうと、後で悔やむことになるかもしれません。
内装に関するビジョンは大切ですが、全てを自分一人で決めつけず、施工会社と相談しながら進めることが大事です。プロフェッショナルの視点からの提案や指摘を受け入れることで、理想のクリニック作りに繋がるでしょう。
次に、歯科クリニックの内装工事業者を選ぶ際に、考慮すべきポイントを解説します。
一般的なテナント用の内装経験が豊富な会社であっても、「クリニック関連の仕事は経験が少ない」という事例は少なくありません。スタッフの動きや患者様の流れを考慮した専門的なデザイン、またクリニックとしての基準を満たす知見が不足している場合、依頼自体を受けられない事態も考えられます。ですから、クリニック専門の内装改装に長けた、経験豊かな施工業者を優先して選ぶことが重要です。
歯科クリニックの内装は、即座に完成するものではありません。計画から実行までに数ヶ月以上の時間がかかることもあり、途中で変更や追加が生じることもあります。そのため、歯科クリニックの内装業者とは、密接なコミュニケーションがとれる関係であることが肝要です。コミュニケーションが円滑に行える業者は、要望や質問に応じてくれるだけでなく、トラブルや問題が発生した場合にも迅速に対処してくれます。電子メールや電話だけでなく、チャットツールを通じて気軽に連絡がとれる内装業者を選ぶことをおすすめします。
以上が、歯科クリニックの内装業者を選ぶ際に考慮すべきポイントです。歯科クリニックの内装は、患者だけでなく、スタッフにも大きな影響を及ぼす要素です。適切な内装業者を見つけ、理想の歯科医院を実現しましょう。
集客を目的とした場合、内装デザインで他の歯科クリニックと差をつけることが重要ですが、それだけが全てではないのです。テーマやコンセプトを重視し、患者さんの視点を最優先に考え、内装デザインを決定することが肝心です。
歯科クリニックに通うことを楽しみにしている人は少なく、多くの方が避けたいと感じながら、やむを得ず、緊張を抱えて訪れます。こだわりの内装で、快適な空間を作ることにより、「怖くない」とか「思ったよりリラックスして治療を受けることができた」と感じてもらえるクリニック作りを目指しましょう。
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