飲食業で働いている方や将来飲食店を開業しようと考えている方なら、おそらく食品衛生責任者という資格について聞いたことがあるでしょう。飲食店や食品工場において、この資格は必須です。この記事では、食品衛生責任者の役割や取得方法について詳しく紹介します。
食品衛生責任者は、その名前の通り、食品衛生に責任を持つ役割です。彼らは営業者の指示に従い、食品衛生の管理と運営に携わります。
製造又は加工の過程において特に衛生上の考慮を必要とする食品又は添加物であって、食品衛生法施行令で定めるものの製造又は加工を行う営業者は、その製造又は加工を衛生的に管理させるため、その施設ごとに、専任の食品衛生管理者を置かなければならないこと。
出典:厚生労働省
この資格は、その性格上、飲食店や食品工場などにおいて必要不可欠であり、法律によって食品衛生責任者の配置が義務づけられています。つまり、少なくとも1人は食品衛生責任者の資格を取得し、その事業所において食品衛生の責任者として指名しなければなりません。
自治体によって細かな規則は異なるかもしれませんが、基本的に、小さな喫茶店から大手レストランチェーンまで、どの飲食業態においても、必ず1人以上の食品衛生責任者が必要とされます。
店舗内で食品衛生責任者を指名する際には、食品衛生や調理施設の適切な管理ができるスタッフに資格を取得させる必要があります。店の経営者が常駐しない場合、店長などの従業員に資格を取得させることを検討しましょう。
食品の製造・販売をする場所において、食品衛生責任者の存在は絶対です。しかし、その重要な役割や、よく混同される食品衛生管理者とは何が違うのでしょうか。今、食品衛生責任者の主な任務と配置条件について深掘りしていきます。
食品衛生責任者の指名は法的に義務づけられています。食品衛生責任者が不在または名義貸しで飲食店を経営すると、さまざまな罰則が課される可能性があります。これは絶対に避けるべきです。具体的には、行政処分や営業停止の命令を受けることがあります。営業許可が取り消されることも考えられます。また、最悪の場合、2年以下の懲役や最高200万円の罰金が科せられることもあります。
食品衛生責任者の役割は大きく3つに分けられます。それぞれ詳しくご紹介しましょう。ポイントはお店の衛生状態を確保することです。
最初の役割は、店舗内の食品衛生を管理し、運営することです。食品や調理器具、食器の清潔さに気を配ることが重要です。また、従業員に対して手洗いや消毒の実施を徹底し、清掃状況を確認することも大切です。最近の健康リスクに対応するため、従業員の体調管理も重要です。
2つ目の役割は、食品衛生上の問題を予防し、経営者と連携することです。食中毒などの問題を予防するためには、経営者との協力が不可欠です。調理器具や調理機器のアップグレードを提案したり、食材の適切な温度管理を助言したりします。食材の保管や冷蔵庫の適切な運用にも注意が必要です。食品衛生上の問題を未然に防ぐため、食品衛生責任者の指導と提案が求められます。
3つ目の役割は、食品衛生に関連する法令を順守することです。前述のように、飲食店には食品衛生責任者の指名が義務付けられていますが、その他にも多くの食品衛生に関する規則が存在します。法令は時折変更されることがあるため、常に最新情報を確認し、遵守しなければなりません。この遵守について、食品衛生責任者が自身と従業員に指導し、徹底することが求められます。
食品衛生責任者と食品衛生管理者、その名前は似ており、混同されることがあります。しかし、それぞれの資格要件を見るだけでも、管理者の方がより専門的な知識が必要であることが明らかです。
さらに、食品衛生管理者は、飲食店やお弁当、菓子、飲料などを製造する工場には必要ありません。その代わり、食肉、乳製品、魚などを別の食品に加工する工場での指定が必要です。
一方、食品衛生責任者は、ほぼすべての食品関連の業務場所で必要です。ただし、食品衛生管理者と食品衛生責任者の両方を指名する必要はありません。食品衛生管理者は食品衛生責任者になることができますが、逆は適用されませんので、ご注意ください。
食品衛生責任者の配置基準は、各都道府県や政令指定都市ごとに異なります。例として、京都市食品衛生協会の公式Webページでは、32の業種で配置が求められていると記載されています。
参考:一般社団法人京都市食品衛生協会「食品衛生責任者の概要」
食品業界には多岐にわたる業種が含まれ、時として法律の改正で業種の範囲が変わることも。事業を開始する前に、該当する業種を確かめ、食品衛生責任者の取得に向けての手続きを進めることが大切です。
店舗を開業し、食品衛生責任者が必要とされる場合、どのようにして資格を取得するのか、そのプロセスを早めに理解することが重要です。
食品衛生責任者の取得方法は、通常以下の手順に従います。
食品衛生責任者資格を取得するには、各都道府県の食品衛生協会が開催する養成講習を受講する必要があります。この講習では食品衛生に関する基本的な知識や法令、衛生管理の方法などが教えられます。
講習を修了すると、食品衛生手帳などの証明書が発行されます。これが、食品衛生責任者の資格を証明するものです。
一部の都道府県では講習修了後に試験が行われ、試験に合格することが必要な場合もあります。合格することで正式に食品衛生責任者としての資格を取得します。
一度資格を取得したら、都道府県の食品衛生協会に登録し、資格を有効化する必要があります。登録手続きを行うことで、資格が正式に有効になります。
飲食店を開業する際、営業許可を取得するには、「調理師」、「栄養士」、「食品衛生責任者」などの資格が必要ですが、その中でも「食品衛生責任者」は最も容易に取得できます。
食品衛生責任者は、食中毒や食品衛生法に違反しないように、管理と運営に責任を負います。この資格は、各都道府県の食品衛生協会が開催する講習を受けることで取得できます。講習内容は衛生法規や公衆衛生学などに関する6時間ほどの講義を含みます。
受講料は都道府県によって異なりますが、一般的には1万円前後です。講習を修了すると、食品衛生手帳が発行され、資格を証明するものとなります。
この資格は全国共通であり、どの都道府県で取得しても、全国で飲食店を開業することができます。通常、飲食店にはいつも1人の食品衛生責任者が在籍します。そのため、複数の店舗を運営する場合、各店舗に対応する食品衛生責任者が必要です。
次の資格をお持ちの方は、養成講習会を受講しなくても食品衛生責任者になることができます。
免除の基準はエリアごとに異なることもあるので、店舗を構える場所の該当自治体のサイトでの確認が大切です。対象資格に関して疑問があれば、保健センターや食品衛生団体への直接の問い合わせが推奨されます。
食品衛生責任者の資格を取得するためには、「集合方式」と「eラーニング方式」の講習会のうち、どちらかの受講が必要です。
会場で受講する集合方式の食品衛生責任者養成講習会です。集合方式で申し込んだ場合、eラーニング方式の講習会に振替することはできません。
11,000円(税込) ※2023年10月時点。受講料納入後の返金はされません。受講者の変更もできません。
講習会の諸条件は、開催会場によって多少変更がありますが、基本的には例えば午前10時~午後5時までなど、一日で行なわれます。遅刻は欠講扱いとなり、途中退席すると修了証は交付されません。
資格取得には確認試験の合格が必要です。講習を聞いていれば難しくない内容で、資格の付与率はほぼ100%となっています。
講習会の最後には「修了証書」を受け取ります。お店を開業する際、保健所へ営業許可の申請をする時に、修了証は必要になります。
パソコン・タブレット・スマートフォンを使用し、オンラインで講義動画の視聴と確認試験を受けることで、必要な知識を習得する学習形態のことです。インターネット環境が整っていれば、受講者は職場に限らず、自宅や通勤時間等を利用して計画的に受講することができます。
ログイン時や講義・確認試験中、随時、顔認証が行われるため、受講者はカメラ付きのパソコン、タブレット、スマートフォンでなければ受講できません。
ビデオ動画
合計 約6時間
新規ログインID・パスワードの登録日より30日間。入金から60日経過してもログインID・パスワードを未登録の場合、自動的に解約となります。期間の延長がないため、必ず期限内に受講を修了させる必要があります。
各章および最後に確認試験を受験し、全てに合格して修了となります。ですが、確認試験はオンライン上で受講することができ、合格するまで何度でも受験することができます。
11,000円(税込) ※2023年10月時点。受講料納入後の返金はされません。受講者の変更もできません。指定されたクレジットカード支払いまたはコンビニエンスストア支払いから選択できます。
受講の際に、学習テキストが発送されるので、申し込み先に従い、送付先を選択してください。
講習会の最後には「修了証書」が発行され、テキスト送付先と同じ住所に発送されます。お店を開業する際、保健所へ営業許可の申請をする時に、修了証は必要になります。
上記は神奈川県の例になります。お住まいの地域によって内容が異なる場合がございます。必ずご自身で確認の上、お申し込みをしてください。また、1日で取得できる資格ではありますが、東京都や大阪など人口の多い地域では1~3ヶ月先の予約が埋まっている場合がある為、早めに予約しましょう。
食品衛生責任者の資格取得後、食品営業許可を申請するためには、以下の一般的な提出書類と注意事項が考慮されます。ただし、都道府県や市区町村によって要件が異なる場合があるため、詳細については所在地の保健所や食品衛生センターに確認することをおすすめします。
提出書類や手続きの詳細は地域によって異なることがあるため、所在地の保健所や役所の担当者に直接相談し、必要な書類や手続きについて確認することが大切です。
飲食店や食品関連の事業を展開する場合、食品営業許可証は不可欠な法的要件の一つです。この許可証は、公共の健康と安全を守り、食品に関する規制を順守するために設けられています。
許可証を取得するには、所在地の自治体(市区町村)の保健所や衛生センターに申請を行う必要があります。許可証の申請プロセスは地域によって異なる場合がありますが、通常、以下のステップに従います。
食品ビジネス許可証を取得した際には、店内やオフィスに名前プレート(食品衛生責任者の名)を表示しなければならないと、各自治体が定めています。許可書やプレートの掲示の仕方は、所属自治体の公式Webページで確認してみましょう。免除された講習でも、食品衛生責任者の名を示すプレートの製作は必須です。
食品営業許可証は通常、一定の有効期限が設けられています。この期間が終了する前に許可証を更新しなければなりません。有効期限切れの許可証を持っていると、飲食店は営業停止などの制裁を受ける可能性があります。更新のプロセスは地域によって異なることがあるため、期限前に手続きを行うことが重要です。
食品衛生責任者や食品営業許可のシステムについてよくある質問をまとめてみました。
残念ながら、通常、複数の施設での食品衛生責任者の兼任は認められていません。ただし例外として、同じ建築物の中での隣接する店舗や、衛生上の問題がないとされる小さな施設では、兼任が許されることもあります。具体的な判断は各自治体によるため、詳細は保健所に確認してみてください。
食品衛生責任者の名前が刻印されたプレートの展示の仕方は、各自治体により指定されています。たとえば札幌市の場合、営業する場所内で訪問者が容易に確認できる位置にプレート(縦23cm以上、横5cm以上)を設置する必要があります。衛生協会を通じて、一定の料金で作成することができます。
参考:札幌市「食品衛生責任者の指南」
修了証をなくした場合、再発行の申請が求められます。各自治体の公式Webページで、申請に必要な文書を調べることができます。たとえば、熊本県のケースを挙げると、再発行のための料金として1000円が求められます。直接窓口での手続きが困難な場面では、追加で1000円の送料を支払えば、郵送を利用することができます。
参照:熊本県食品衛生協会「Q.修了証の再発行手続きについて」
はい。1997年以降に取得された食品衛生責任者の資格は、日本国内でどこでも有効です。食品衛生責任者の養成講座が1997年を境に国全体で統一されたためです。1996年以前に取得した資格に対する各自治体の対応は様々ですので、関連する保健所に相談してみてください。
参照:東京都福祉保健局「食品衛生責任者について」
いいえ、修了証には有効期間が設けられていません。一度手に入れたら、継続して活用することが可能です。食品のビジネスを展開する際には、早期に取得を検討するのがおすすめです。但し、食品衛生責任者を店内で変更する際には、一定の手続きの更新が求められます。さらに、「営業許可証」に関しては有効期限が存在しますので、その点をお忘れなく。その更新時には、特定の実務講習の受講が要される場合があります。
各自治体によって微妙な差異は見られますが、食品衛生責任者養成講習会の申し込み手順や教室の内容は基本的に統一されています。食品事業を立ち上げる際に「食の安全性」を確保するというミッションを持ち、法律を尊重しつつ食品衛生責任者の指名と設置を推進しましょう。
食品事業を開始するに際しての必要な資格に関しては、以下のコンテンツで詳しく解説していますので、合わせて確認してみてください。
SHOP(店舗/商業空間)のマーケティング・設計デザイン・施工サービスの案内資料です。ミッションや役員紹介、売上推移などの会社情報や、CX設計〜デザインの考え方やコンセプト、こだわり、私たちの強みを網羅的にご紹介しています。
無料ダウンロードはこちらから
スペースコンストラクション(空間施工)事業のサービス紹介資料です。工事のみのご依頼も承っておりますので、ぜひご覧ください。
無料ダウンロードはこちらから