
(ユニオンテックとのやりとりは)とても心地よいコミュニケーションスタイルだったと思います。私たちの考えを汲み取りながらも、「こうした方が良いですよ」と積極的にアイディアを出していただきましたから。仕事で関わっているけれど、カジュアルにお互いの意見を言い合える関係性を構築できたのも良かったです。
CAMPARI JAPAN株式会社 HR エグゼクティブ 赤坂恵利香 様
“こんな会社にしたい”と思うイメージ、社員の働き方改善など、お客様が思い描くご要望に対し、内装デザインをとおしてユニオンテックがどのようにお応えしたか? プロジェクトの裏側にある“ストーリー”を覗くことができる「オフィスメイキングnote.」の第17弾。
今回お話を伺ったのは、CAMPARI JAPAN株式会社様。イタリア・ミラノに本社を置くCAMPARI GROUPの合弁会社だったCT Spirits Japan様が、商号を変更しCAMPARI GROUPの子会社となるタイミングで移転が行われました。
(中央左から)
CAMPARI JAPAN株式会社 HR エグゼクティブ 赤坂恵利香 様
同 HR&GA Director 高野涼子 様
(外側左から)
ユニオンテック株式会社 ワークスペースプロデュース事業部 クリエイティブデザイン部 佐治太一
同 デザイン2G 里山広忠

―― 移転を決めた理由から教えていただけますでしょうか。(以下、敬称略)
赤坂 定期借家契約を終えるタイミングで、ビルを出なければいけませんでした。それに、チームメンバーが増えて執務スペースが足りなくなっていましたし、営業やコマーシャルチームが使用するサンプルの置き場も無くなっていて、各所がストレスフルな状態でした。そのうえ、JRも地下鉄も使えましたが、駅からの距離も遠く、どの駅から行くにも徒歩10分はかかっていました。
佐治 会議室だけ、斜向かいのビルにありましたよね。
高野 そうなんです。まだコロナ禍が明けて間もない頃でしたので「借家契約を延長してもいいですよ」という話もしてくださったのですが、我々としてはそういった様々な理由から移転したいと考えていました。物件を見始めると夢が膨らみますから、「移転したくない」というメンバーはほぼいなくなっていましたね。
―― 具体的には、どういった物件を探していましたか?
高野 立地に関しては、社内に地図を貼って全社員に意見を募り、渋谷、新宿近辺に絞りました。そのうえで、駅近且つ築年数が比較的浅い物件を見ていたのですが、当然ながら金額の高い物件ばかりでしたので、渋谷の中心地を避けて青山あたりで探すようになりました。新宿は、物件数があっても古いものが多かったですし。
赤坂 ちょうどいい物件があっても西新宿近辺で、駅から離れていましたよね。
高野 なので、だんだんと青山の物件を見るようになっていきました。
佐治 なかでもこの新青山ビルは、コストパフォーマンスが良いように思います。
高野 築年数が50年近いビルなのですが、古いからこそリノベーションで見栄えが良くなるケースが多いのだなと気づきました。それまでは築20〜30年くらいのビルの物件を探していましたが、中途半端に築浅の物件を探す必要はありませんでしたね。
赤坂 たしか、この物件の内見に来たときに「共用部をリニューアルします」と聞きましたよね。各階のエレベーターホールも順番にリノベーションしていく予定だったようなのですが、この階の順番が比較的早く回ってきました。いろいろな意味で条件が良い物件でしたよね。
高野 なので、内見してすぐに即決したのですが、それまでの道のりは長かったです。数カ月単位で物件探しをしていました。
―― その後ユニオンテックにデザインのご依頼をいただきますが、その経緯も教えてください。
高野 物件選びの際、我々に根気強く付き合ってくださったのが三鬼商事さんなのですが、そのご担当者の方にユニオンテックさんをご紹介いただいたんです。もともと好印象だった三鬼商事さんの紹介だったので、それなら間違いないだろうということでお願いしました。
赤坂 もともとはいろいろな業者さんに声をかけていたのですが、なかでも親身になってくださったのがユニオンテックさんでした。コミュニケーションが非常にスムーズでしたし、私たちの考えていることを丁寧に汲み取ってくださったイメージがあります。
佐治 弊社の櫻田が密にコミュニケーションをとるタイプですからね。最初に動いたのは私ですが、それ以降は櫻田がやってくれました。
―― 最初というと、どういったことをしたのでしょうか?
佐治 三鬼商事様経由で声をかけていただきテストフィットを行った際、バーカウンターの給排水などの問題が生まれたのですが、そのまましばらく動かなかったんです。なので、私と櫻田がご連絡を差し上げて「給排水の問題もクリアできるので、我々にPMをやらせていただきたい」と提案し、正式に任せていただきました。
高野 そうでしたね。ともあれ、私の記憶では最初からいてくださった印象です。みなさん頼もしかったので、設計施工をお願いすることはさほど複雑な決断ではありませんでしたね。

―― オフィス作りを進めるうえで、CAMPARI JAPAN様がユニオンテックに伝えたご要望を教えてください。
高野 バーカウンターが必須であることと、会議室が欲しいとお伝えしました。会議室は、少人数でも大人数でも使用するので、小さい部屋2つを繋げると大会議室になるような仕様にしていただきたいというお話は最初からしていましたね。当初はフォンブースも欲しいと言っていたのですが、予算の都合上叶いませんでした。
佐治 当初想定していた予算から、ずいぶん膨らみましたからね。
高野 バーカウンターもお金がかかりましたので。
赤坂 たしか最初に、里山さんからデザインのイメージをいただいていましたよね。
里山 そうでしたね。シンプル、クラシック、モダン、アバンギャルドとジャンル分けしたマトリクスをお渡ししつつ、「シンプル・モダン寄りのデザインだと、お酒が引き立つと思います」とご提案した覚えがあります。

赤坂 それも、物件選びのときの地図と同じようにオフィスに貼って、社員の意見を募りました。
佐治 ただ、その結果、意見が割れたんですよね。
高野 なので、別の方法で案を固めていきました。弊社には、ブランドアンバサダーとしてイベントなどに出演するバーテンダーがいるので、彼に相談して現在の形になりました。
里山 シンプル・モダンに寄せた当初のデザインから、クラシックな雰囲気にしました。
高野 棚が木目になったところから、一気に印象が変わった気がします。木目や壁のマテリアルを少し変えるだけで、こんなに温かみが出るのだなと感じました。私たちのセンスだけではたどり着けません。
里山 カンパリ自体とても歴史のあるお酒ですし、クラシカルなデザインにしたほうがブランド的にもはまりますね。
高野 白でシンプルに行こうと考えていた時期もありましたが、今考えてみるとそういうシャープな内観の似合う会社ではないなと思います。
里山 カンパリ然り、ワイルドターキー然り、世界観のしっかりとしたお酒が多いですものね。
高野 そうなんです。キャラが濃いですよね。
赤坂 一つのブランドのイメージに絞ってしまうと、ほかが浮いてしまう。
里山 だからこそ最初は、箱となるバーをシンプルにしようという傾向が強かったのですが、とはいえアクセントは欲しい。なのでクラシカル調にして今のバランスに落ち着きました。

―― 青を基調にしたエントランスもとてもインパクトがあります。
高野 実は、最初は赤だったんです。「カンパリは赤だから、真っ赤なエントランスにしたいね」、「赤で怪しげにしたいね」とひとしきり盛り上がったのですが、リージョンのシンガポールにデザイン資料を見せたら「商品は赤だけど、ブランドカラーはブルーなので」と難色を示されてしまい…。その結果、ブルーに。赤も良かったのですが。
佐治 ともあれ、あの青いエントランスを抜けるとすぐにバーカウンターとリフレッシュスペースなので、驚かれる方は多いと思います。空間のイメージがはっきりと変わるので。それぞれのエリアがまとまっていて綺麗です。
高野 実際、喜ばれていますよ。この前来た海外の社員も、嬉しそうに写真を撮っていました。
佐治 確か、オフィスのお披露目でもいろいろな方が来られたとか。
高野 そうですね。競合他社に比べると比較的規模が小さい会社なので、お披露目といっても大々的にできないかなと思っていましたが、イタリア大使館の方まで来てくださってとても良いパーティーになりました。このリフレッシュスペースの椅子と机を全て取り払ってビュッフェ形式にしたのですが、机も椅子も動かしやすくて助かりました。「もう少し安くなりませんか?」と櫻田さんに相談して探してくださったものなのですが、机の天板を立てられるので、かさばらず助かっています。
佐治 このリフレッシュスペースには、立席で70人入れるようにしてほしいとのリクエストもいただいていましたよね。
里山 そうでしたね。ちゃんと収容できるか、図面に70体並べて検証しました。
高野 そのおかげで、着席でも40人は軽く入るスペースができました会議の内容によっては、このスペースでもできます。
佐治 こんなに狙いどおりに使ってくださるお客様はなかなかいないですよ。
高野 50人程度の会社だからできたことだと思います。

―― バーカウンターとリフレッシュスペースの横には、レアエリアと呼ばれる小部屋があります。この部屋を作った意図を教えてください。
赤坂 グローバル支店がそうだったんですよね。
高野 そうですね。我々が移転する少し前にシンガポール支社がリニューアルしたのですが、そこにもレアエリアが設けられていました。本来は商談のために使われる部屋で、シンガポールではそのように活用されているようですが、このオフィスのレアエリアではまだ行われたことはないです。
赤坂 せいぜい試飲でしょうか?
高野 そうですね。人数もあまり入りませんし。
赤坂 ただ、レアエリアのどこかでユニークさを出したいと弊社のプロジェクトチームのメンバーが言っていまして。スピークイージー(※禁酒法時代のアメリカに点在した隠れ酒場の俗称)を取り入れるのもいいんじゃないかという提案から、話が膨らんでいきました。「ワオ!」と驚いてもらえるようなオフィスにしたいという思いも、ここで具現化した気がします。ほかのエリアよりもお金をかけましたね。
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佐治 入口のドアは、隠し扉になっています。こんな会社、なかなか見ませんよ。
高野 イメージは『ハリー・ポッター』で、予算の都合で実現できませんでしたが、当初はボタンを押して自動で開く仕掛けにする予定でした。
佐治 外部の方の印象はいかがですか?
赤坂 喜んでもらえますよ。
高野 実は、商談ではなく面接で使っているのですが、そのときにも「うわぁ」と驚いていただけます。お見せするだけでも場が和みますね。
里山 レイアウトの関係上、エントランスを決めた時点でレアエリアが狭くなってしまうことはわかっていたのですが、結果的にスピークイージーというコンセプトに沿ったサイズ感になったと思います。

―― どの工程も、みなさんでじっくりと話し合いながら形にされていったようですが、御社のプロジェクトチーム間ではどのように意見をまとめましたか?
高野 チームメンバーは私たちを含めて6人いました。部署も年齡も性別もあえてバラバラにして、いろいろな意見を取り入れながら話し合っていたので、当然意見が割れることも多かったですが、一つひとつ議題に上げて話し合うことを大事にしていましたね。理由もなく突っぱねられてしまうと遺恨が残りますが、ありかなしかを考える時間を設ければ、その意見が通らなくても納得はできる。だからこそ、このプロセスをちゃんと踏もうと心がけていました。
―― では、ユニオンテックとのやりとりはいかがでしたか?
赤坂 とても心地よいコミュニケーションスタイルだったと思います。私たちの考えを汲み取りながらも、「こうした方が良いですよ」と積極的にアイディアを出していただきましたから。仕事で関わっているけれど、カジュアルにお互いの意見を言い合える関係性を構築できたのも良かったです。
高野 自分が家を建てたときに経験したことなのですが、我々お客さん側の夢を業者さんが全部飲んでしまうと、いざ住んでみたときに「あれ?」と感じる家になるものなんです。ですがユニオンテックさんは、私たちの夢を聞きながらも絶対に守るべき軸を持っていて、そこからブレることなくこのオフィスを仕上げてくださいました。
佐治 業界あるあるですが、オフィス移転は基本的に“玄人(業者)対素人(お客様)”なので、業者側が“マウントをとる”か、“お客様の言われたことだけをやる”かの二極になってしまいます。どちらのやり方もリスクは少ないでしょうから否定するつもりはありませんが、僕からするととてもつまらない仕事に見えてしまうんですよね。なので、そうならないようきちんとやり取りしようという心持ちで臨んでいるつもりです。

里山 そしてデザイナーとしては、デザインの方向性がブレないよう心がけました。今回はプロジェクトチームに6名いらっしゃって比較的多人数でしたので、こちらの提案が曖昧だったら意見が定まらず最後の最後まで決まらない可能性があります。そこで、エントランスは魅惑的、バーカウンターはオーセンティックというように、エリアごとにデザインテーマを定めて、一つひとつ承認をとりながら進めていく方法をとりました。そうすると、「椅子はこの色にしたい」「もっと明るい雰囲気にしたい」と細かな変更が出ても、デザインテーマの範囲内で変えていくことになるのでブレにくいですし、全員の意思統一もしやすいんですよね。

コンセプト提案資料より一部抜粋
―― 新オフィスができあがってから1年半ほど経ちましたが、改めて使い心地はいかがでしょうか?
赤坂 イベントがしやすくなりました。前のオフィスですと、場所を借りて行っていた規模のイベントも、今ではリフレッシュスペースで気軽にできます。セミナーの頻度も増えたので、良い循環ができていると思います。あとは、前のオフィスに比べると倍くらいの広さになったので、執務スペースも使いやすいです。
高野 前の環境は過酷すぎましたからね(笑)。あとはもちろん、バーカウンターも。もともとはハッピーアワーのようなイメージで、「仕事終わりに飲める場所があるといいね」という意図で作ったのですが、今はお客様にお見せして弊社の世界観をお伝えするショールームのような役割を担っています。会社にバーカウンターがあるなんて、インパクトがありますからね。労基署の方が来られたときも和みました。新卒を採っていないのでオフィスを大々的にアピールすることはありませんが、三鬼商事さんのオウンドメディアには出させていただきましたよ。
赤坂 あとは、採用面談のときに「サイトでこのオフィスをみました」と言っていただくことも増えましたね。
高野 このオフィスに来た方は、みなさん気持ちよく帰られるので、よく体現してくださったなと思っています。
佐治 それはよかったです。お二人が頑張ってくださったおかげですね。
高野 半年間もやっていましたからね。もう一度やれと言われてもできません(笑)。

Photo=Yasuharu Hikawa Interview=Mayuge Matsumoto