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一般財団法人言語交流研究所ヒッポファミリークラブ 活動推進部次長 平山絹恵 様
同 常務理事・事務局長 平岡一武 様
同 本部プロジェクト部 松尾綾香 様
ユニオンテック株式会社 ワークスペースプロデュース事業部 プランニング&デザイン部 デザインG デザイナー 中村麟太郎
同 プランニングG シニアプロデューサー 櫻田莉紗
(改装をして)体感的に広くなりました。前は机も物も多くてどこに移動するにも必ず椅子に体をぶつけていたのですが、今は全体的にすっきりしています。“フェロウ”と呼ばれる近隣地域の会員の方々がよく使う印刷室も、執務エリアからフェロウラウンジに移動させたので、プライバシーも確保できました。
一般財団法人言語交流研究所ヒッポファミリークラブ 活動推進部次長 平山絹恵 様
“こんな会社にしたい”と思うイメージ、社員の働き方改善など、お客様が思い描くご要望に対し、内装デザインを通してユニオンテックがどのようにお応えしたか? プロジェクトの裏側にある“ストーリー”を覗くことができる「オフィスメイキングnote.」の第14弾。
今回お話を伺ったのは、全国に約700箇所もの活動場所を構える言語交流研究所ヒッポファミリークラブ様の本部。東京・渋谷にあり、同フロアに職員の皆様が働く“執務エリア”と、会員が集まる“フェロウラウンジ”が隣接しています。今回は、その両方の改装を行ないました。

―― 今回、改装に踏み切った理由を教えてください。(以下、敬称略)
平岡 きっかけは、昨年の春頃に「執務エリアをフリーアドレスにしたい」という意見が出たことでした。ずっと固定机だったのですが、人数が増えたり減ったりするたびに机を入れ替えるのが大変でして。
平山 引き出しの中にしまっているものは全部入れ替えますし、電話の配線などネットワーク関係もすべて変えることになるので、意外と大掛かりな対応になります。
平岡 昨春は、ちょうど机の移動が頻繁に行われたこともあり、「そろそろフリーアドレスにしてもいいのでは」という話があがりました。
平山 加えて、コロナ禍を経て働き方が変わったのも大きな理由です。テレワークが導入され毎日出社しなくてもよくなったため、“誰も座っていない机があるのに、固定席だから他の職員は使えない”という非効率なケースが増えてしまいました。
平岡 実は以前にも一度フリーアドレス制に変えたことがあるのですが、うまくいかず結局固定机に戻すことになってしまいまして。なので、「今回はいっそ全面リニューアルしてしまおう。そうすれば移行しやすいだろうし、職員がより働きやすい空間にできるのでは」と思い、改装を決めました。
―― 社内でプロジェクトチームを作ったと伺いました。
平山 そうです。各部署から一人ずつ、合計8人のチームを作って、特定の部署だけが得をしないよう、なるべく平等に意見を吸い上げられる組織にしました。
松尾 そうして春にキックオフして、まず職員にアンケートをとりましたよね。
―― オフィスの改善案を聞くアンケートですね。
平岡 とくに、執務エリアの動線に関しては改善してほしいという声があがりました。執務エリアの横にはフェロウラウンジと呼ばれる部屋があり、そこには“フェロウ”と呼ばれる近隣地域の会員の方々が来られるのですが、フェロウがよく使う印刷室は執務エリアの奥にあり、自席で働いている職員の間を頻繁に通っていたのです。職員の扱う書類は機密性の高いものも多いので、「執務エリアには職員以外が入らないよう、レイアウトや動線を見直してほしい」とは、アンケートによくあがっていました。
―― 貴社内でアンケートをとり改装案をまとめてからは、業者に声をかけられたかと思います。
平岡 以前からお付き合いのあった大塚商会さんと三和エフエムデザインさんに相談しました。当時は、この2社に参加していただいてコンペにしようと思っていたのですが、もう1社加えて、3社ほどのデザイン案を見てみたいと考えていました。
―― では、その段階でユニオンテックに声をかけてくださったのでしょうか?
松尾 実は、そういう流れではありませんでした。最初は、ユニオンテックさんが来られていることも知らなかったのですよね。
櫻田 そうですよね(笑)。ユニオンテックは、大塚商会様の協力会社としてヒッポファミリークラブ様の打ち合わせに参加していたので。
平岡 今回は、あくまでも大塚商会さんの一部として来ていただいていたんですよね。
櫻田 そうです!
―― そこから、どのようにデザインに携わることになったのでしょうか。
櫻田 少し裏話をすると、ヒッポファミリークラブ様との打ち合わせを終えたあと、大塚商会様、三和エフエムデザイン様のご担当者様と私で「薄々分かっていたけれど…各社強みが違いますよね」という話になりました。デザインはユニオンテック、家具は三和エフエムデザイン様、インフラは大塚商会様、というように。ならば、3社が手を取り合い、それぞれの強みを生かして今回の改装プロジェクトを進めるのはどうだろうという話になり、次のヒッポファミリークラブ様との打ち合わせで提案したところ、この形で進められることになりました。相当珍しいケースです。

松尾 正直なところ、最初はどうなるのだろう? とソワソワしていました。2社だと思っていたのに、3社いらっしゃいましたし(笑)。だけど、「コンペではなく、3社が協力して進めるのはどうでしょうか?」というお話を聞いて、とても平和に収まる提案だなと思いました。想定していなかった展開だからこそ、面白くなりそうだなと感じましたね。
―― そうして、改装プロジェクトが本格的に始動。先ほどお話を聞いたフリーアドレス化や執務エリアの動線の改善などを、ユニオンテックの担当者に伝えてくださったのですね。
松尾 そうですね。今回の改装で叶えたいことは、この時点である程度伝えられたと思います。「絶対にガラス張りにして、中が見えるようにしていただきたいです」といった話もしましたね。
平岡 また、青と黄色がヒッポファミリークラブのオフィシャルカラーなので、この2色を基調にしてほしいともお伝えして、デザインに反映していただきました。
―― これを踏まえて、デザイナーの中村さんはどんなふうにデザイン作業を進めたのでしょうか。
中村 使いたい色や部屋ごとの雰囲気の理想がお客様の中で非常にはっきりしていたので、その思いをうまく汲み取ってデザインに落とし込みたいと思っていました。一度弊社にお越しいただいて、「執務エリアはどんな空間にしたいのか」「フェロウラウンジはどんな空間を目指しているのか」とそれぞれに深堀りをしたのですが、そこで方向性を固められたのは大きかったですね。
その場では、「執務エリアでは落ち着きたい。けれどくつろぐのではなく活気がほしい」「フェロウラウンジに来た人にはワクワクしてもらいたい。キャッキャと楽しんでもらいたい」といった言葉を引き出すことができたので、「じゃあ、執務エリアはカフェのような雰囲気にしよう」、「フェロウラウンジは公園のような空間にしようかな」「ポップな色使いにしてもよさそうだな」という発想が生まれました。
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松尾 私も、あの場で先に言語化できてよかったです。「この色がいい」ではなく、「こういう雰囲気にしたい」というところに目線を合わせられたから、選択肢がたくさんあってもあまり迷いませんでした。いろんな青が並んでいたとしても、「私たちが求めているのは、暗い青じゃなくて明るい青だね」と意見が揃いやすかったです。
―― では、実際にはどのようなデザインを提案しましたか?
中村 フェロウラウンジは、フェイクグリーンを入れたりトタン風の壁を取り入れたり、芝っぽい色のマットを敷いて、屋外を思わせる空間にしました。「公園のような空間」というところから着想を得たデザインですね。また、オフィシャルカラーの青と黄色だけでなく赤も加えたポップなデザインもあわせて提案しました。
そして執務エリアは、フェロウラウンジと意匠をつなげて統一感を出しつつ、気軽に立ち寄れるカフェのような空間と、アクセントカラーをしっかり入れて軽快さを優先した空間の2パターンを提案しました。職員の皆様のコミュニケーションがもっと活発になればいいなと思い、どちらのパターンもファミリー感を意識してデザインしています。
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ご提案したパース画像

―― デザインを提案してからは、ヒッポファミリークラブ様との定例会議を頻繁に行っていたと聞きました。
中村 そうですね。提案したデザインをベースにしながら、デスクの配置やフェロウラウンジの壁の色、トタン風の素材など、いろんなパターンを提案して、お客様にとって最良のパターンを選んでいただく段階に入りました。
平山 大変でしたよね。何回も、何回も変えてもらいましたから。
中村 いえいえ。先ほどもお話されていましたが、どこかの部署だけが特別にならないようにと配慮されているのはよく分かっていたので、とにかくパターンをたくさん出そう! と頑張りました。
櫻田 フェロウラウンジには一部土足で入れるスペースがあり、そこがベビーカー置き場になっているのですが、そのベビーカー置き場だけでもいくつか出しましたよね。
平山 「土禁エリアはある程度確保したいから、これ以上広くできない」「でも、これだとベビーカー置き場が狭すぎる」と、何度も話し合いました。そのたびにレイアウトの線を引き直してもらうことになってしまいましたね。

中村 あと、フェロウラウンジといえば、トタン風の壁のパターンもいくつか出しました。「トタンの波は、この幅でいいのか」という話になったので、幅違いのものなどを提案した記憶があります。
平山 波が細かいと、目がチカチカしてしまいますからね。
平岡 そう、フェロウラウンジを使うとき会員の方々はこの壁のほうを向いて座るので、常時視界に入る壁が見づらくてはいけないのです。なので、波のパターンもそうですが黄色と青のトーンにも気を使いました。
中村 そうでした。明るすぎるとチカチカしてしまうから、原色から遠い色合いにしましょうという話がありましたね。
松尾 あとは壁紙も。「木目にしたい」と決まっていたものの、いろんなパターンを出していただきました。毎回8パターンくらいは用意していただけて、この中から選べばいいという状況を作っていただけたのは助かりました。労力のかかる作業だと思うのですが、本当にありがたかったです。
中村 「ほかにもいい壁紙があるのでは」「もっといいトタン壁があるのでは」というモヤモヤは、なるべく払拭していただきたいと思っていました。僕としてもたくさんの選択肢を見て、納得する答えを見つけていただけて良かったです。
―― また、定例会議には大塚商会様と三和エフエムデザイン様もいらっしゃったと思います。3社で協業する利点はどこに感じましたか?
中村 率直に言って、話が早かったです。今回の改装では収納も課題になっていましたが、「すぐには減らせないから、ある程度容量のあるキャビネットがほしい」という話になったとき、三和エフエムデザイン様がその場ですぐにぴったりのキャビネットを提案してくださいました。家具の色の監修はデザイナーの僕の役割なのですが、そのやり取りもいつもよりスムーズにできた印象です。毎週定例で顔を合わせていたからできたことですね。

―― ともあれ、3社いるから難しいこともあったかと思います。
櫻田 大塚商会様も三和エフエムデザイン様もいわば競合他社なので、そんな方々の前で、ユニオンテックが先頭に立ち定例会議をまとめなければいけないのは大変でした。いろんな立場の方がいたからこそ、どのコストを削ればいいのか判断しづらかったのも、今までにない悩みどころでしたね。また、ユニオンテックが工事の日程を早めたので、各所にその調整をしていただきました。
松尾 そうでしたね!
―― その調整が大変だったということですね。
櫻田 本来、工事を後ろ倒しにすることはあっても前倒しにするケースはまずありません。ですが、今回は改装なので長期休暇を狙って工事に入らなければならず、正月を逃すと次はゴールデンウィークになってしまいます。進捗も良かったため、ならば正月にやってしまおうと思いました。
松尾 櫻田さんから伺った工事期間が想定より短かったので、「本当にこの期間内で終えられますか?」「残作業が出ませんか?」と何度も確認させてもらいました。でも、櫻田さんは大丈夫とおっしゃるので。
櫻田 いろんな作業を加味して全部で2週間かかる想定で、後半1週間で細かい作業をさせてくださいとお伝えし、工事の段取りをしました。
―― 正月の工事を経て、できあがったオフィスを見たときはいかがでしたか?
松尾 うれしかったですよね?
平岡 もちろん。
松尾 提案資料にあったパースどおりだ! と驚きました。イメージしていたものがそのまま現れて、ワクワクしましたね。
平岡 僕もまさにそういう心境でした。前情報でもらったものが実現した、以前とは確実に変わったなと思いました。
平山 あと、体感的に広くなりました。前は机も物も多くてどこに移動するにも必ず椅子に体をぶつけていたのですが、今は全体的にすっきりしています。最初に言っていた印刷室も、執務エリアからフェロウラウンジに移動させたので、プライバシーも確保できました。
松尾 自然光もいっぱい入ってきて、執務エリアが明るくなった気がします。

櫻田 おそらく、壁や床が明るい色に変わったからでしょうね。
平山 前は、壁がコルクでしたからね。コルク壁もうちには欠かせない要素のひとつだったのですが、今回改装する際に若い職員に話を聞いたら、みんなそこまで執着がなかったようで、すべて取り払いました(笑)。
―― あと、オフィシャルカラーの青と黄色が、梁や柱に入っているのも目を引きますね。
中村 梁の黄色は以前から入っていて、「このままにしたい」というお話も伺っていたので、生かしています。加えて、今回は青も入れました。執務エリアとフェロウラウンジそれぞれ部屋をぐるりと囲むように入れていて、部屋の印象を引き締めています。
平岡 そういう効果があったのですね。個人的には、エントランス入ってすぐにあるフリースペースが気に入っています。
平山 人気スペースですよね。
平岡 実は、定例会議の途中までバーカウンターを作る案があがっていました。部署関係なくみんなで談笑できるスペースとして良さそうだなと思っていたのですが、なくなってしまい…。残念だなと思っていたところにフリースペースができたので、うれしいです。来客の方も職員もよく利用していて、まさに活気を感じますね。

Phoo=Yasuharu Hikawa Interview=Mayuge Matsumoto