【オフィスメイキングnote.】株式会社ヤギ様

(左から順に)
株式会社ヤギ コーポレート本部 人事総務部 部長代理 増田博也 様
同 コーポレート本部 経営企画部 経営管理/IRグループ 片山智子 様
同 取締役 常務執行役員 アパレル第二本部長兼ブランド・リテール本部 本部長 三橋大作 様
ユニオンテック株式会社 ワークスペースプロデュース事業部 プランニング&デザイン部 プランニングG シニアプロデューサー 木暮仁
同 デザインG
デザイナー 中村麟太郎

「せっかく食堂をリニューアルしたんだから、使っていない和室も有効活用するべきでは?」と社長から提案がありました。食堂を変えていただいたご縁もあり、「それならばお客様をお迎えして、かしこまった話ができるようなスペースに改装してもらうおう」と、迷わずユニオンテックさんに依頼いたしました。

株式会社ヤギ 取締役 アパレル第二本部長兼ブランド・リテール本部 本部長 常務執行役員 三橋大作 様

“こんな会社にしたい”と思うイメージ、社員の働き方改善など、お客様が思い描くご要望に対し、内装デザインを通してユニオンテックがどのようにお応えしたか? プロジェクトの裏側にある“ストーリー”を覗くことができる「オフィスメイキングnote.」の第13弾。

繊維の街である大阪・堺筋本町に1893年(明治26年)創業という、長い歴史を持つ繊維商社、株式会社ヤギ様。今回は、オフィスではなく社員食堂、さらに多くの社員がその存在を知らなかったという、古風な和室の大幅なリニューアルのご依頼でした。令和になった今も“昭和感”が残ったまま、時間が止まっていた2つの空間が様変わりする、心がワクワクするような竣工までの過程をうかがいました。

 

“ザ・昭和”から“脱・昭和”へ

―― 社員食堂の改装に踏み切った経緯をお聞かせください。

増田 これまでの社員食堂は“ザ・昭和”な食堂で、あまり稼働率も高くありませんでした。3年前にオフィスのリニューアルをしたことをきっかけに、「食に関してもリニューアルしよう」と、食堂の環境も厨房の業者さんも一新することにしました。

―― “ザ・昭和”な食堂とは、具体的にどのような空間だったのですか?

増田 長いテーブルを縦に並べて、丸椅子がダーっと並んでいる、いわゆる“食堂”でしたね。壁に掛けた掲示板にメニューの紙を貼っているのが定番で。

三橋 テーブルにはビニールシートがかぶっていて、食券を買って注文する。本当に昭和のまま堂でした。写真を見たとき、きっとビックリしましたよね? 

中村 はい、ビックリしました(笑)。でも、ここから変えていく楽しさはありました。

木暮 「味のある食堂だな」というのが最初の印象でしたね。そこをただきれいにするだけではなく、皆さんが喜んで使ってくださる空間にするためにちゃんと噛み砕きながら考えて、まずはプレゼンさせていただきました。

―― ユニオンテックに依頼されたきっかけを教えてください。

増田 コンサル的に入ってもらっている会社さんを通して、3社ほどお話をさせてもらいました。その中で、デザイン性と対応力からユニオンテックさんにお願いしようということになりました。私たちも正直なところ、「食堂を変える」と言っても、明確にどう変えるのか、ゴールが見えていない状態で始まっていたので、ユニオンテックさんの導き出しは、わかりやすかったですね。

―― では“脱・昭和感”に向けて、どのようなプレゼンをされたのでしょうか?

木暮 2案ほど提案させていただきました。最初は植栽がたくさんあって、天井からも吊り下がっているデザインを提案させていただいたのですが、覚えていらっしゃいますか?

三橋 もちろん、覚えてますよ。

木暮 一例として提案させていただきましたが、実際に食堂の運用を考えると、「ちょっとやりすぎだよね」というご意見もあったかと。

―― グリーンが溢れるカフェのようなイメージですか?

片山 そうでしたね。「素敵なデザインをいただいているな」とは思ったのですが、「社員食堂という場所に合っているのか、気になります」という、社内からの意見もありました。

中村 プレゼン時に“トリップ空間に行っちゃおう”というコンセプトを僕から提案させていただいていたので、その感覚でデザインすると、ちょっとファンタジーに走り過ぎてしまいました(笑)。

木暮 結果、その後に出した案をブラッシュアップしながら、現状の食堂の形へ進めていくことになりました。

初期にご提案した食堂2パターンのイメージパース画像

 

こだわったのは、バリエーション豊かな空間スタイル

―― 社員の皆様の意見が、リニューアルに反映されていたようですが。

増田 今回は全社横断的なことで、三橋がプロジェクトチームを組んで旗を振ってくれていました。そこから広い視野で社員の生の意見を聞いていましたね。

三橋 プロジェクトチームは、男性、女性、役職もあり、なしで年代も分けて4人に参加してもらったので、まんべんなく意見は拾えたのかなと思います。たとえば、席数についてはかなり議論しました。今まで通りの数にするのか、少し減らしてスペース的に余裕を持たせてもうちょっとオシャレにするのか、2人席、4人席だけじゃなく1人席も必要なのでは?とか。

片山 これまでは、ランチタイムしか食堂が空いていなくて、「それ以外の時間に活用ができていないのは、もったいないね」という声は、以前から出ていました。ですので、ランチ時間が終わった後も打ち合わせをしたり、何かができる場でありたいこともお伝えしました。

―― それらの意見をどのように具体化していったのでしょう?

木暮 こだわったのは空間スタイルでした。皆様のご意見をうかがうと、働き方として、たくさんのバリエーションがあった方がいいだろうなと感じました。ベンチソファでデスクをつなげて4〜6人、1on1だったり、1人用があったり、ちょっと囲めるテーブルがあったり、使い勝手のいい空間を作るようにしました。

中村 年代によって、食堂での過ごし方もそれぞれに違うだろうと考えて、椅子の配置を変えたり、昔の雰囲気を残したりもしました。家具の選定はかなりこだわっていらっしゃいましたよね?

三橋 そうですね。「やっぱり丸椅子はあった方がいい」とか「社員食堂だから、一列に並んでシェアできるスペースは残した方がいいのでは?」という意見も出ましたね。

片山 逆に以前はなかった1人席を作っていただいたのは、非常によかったですね。今回、試みとして壁側面は全部コンセントを配置して、リモートワークができるようにwi-fiも引いていただいたので、もっと1人席の数が多くてもよかったかもしれないと思うほどでした。

―― 作業中に苦労した点はありましたか?

中村 床下に空間がないので、コンセントや配線をどうするのかという設備的なところで苦労しました。天井からしか電源を持ってくることができないので、最初は床からはつってモールのようなもので押さえていたのですが、「つまずくかもしれない」と増田さんにご指摘いただいて。結局、中央に独立したカウンターに電源を持ってくることにしました。

増田 作業全体のバランスは三橋が見てくれていたので、僕らは現場で人が動くときの動線を見ていましたね。細かいことでも気になったところは、施工の清水さんに「ここはどうなってるの?」とよく確認していましたが、そのたびに対処してくださるユニオンテックさんの対応力はすごいなと思っていましたよ。

中村 照明の明るさについてもご意見いただきましたね。

増田 最初はちょっと眩しすぎたかなと。明るすぎるとくつろげないなと思ってお伝えしましたね。

木暮 裸電球を使ったので、直視したときにより眩しく感じたのだと思います。

中村 その後、電球の高さを上げて、調光で絞れるように変えさせたいただきました。

増田 おかげで明るくも暗くもできるようになったので、よかったです。

―― 片山さんは、少しずつ変化していく現場を、どんなお気持ちで見ていましたか?

片山 解体工事からずっと見ていたので、床が入って天井の照明が入った段階ですごく感動して、施工の清水さんに「すごっく変わりましたね!」って、むちゃくちゃ喜んでお伝えしたことを覚えています。「これだけでこんなにきれいだから、什器が入ったらどんなにきれいなんだろう?」って、ほんとにワクワクしていました。

―― 実際に、新しくなった食堂を使われていかがですか?

増田 リニューアルして1年近くになるのですが、1人の使用率が高まっています。1人当たりの在場率も短くなって1日に100食は出ているようですね。見え方にしてもすごく評価が高いですし、意図したものを作っていただけたと思っています。

三橋 メニューもオペレーションも大きく変わって、ちょっと冒険でしたが、社員からの評判も上々でホッとしています。

増田 社内でランチミーティングということも、選択肢の1つとして考えられるようになっているのかなと思います。コーヒーマシーンがあるので、コーヒーだけということも問題ないですし、今後は会議室とは違う場面を食堂で描いていけると思っています。

 

調光のマジックで、古い和室をモダンな応接室に

―― 食堂に続いて、隣にあった和室の改装も行われたそうですね。

三橋 はい。「せっかく食堂をリニューアルしたんだから、使っていない和室も有効活用するべきでは?」と社長から提案がありました。食堂を変えていただいたご縁もあり、「それならばお客様をお迎えして、かしこまった話ができるようなスペースに改装してもらうおう」と、迷わずユニオンテックさんに依頼いたしました。

片山 和室も“トリップ”できる空間にしていただけたらと思いまして。

中村 ありがとうございます(笑)。

木暮 食堂改装時には、隣に和室があるなんてまったく気づきませんでした。

増田 実は、もう20年ほど使っていない茶道部の和室があったんです。

三橋 社員も入ったことがない、私も1度しか入った記憶がない和室です。

片山 私も和室の存在を、食堂改装のときに知りました。

―― 和室のリニューアルでは、どのようなご要望を出されましたか?

三橋 窓がないので「光が入っているような工夫をしてほしい」とお願いしました。「海外からのお客さんが来てもいいように、靴を脱がずに使える部屋に」、「和のイメージは残しておきたい」ということもお伝えしました。

木暮 初めて見させていただいたときに、たしかに暗さは感じました。だけど和室として、すごくしっかりと造られた部屋で驚きましたね。

中村 だから「もったいない」というのが最初の印象でした。

―― では、どのようなアイデアでご要望に応えていったのでしょうか?

中村 「演出照明で照度を取りましょう」と提案をさせていただいて、ダウンライトやスポットライトは一切使わずに、間接照明や光の演出で心地のいい空間を作ることを狙いました。もとの和室の使えるところは活かしつつ、海外の方にも喜んでいただけそうなモダニズム要素を入れることも提案いたしました。たとえば足元や天井のライトには、上流の川から流れてくる玉石のようなモチーフをポイントで入れてみたり。ナチュラルなモチーフの家具やプロダクト製品を置くことで、和の空間にモダニズムのエッセンスをプラスできたと思います。

間接照明や影絵を用いてリニューアルされた和室

―― 影絵のような縁側の光が、とても印象的です。

中村 「光を受けているような印象を持つ空間がほしい」と三橋様からご要望をいただいていたので、「縁側の演出が、一番生きるようにしないと意味がない」と思って、頑張りました。

木暮 これには裏話があるんですよね?

中村 実は、照明デザイナーと現場の方に任せていましたが、イメージしていたものと少し違っていたところがあり、裏に入って自分で手作業しました。タッカーを打ったりして。

木暮 引き渡しの前日に、裏に入って調整している光景を見ました(笑)

中村 はい。前乗りして作業しました。

木暮 照明の距離で、影の具合や見え方の印象が変わってしまうからね。

中村 作業は大変でしたが、後日、片山様からうれしいご報告をいただけたので、頑張ってよかったなと思っています。

片山 そうなんです。和室を見に来られた方々が、「ここはどうなってるの?」と、興味を持って障子を開けたがることをお伝えしましたね。

―― 壁の長押(なげし)からの間接照明も柔らかですね。

中村 あれは木暮からのアイデアです。もともとあった長押を使って「間接照明を作ってみたら?」と言われて。僕がデザインを考えて、清水が現場でそれを具現化させてくれたという、3人のパスワークでした。

片山 食堂のときも感動しましたが、和室でも照明が入った瞬間、調光のマジックを見させていただきました。柔らかい光でこんなに明るく感じられるんだって。いらっしゃったお客様も「このビルにこんな和室があったなんて!」と言ってくださるので、本当にありがたいです。

―― 和室玄関のスロープは、どういった発想からだったのでしょうか?

三橋 最初は土足にするか、しないかを決めるところから始まりました。海外の方が利用しやすいように、「土足で」と決めたのですが、次は靴を脱がせないようにする工夫が必要になりました。

増田 もともと小上がりがあったんですよね。

三橋 そこをどう解消するかという問題が出てきました。

片山 小上がりを見ると一旦靴を脱ぎたくなってしまう。その話をしたときに、三橋が「スロープにしたらいいんじゃないの?」とアイデアを出してくれたことから、私どもの方からスロープの設置を提案させていただきました。海外のお客様はスーツケースを持ってこられることがありますし、ユニバーサルデザインであることも含め、スロープがあると抵抗なく靴のまま部屋に入っていただけるのでは、という発想でした。

中村 スロープという取っかかりをいただけたので、「靴を脱がなくちゃ」という意識はこれで乖離できたと思いました。ですが、小上がりの木目はもともとあったフローリングをそのまま使っていたので、ここにどうスロープを合わせればこの部屋のコンセプトに合うのか、かなり難易度が高かったです。いろいろとご意見を交換させていただいたおかげで、結果的にスロープと木目をシームレスにつなぐことができました。

三橋 完成したスロープは、本当にイメージに近い形に出来上がっていたので、何の変更もなかったですよ。

和室の入口のパース画像と竣工写真

―― ところで、ヤギ様の社内報でユニオンテックの3名をご紹介いただいたそうですね。

片山 そうなんです! 従業員の皆さんに社員食堂に関心を持っていただきたい、コミュニケーションの場として機能することを広く伝えたい、という意味もありまして、昨年10月の食堂完成のタイミングに合わせて登場していただきました。

木暮 お声かけいただいて、作業状況を紹介していただけたのは、本当にうれしかったですね。

中村 こういう機会はあまりなかったので、すごく新鮮でした。

片山 従業員からも「どういう方たちが、どんな思いで作ったのかがわかった」というフィードバックをもらえましたので、お声かけしてほんとに良かったなと思っております。

三橋 あと内輪の話ですが、社内で年2回、アワードを実施していまして。会社に貢献した部署やチームを社員が選んで称え合うというものなのですが、今回、私たち食堂プロジェクトチームが選ばれました!

中村 おお〜!! 

木暮 おめでとうございます!

三橋 社員からの「よくリニューアルしてくれました!」という評価なので、表彰されたことは、うれしかったですね。

増田 食堂は0から100で変わり、和室は梁や玄関といった歴史を残しながら、モダンな部屋に生まれかわった。どちらも相当インパクトのあるリニューアルでしたね。

――“脱・昭和”へのリニューアルは、大成功だったでしょうか?

三橋 それ以外の答えはないですよ(笑)!

 

 

Photo=Chie Fukami Interview=Naomi Sato

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