オフィスのトイレ設計の重要性|快適な作りと注目デザイン事例
ノウハウ 2023.10.12

オフィス内において、多くの人が意識しづらい「トイレ・洗面所」の空間。日常的に身だしなみのチェックや、リフレッシュの場所としても利用される不可欠なエリアです。オフィスデザインの際、多くの注目を浴びないこのエリアですが、TOTO株式会社の実施したアンケート結果から、トイレの環境は、従業員の意欲や労働意欲に密接に関わっていることが明らかになりました。

「どのようにすれば、使い心地の良いトイレスペースが実現できるか」という観点から、その設計におけるポイントや特筆すべき事例などを詳しく解説します。

 

従業員の意欲に直結するトイレの快適性

ジャパン・リート・アドバイザーズ株式会社 様

トイレや洗面所の快適さは、働く人々の意欲に間違いなく寄与します。

TOTO株式会社の「オフィスのトイレ環境に関する調査」によれば、「労働空間以外で仕事の意欲に関わると感じる場所は?」という問いに、「トイレ・洗面所」と回答した従業員が全体の66%を占め、「食堂・リラックススペース」を大きく超える数値が示されました。これにより、オフィスにおけるトイレの快適さが、多くの社員にとって鍵となる要因であることが伺えます。仕事の間にトイレを訪れる行為が、自然と気をリセットさせる効果があるのではないかと考えられます。

トイレは、生理的ニーズを超えて、メンタルのリフレッシュスポットとしての役割も持っています。その上で、トイレはプライバシーを重視する場所でもあり、その快適性が必須です。清潔感、使い勝手、デザインの良さなどを兼ね備えたトイレスペースの確保は、非常に重要です。

 

トイレスペース設計の前にチェックすべき6つのポイント

オフィスのトイレスペースを整える前に、何を優先すべきでしょうか。以下、検討しておきたい6つのポイントを提示します。

 

1.トイレの配置数の確認

最初のステップとして、トイレ個室の配置数が挙げられます。オフィスでのトイレ設置に必要な最低数は、法的な規定に基づいて決められています。トイレのデザイン時には、上述の基準に沿うことが必須です。だが、これらの基準は法律により定義された最低ラインで、現実的にはもっと多くのトイレが求められる場面もあるでしょう。トイレの混雑は、作業の効率や業務の流れに影響を及ぼすことがあります。そのため、従業員の数や男女の比率、訪問客の数、多機能トイレの設置など、様々な要因を考慮して全体的に検討することが求められます。

 

2. 必要とされるトイレのサイズ感

心地よいトイレを実現するため、個室のサイズ感が重要です。標準的には、横幅は70~80㎝、便器の幅はおおよそ40㎝、両脇には15㎝程度のメンテナンススペースが必要です。便座のデザインによって奥行きの要件は変わります。便座の前端から壁やドアまでの距離は、最低でも40㎝確保すべきです。結果として、トイレの部屋のサイズは横70~80㎝、奥行きが便座の約80㎝プラス45~50㎝が必要となります。

 

3. トイレのバリエーションとその特性

近年の洋式トイレは、主に2つのカテゴリーに分かれます。タンクレスタイプとタンクタイプとなります。

 

① タンクレスタイプ

デザインが洗練され、多機能なモデルが主です。温水洗浄便座や防汚コーティング、自動洗浄、消臭機能など、ブランドや型番に応じて異なりますが、維持と清掃が容易な点が魅力です。このため、大勢が利用するオフィスの環境では、タンクレスタイプが特に推奨されます。

 

② タンクタイプ

背面にタンクが付随する便器で、温水洗浄便座の装着も適用可能です。タンクレスと比較して、多機能性は少なめですが、設置に必要なスペースが狭く、経済的です。

洋式トイレの選定に際して、特に考慮すべきは、水たまりの形状と防汚コーティングです。多くの水たまりを持つデザインは、臭いの防止や便器への汚れの付着を最小限にします。また、防汚コーティングが施されたトイレは、長期にわたり清潔かつ快適な利用が可能です。実際に体を使ってトイレを体験することが最も重要ですので、TOTOやLIXIL、Panasonicなどの展示室を訪れ、直接確認することを推奨します。

 

4. 電源のチェック

温水式トイレシートや便座の音消し機能の設置の時には、電源を確認することが要されます。もし電源がない場合、新たな電気配線を施す工事が求められます。その時、水の近くということで、漏れ電のリスクを減少させるために、確実にアース付きのプラグを取り付けることが必要です。

 

5. 洗面台・手洗いスペース

トイレだけでなく、洗面や手洗いの場所をどの程度確保するかは大切な要素です。特に女性は、メイクを直すことや、ルックスの確認などで、その気分やモチベーションに直結しています。その機能や、デザインの面では、多くの人が利用するオフィスのトイレということで、ストレスなく使用可能にすることを考慮すべきです。

 

6. 障がい者への取り組み

トイレは公共の場所としての側面があるため、必要に応じて、健常者だけでなく、障がいを持つ人々も無障害で利用できるような設計が求められます。

例として、車椅子利用者がトイレを使うケースを考えたとき、「2. 必要とするトイレの部屋の大きさ」で触れたサイズでは十分ではなく、トイレのドアはスライド式に、また、手すりの取り付けなどの工夫が要されます。

 

快適なトイレ空間をつくる6つのキーポイント

快適なトイレの環境を築くための6つの主要なポイントを持っています。その空間設計や使用感など、実践したい要点をこちらでシェアします。

 

1.トイレ空間の清潔感を追求する

トイレの快適性といえば、最も重要な要素は「清潔感」でしょう。特に、オフィスのトイレは、多くの人が利用するため、清潔性や機能性を向上させることが求められます。デザイン面でのアプローチとして、白を主体としたデザインや、木目のデザインを取り入れて、自然な雰囲気を持つ空間を作るなど、さまざまな方法で清潔感を演出できます。さらに、珪藻土を使用した消臭効果を持つクロスを活用することで、快適な香りの空間を提供することも清潔感の一因となります。

 

2. 清掃しやすい材料を選定する

トイレの清潔さを維持する上で、床の材質は非常に重要です。トイレの床は壁よりも汚れやすいので、撥水性や掃除の効率を考慮した長尺シートや大きめのタイルなどを採用し、常にクリーンな状態を維持することが肝心です。

 

3. 女性の視点でのデザインを検討する

女性は洗面や手洗い場で化粧を直したり、外見を整えることが多いため、清潔感だけでなく、利便性やデザインの良さが気分を上げる要素となります。そのため、女性の利用感を向上させるためには、デザインにも女性の視点を反映させることが大切です。

例えば、広めのカウンターや適切な鏡の位置など、使い勝手を良くする工夫が求められます。洗面や手洗い場のデザインは、カウンターや洗面ボウル、水栓、ミラーを個別に選ぶ方法や、一体型のデザインを選ぶなど、選択の幅が広いです。特にこだわりを持って洗面・手洗い場を設計したい場合、個別にデザインする方法を推奨します。カウンターには人工大理石やクォーツ、陶器、木材などの選択肢があり、洗面ボウルにも陶器や磁器、ガラスなどの多彩な材質とデザインが用意されています。水栓にもさまざまなデザインが存在し、それらを組み合わせて、ユニークな洗面・手洗い場を実現することができます。

トイレのデザインを検討する時、アクセサリーも大切な要素となります。ペーパーホルダーやタオルハンガー、ディスペンサーなど、様々なデザインや素材が選べます。トイレの全体的なデザインにマッチさせて選びましょう。

 

4. トイレでのプライバシーを大切に

女性用のトイレは大抵が個室として設計されていますが、男性トイレにはそうはいきません。男性トイレの入口から直接便器が見える設計だとどうでしょう。たとえトイレがピカピカでも、プライバシーが確保されていないと感じられます。さらに、トイレの中での音の消音も大事です。

皆で共有するトイレだからこそ、プライベートな瞬間を尊重するデザインが求められます。入口の位置の工夫や、トイレでの音をカモフラージュする装置の設置など、これらの問題を解決する方法があります。リニューアル時には、これらを念頭に置くことが大切です。

 

5. 心地よい照明でリフレッシュ

リフレッシュできるトイレ空間を作るため、照明の明るさも大切です。個室部分は、照度を控えめにして、落ち着いた雰囲気を作り出すことが可能です。天井からのダウンライトや、壁を照らす間接照明など、柔らかい光が心地良い環境を作ります。また、洗面・手洗い場では、メイク直しや、外見のチェックを行うため、照明はやや明るく設定すると好ましいです。ブランケットライトやスポットライトを使用して、明るさを調整することで、使い心地が向上します。

 

6. 便座の使い心地を重視する

トイレの快適さを追求するため、便座の利用感に着目することが重要です。

TOTO株式会社が行った「オフィス水まわりに関する調査」での「体調不良時に求めるトイレの設備」についての質問で、男女共に39%の人が「温水洗浄便座」を希望しており、多くの人が利用するオフィスのトイレでのその必要性が示されました。トイレをより快適なものにするためには、便座の快適性の向上が欠かせません。温水洗浄便座には、後付け可能なタイプや、便器一体型などのバリエーションがあります。

 

快適でスタイリッシュなオフィストイレデザインの実例

1.タンクレスで広々としたトイレ空間【株式会社WIND-SMILE様】

事例:株式会社WIND-SMILE 様

素材にこだわっておしゃれな雰囲気のトイレスペースです。ヘキサゴンタイルが敷き詰められ、絶妙な配色とマテリアルがバランスよくレイアウトされ、リラックスできる空間になっています。

 

2. シンプルかつスタイリッシュなトイレ【株式会社アクシス Next.様】

事例:株式会社アクシス Next. 様

シンプルでコンパクトなスペースの中央にステンレスの洗面台とシェードがレイアウトされた、誰もが使いやすく居心地の良いトイレスペースです。絶妙な色合いの壁面とステンレスの無機質なイメージが非常にスタイリッシュです。

 

3. ラグジュアリーな雰囲気のトイレ空間【ソウルドアウト株式会社様】

事例:ソウルドアウト株式会社 様

木目調にベージュを基調とした落ち着いたトーン、柔らかな間接照明、そして丸い鏡と全身鏡が洗練された空間を創り上げています。少し暗めの間接照明により、心を和ませ、リラックスさせる効果が生まれ、日々の仕事のプレッシャーから解放されるような場所として設計されています。

 

まとめ

オフィス内のトイレは、家のトイレとは使われ方がやや違い、単に生理的ニーズを満たすだけでなく、集中のリセットや気分転換の場としての役割も持っています。そのため、トイレの利便性や快適性は、従業員の気持ちや働く意欲にも関わってきます。快適なトイレを設計する際には、清潔さや機能性、デザインはもちろん、女性の視点を含めた多方面からのアプローチが不可欠です。心地よいトイレ環境を整えることで、モチベーションの向上や、全体の生産性アップにも寄与します。

オフィスのトイレ空間は、インテリアデザインの中で最も創造的に取り組む領域の一つです。ユニークなデザインや大胆なアイディアを採用することで、日常の気分転換をサポートする場として機能します。オフィス用トイレの要点を考慮して、心地良いトイレ空間の創出にチャレンジしてみてください。

 

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