(インタビューご登場)
株式会社KANA-L HOLDINGS 経営戦略部 中村次郎 様
同 管理部人事総務 情報システム担当 三國将史 様
(写真左から順に)
ユニオンテック株式会社 経営管理室 販売推進G 河合優吉
同 ワークスペースプロデュース事業部 プランニング&デザイン部 アライアンスプロデュースG 樫尾瑞季
※KANA-L HOLDINGS様のご希望により写真は弊社社員とオフィスのみ掲載しておりますが、インタビューはお客様にもご登場いただいています。
本来なら、「執務エリアに40席ほしい」「新オフィスではフリーアドレスにしたい」といったこちらの要望をふまえて、「こういうレイアウトはどうですか? こっちはどうでしょう?」といろんな案が出てくるものだと思っていましたが、全然違いました。深いところにある僕らの考えを聞き出して、形にしようとされていて。しかも、自信に満ちあふれた印象も受けたため、帰られてすぐ全員一致で「ユニオンテックさんにしようか」と話した記憶があります。
株式会社KANA-L HOLDINGS 管理部人事総務 情報システム担当 三國将史 様
“こんな会社にしたい”と思うイメージ、社員の働き方改善など、お客様が思い描くご要望に対し、内装デザインを通してユニオンテックがどのようにお応えしたか? プロジェクトの裏側にある“ストーリー”を覗くことができる「オフィスメイキングnote.」の第7弾。
今回は、タレントやクリエイターのマネジメントのほか、イベントプロデュース、デジタルサービスなどを行う総合エンターテインメント・カンパニー、KANA-L HOLDINGS様です。移転計画が動き出してからホールディングス化が決まったため、新オフィスの方向性を定めづらかったそうですが…ユニオンテックはどのようにご提案したのでしょうか?
―― 移転することになったきっかけから教えてください。(以下、敬称略)
三國 会社が成長するにつれ、手狭になっていったのが大きなきっかけです。当時は、渋谷駅新南口からすぐのところにあるビルに入っていたのですが、たしか40坪くらいで。いまのオフィスの3分の1くらいの広さしかなかったんです。人が増えるたび、都度会議室を潰したりソファスペースを潰したりして執務スペースに変えていたものの「いよいよ限界だな」と感じていました。
中村 廊下に椅子と机を置いて働いている従業員もいたよね? 正直なところ、環境はあまりよくありませんでした。それを理由に「辞めたい」と思った人もいたんじゃないでしょうか。
三國 1〜2年後にはさらに20〜30人くらい従業員を増やしたいと考えていたので、このオフィスのままではいけないなと思い、「広いオフィスを探そう」と動き始めました。それが、ユニオンテックさんとご一緒するよりもだいぶ前の話ですね。管理部が候補となる物件のリストを作って、長期間かけていろんな物件を見て回りました。
中村 結果的に、20〜30件くらいは見たと思います。
―― たくさん見学されていたんですね。どんな条件で物件を探していたのでしょうか?
三國 当時のオフィスで使っていた家具を新しいオフィスに持っていくつもりはなかったため、最初に見ていたのは居抜き物件でした。立地に関しては、最初は渋谷駅周辺を見ていて、そこから目黒にも広げていきました。「十分な広さがあるから」と5年後には取り壊す予定のビルも候補に入っていて、単純に、広いところに移るための物件探しにもなっていましたね。おしゃれな空間にしたいねという話にもなり、「この物件なら、こういう使い方ができそう」と、物件を見て周りながらよく話していました。基本的には、代表の才津のイメージですけどね。
チルアウトスペース中央にはカウンターを設置
―― そんななかで、見つけたのがこの赤坂メープルヒルだったと。居抜き物件を探す予定ではあったものの、最終的には新築を選んだのですね。
三國 そうですね。当時物件探しをしていた担当者がたまたま見つけてくれたのですが、広さは3倍以上になるし、トイレの数も増えるのでいろんな面で前のオフィスよりも勝っていました。渋谷も立地的には申し分なかったのですが、赤坂にはテレビ局をはじめ取引先が多いですから、大差ないなと感じられたのも決め手になりましたね。
―― 物件が決まってからは、ユニオンテックも含めたコンペに入りますが、事前にヒアリングを行ったそうですね。
三國 ユニオンテックさんのヒアリングは、すごく印象に残っています。1時間くらいしかないのに、その8割くらいは新しいオフィスに対する熱意や思いを聞かれる時間だったんです。もちろん、僕らはそれ対してお答えするんですが、「図面はいつ見られるんだろう?」とずっと思っていました(笑)。結局、図面がでてきたのは最後。それが、ほかの会社さんとは違いすぎて、異様でしたね。「異様だな」という印象を植え付けて去っていかれました。
樫尾 初回のヒアリングですよね。
三國 そうです。本来なら、「執務エリアに40席ほしい」「新オフィスではフリーアドレスにしたい」といったこちらの要望をふまえて、「こういうレイアウトはどうですか? こっちはどうでしょう?」といろんな案が出てくるものだと思っていましたが、全然違いました。深いところにある僕らの考えを聞き出して、形にしようとされていて。しかも、自信に満ちあふれた印象も受けたため、帰られてすぐ全員一致で「ユニオンテックさんにしようか」と話した記憶があります。
河合 ヒアリングの時点でそう思ってくださったんですね。僕、あのときしゃべりすぎてしまったんですけれど…(笑)。
中村 ユニオンテックさんも含めて2社にお声がけしたのですが、もう1社の方は僕たちが「会議室はこっちにしてほしいです」と伝えると「分かりました。こっちにしましょう」という感じだったんです。
三國 そう、言うとおりのものを出していただきましたよね。
中村 僕らとしては言うとおりであってほしくなかったんです。僕らは内装に関しては素人ですから、プロのデザイナーさんの意見を参考にしながらいいオフィスを作りたかったので、こちらの意見が全部通ってしまうと不安になるんですよ。
―― その点、ユニオンテックとはちゃんとディスカッションができたのですね。
樫尾 こちらとしては、ヒアリングではコンセプトの壁打ちをしたいと思っていたんです。コンセプトが固まってからでないと、レイアウトを変えるにも変えられないので。
中村 それがよかったんですよ。
樫尾 打ち合わせをしてみて、5年後、10年後を見据えたレイアウトにする必要があると分かったので、将来の事業に関するお話はかなり大切だったと思っています。
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プレゼン時に考え方やクリエイティブ方針をご提案
―― ちなみに、内装に関して色合いやテイストなどの要望はあったのでしょうか?
中村 こちらから具体的な要望は伝えていなかったですね。あえて最低限のことしか伝えず、「プレゼンではどういう提案が見られるんだろう?」というところを楽しみにしていました。
―― プレゼンでは、ユニオンテックからレイアウトのパターンをたくさん提案していたそうですね。
樫尾 はい。ヒアリングの段階でコンセプトのすり合わせはできたのですが、希望するレイアウトがまだ見えていなかったので、プレゼンではあるけれど打ち合わせをさせていただくくらいの気持ちでたくさん用意していきました。
河合 プレゼンの前に、才津社長が“入ってすぐに会議室があるパターン”のレイアウトを書いてくださったので、それも参考にしつつ“会議室が両サイドに分かれているパターン”や“スタジオを広めにするパターン”など4つほどご提案しました。加えて、それぞれに主なメリットとデメリットを書き出して、選びやすい形に工夫しましたね。
実は、KANA-L HOLDINGS様は移転計画が動き出してからホールディングス化が決まったんです。それによりエンターテインメント業界でできることも増えたと思うので、「どのレイアウトを選ぶかで、会社の方向性が変わると思います」といった提案の仕方をしました。ただプレゼンを経て、最終的に全部乗せのようなレイアウトになりましたよね(笑)。
中村 そうですね。ちょうど分社が進んでいた時期で、タレントを主体とした会社からそうではない会社に変わっていたので、芸能事務所に寄せすぎるのはNGだったんです。かといって、話す時期によっては「タレントを主体にしたくて」という意識が強いときもあって。
―― 方向性を定めたくても、定められないタイミングだったのですね。
河合 なので、すごく難しかったです。
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―― 色味について、プレゼン資料と完成したオフィスではがガラッと変わりましたよね。
樫尾 はい。最初は若い方々が多くいらっしゃることを考えて、明るい木目でご提案させていただきました。いただいていたイメージのお写真も白木が中心だったので。
三國 社長の意向で、「やっぱり黒っぽいのがいいな」という話になったんです。
河合 そうでしたね。一応明るい色と暗い色の両パターンを改めて提案して、最終的にダークブラウンに決まりました。
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プレゼン時とその後やり取りを重ねたあとのパース画像。より会社のイメージにフィットする印象へと変化。
―― 確定したレイアウトは、タレントさんたちが交流しやすいチルアウトスペースと執務スペースがバランスよく配置されていますね。
樫尾 将来的に壁で区切る予定なので、どちらかのスペースが極端に狭いと使いづらくなってしまうんです。今は、半々くらいになっていますね。
河合 そう、IPOを行うとなると、セキュリティを高めなければいけないんです。執務スペースのパソコンがチルアウトスペースから見えてはいけないし、声も聞こえないように遮断しなければいけないので、間にすりガラスの壁を立てられるようにして線を敷いてあるんです。その線に沿って壁を立てれば、コストが安く済むようになっています。
中村 ただ…今期末くらいで従業員数が67、68人くらいになる予定なので、もう限界にきてしまったんですよね。
河合 そうなんですね。今はひとつの机を5人で使っていただいていると思うんですが、6人でも使えるくらいの広さは確保しているつもりなので、詰めて使用していただくことも検討していただければ、もう少しお席の確保は可能だと思います。もともと、執務スペースのデスクの横幅は一人あたり1000mmでいいと聞いていましたが、最初は1200mmくらいあったほうがいいですよとお伝えしていて、そのようにしていただいたんです。前のオフィスでも1000mmはあったようなので、「新しいオフィスになったら、デスクが広くなった!」と思えたら従業員の皆さんの士気にもつながると考えていました。「1200mmもいらないですよ」とおっしゃっていたけれど、「そこをなんとか!」と1200mmで納得していただきました。
―― そうして、変化を見越してデザインするんですね。
河合 会議室のテーブルも、椅子が増えても脚がじゃまにならないものを選んでいます。
中村 今、まさに椅子が増えているところなんですよ(笑)。最初は4つで使っていたところに、5、6個入れています。
―― 変化を見越したデザインは、他にもあるのでしょうか?
河合 才津社長の趣味でアート作品がたくさん飾られているのですが、将来的に増えていくだろうなと思い、壁に使う材質を強度が高い木材に変えました。本来壁に使う材質は、穴が開くことを想定していないので開ければ開けるほどボロボロになっていってしまうんですが、木材だとある程度伸縮するので、穴にも強い。耐久性は格段に上がっています。才津社長に「これからも増えますよね?」と伺ったとき、「これ以上は増えないですよ」と聞いていたんですが、移転してすぐに増えていたので(笑)、変えてよかったです。
「本物のアートに触れてほしい」という社長の思いから、オフィスにはたくさんの作品が展示
―― 実際のオフィスの使用感はいかがですか?
中村 チルアウトスペースは、あまり使えていません。みんなソファをよく利用、しているので、今は広い待合室のような使い方になっています。タレントも会議室やスタジオに入ってしまうので、チルアウトスペースで何かをすることはまずないんです。ご飯を食べてもいいはずなんですけど、ちょっと恥ずかしいんですよね(笑)。
三國 そうなんですよね。
中村 うちの社風には(オープンな空間でくつろげるスペースは)合わなかったのかもしれないですね(笑)。コーヒーカウンターも、壁につけて設置したほうが、ある程度プライベートが確保されて使いやすかったかもしれません。
三國 でも、昨年の忘年会や今年の新年会はここで実施しました。
中村 オフィスのお披露目も兼ねて、取引先もお呼びしましたね。
三國 そのときは、チルアウトスペースが埋まってしまうくらいの方にお越しいただけたので良かったです。
河合 ヒアリングの段階では、「社内イベントは年に2回くらいしかないので、そんなに重視しなくてもいいですよ」と聞いていましたが、もうそんなに使われているんですね。
三國 そろそろ1年ですが、もう5回はやっていますよ(笑)。
社員の皆様がよく利用されるというソファスペース
―― 使いはじめて、気付いたところがたくさんあるのですね。
中村 そうですね。うちの社風に合わせるなら、ソファをもっと増やしても良かったのかもしれないなと思いました。
三國 あとは倉庫関係も。イベント事業ではグッズをたくさん管理することになるので、保管しておける場所が必要で。エントランスを抜けた左側のロッカー裏にスペースを作ってもらったんですが、移転した瞬間にほぼ満タンになってしまったんです。
河合 「今あるものは、できるだけ捨てる予定です」と伺っていましたが、それ以上に物が増えることも想定するべきでしたね。
三國 でも、従業員もタレントも、始めて来たときには「おおっ!」と驚くくらい良いオフィスになりました。
中村 実は、移転が決まったとき95パーセントの従業員が嫌がっていたんですよ。
河合 そうなんですね。(以前オフィスがあった)渋谷から遠いですし。
中村 みんな渋谷に出やすい沿線に住んでいるので、急に赤坂になると不便に感じるんですよ。だけど、移転してすぐに文句が出なくなったことは、良かったなと思っています。
―― 採用面での変化はありましたか?
中村 そこはまだ分からないです。ただ、渋谷のときのようにオフィスが理由で離職を考えるといったことはまずないですね。
―― 課題も見えたようですが、完成したオフィスはKANA-L HOLDINGS様の期待を超えることができましたか?
三國 超えていますよ。オフィスに入ればおしゃれな空間が広がっていて、グリーンが添えられたランプがあったりして。いろんな意味で良かったと感じていますし、トータルで見ても期待を超えているなと思います。
中村 以前のオフィスと比べると、全然よくなったからね。これからどんどん人が増えていくことを考えると、席を詰めるだけでは対応できなくなると思いますし、欲を言えばもっと広いオフィスが良いですね。芸能事業としては、メリットが多いと思います。
Photo=Yasuharu Hikawa Interview=Mayuge Matsumoto