【オフィスメイキングnote.】株式会社日広社様

(左から順に)
ユニオンテック株式会社 ワークスペースプロデュース事業部 プランニング&デザイン部 アライアンスプロデュースG 笹森龍之介
同 ワークスペースプロデュース事業部 プランニング&デザイン部 デザインG 中村麟太郎
株式会社日広社 営業企画部 吉田瑠美 様
同 取締役 GM 阿曽友騎 様

単純に「このデザインです」と示すだけではなく、これまでお話しした会社のストーリーを盛り込んでくれていました。割と早い段階でユニオンテックさんにお願いしようかなと思っていて、プレゼンを見て確信しましたね。私は毎朝一番に出社するんですが、この1ヶ月はエントランスのドアを開けるたび「あぁ…このオフィスになったんだ」と毎日のように噛み締めています。

株式会社日広社 取締役 GM 阿曽友騎 様

“こんな会社にしたい”と思うイメージ、社員の働き方改善など、お客様が思い描くご要望に対し、内装デザインを通してユニオンテックがどのようにお応えしたか? プロジェクトの裏側にある“ストーリー”を覗くことができる「オフィスメイキングnote.」の第6弾。

今回は、1967年に創業した株式会社日広社様。57年という長い歴史のうち約20年も東京・銀座にオフィスを構えている総合広告代理店です。これまでのオフィスは社員の方々いわく「昭和そのもの」。あらゆる働き方が受け入れられている現代にフィットするオフィスを求めていたといいますが、どんな“改革”が行われたのでしょうか? 座談会で振り返っていただきました。

 

移転ではなく改装にこだわった理由

―― まずは、改装しようと思ったきっかけから伺いたいです。(以下、敬称略)

阿曽 最初に改装を考えたのは、人材採用をしているときです。吉田さんも入社して間もないので気持ちが分かるかもしれないのですが、面接で事務所に来た方たちは内装の古さに驚いていたようなんですよ。もはや話題になってしまうくらいで(笑)、「このままではよくないな」と思っていたんです。また、このオフィスに移転して20年経ちますし、これを節目として社員のためにも環境を良くしたいという気持ちがありました。

―― そんなに古めかしかったのですか? 

阿曽 ええ。もう、昭和感満載でした(笑)。

吉田 昔のドラマなどでよく見る感じの、昭和にタイムスリップしたようなオフィスでしたよね。

阿曽 以前は広告代理店らしく営業の色が強い会社でしたが、しばらくしてデザイナーが働くようになって。年月が経つにつれ、だんだんとクリエイティブな会社になっていったんです。なのにオフィスは前時代的で、あちこちで資料が山積みになっているような状況だったので、なんとかしなければいけないなと思っていました。そこで、社長と相談してリニューアルに踏み切ったんです。

―― しかも、移転ではなく改装なのですよね。工事中は別の場所に仮オフィスを構えなければならず少々面倒だと思いますが、それでも改装を選んだ理由は?

阿曽 銀座に会社があるのは、日広社のアイデンティティの一部になりつつあるんです。お客様のなかには「会社、銀座にあるんですね」とおぼえて覚えてくださる方もいますし、社長も銀座にはこだわりたいと話しているくらい。ただ、銀座で物件を探してみたところ、なかなか予算に合う場所がなく…「この場所でリニューアルしたほうがいいのではないか」という結論に至りました。
このビルにも愛着があるんです。10年以上前、5階にオフィスがあったんですが、東日本大震災を機に当時の会長が「災害が来たとき、5階よりも逃げやすいから」と3階に移ったので。もう、ここから出られなくなっています(笑)。

昭和のオフィスからの大改装!“可変式”との出会い

―― 改装に際しユニオンテックに声をかけていただきましたが、WEBで見つけていただいたと聞きました。依頼した決め手を教えてください。

阿曽 正直なところ、直感なんです。私がサイトを見て「良さそうだな」と思ったところを3社ほど選んで、お声がけをさせていただきました。

吉田 私はユニオンテックさんがコンペに参加すると決まってから(オフィス改装プロジェクトに)参加したので、それ以降のことしか分からないんです。ただ、現場調査に来られた際は顔を合わせていましたし、資料なども都度共有してもらっていて、すごくキレイな資料だなと思っていました。CGパースは想像しやすく、見ているだけでワクワクする資料になっていたので、コンペの段階でも「頼んで良かったな」と思っていましたね。

阿曽 それに、うちの会社の考え方や現状の課題などをお話させていただいたうえで、いろんな形式のオフィスを見せてもらったんです。中にはフリーアドレスもあったのですが、うちの会社に合うとは思えなくて。どんなオフィスにしたいのか、具体的なビジョンがなかなか浮かばなかったんですよ。
そんなとき、プレゼンでユニオンテックさんが提案してくださったのが“可変式スタイル”でした。デスクが自由に動かせるスタイルで、将来チームで動くことが増えたり、チームの人数が増えたりしても対応できるということで、我々が望んでいた形をひとつ提案してもらえたと思いました。数日後にほかの会社のプレゼンも控えていたのですが、ユニオンテックさんのプレゼンを終えた日の帰りには、社長と「たぶん、ユニオンテックさんで決まりますね」と話していたのを覚えています。

中村 そのプレゼンで僕らが提案したのは、“可変式スタイル”に加えて、セクションごとにデスクを固定した“チームスタイル”、固定デスクとフリーアドレスを両立させた“ハイブリッドスタイル”、そしてABW(※アクティビティ・ベースド・ワーキングの略。働く時間や場所を社員が自由に選択できる働き方)に対応した“ABWスタイル”の4つだったのですが、そのなかで可変式を選ばれたということは、それだけ時代や状況に合わせてフレキシブルに変えていきたいのだろうなと感じました。



阿曽 そうですね。“個”で働く時代が長かった会社なのですが、今まで以上に成果を出すためにはチームで動くことも必要になるでしょうし、チーム編成も適宜変えていきたい。それを叶えられるのは、やはり可変式スタイルでした。

―― 加えて、ユニオンテックからは“コンテンツ”も提案したとか。

笹森 そうなんです。オフィスで流すBGMや在席管理システム、クラウドPBX(※電話サービスの一種。外出先でも会社宛の電話に対応できる)といったサービスを提案させていただきました。

阿曽 うちの会社は電話営業をするので電話をかけることが多く、担当者からは「改装後も固定電話はほしい」という意見があったんです。でも、可変式スタイルをベースにしようとしているのに、「この席だと、電話線が届かなくて…」という事態になっては意味がないので、クラウドPBXを提案してもらえてとても参考になりました。

 

オフィス改装をきっかけに働き方を改革

―― 先ほど、「社長と『たぶん、ユニオンテックさんで決まりますね』と話した」という嬉しいお言葉をいただきましたが、改めてコンペで選んでいただけた決め手を教えてください。

阿曽 うちの会社を理解してもらえていましたし、「100年続く会社にしたい」という我々の目標の第一歩になるような提案だったからです。なおかつ、プレゼン資料も単純に「このデザインです」と示すだけではなく、ここまでのストーリーを盛り込んでくれていました。社長も「本当によく考えてくれているよな」と言っていたくらいです。なので、割と早い段階でユニオンテックさんかなと思っていて。プレゼンを見て確信したという感じですね。

中村 ありがとうございます! オフィス作りをするうえで、お客様との密なコミュニケーションは欠かせませんが、ただ悩みや要望を聞き出すだけでは意味がないと思っています。例えば、お客様が「そこまでは分からない」と感じている部分も、突き詰めていくと具体的な要望が見えてきたりするんです。だからこそ、今回も打ち合わせの機会を何回か設けて、たくさんヒアリングさせていただきました。それがこうして形になったのはうれしいですね。
実は、阿曽さんから「可変式スタイルがいい」というお声をいただいてから、さらにパワーアップさせていて。デスクだけでなく、ラックなども移動できるように改良したんです。長くお話しをするなかで、この立地をすごく気に入られているんだなと感じていたので、「この場でずっと進化し続けられるオフィスを作ろう」という気持ちが僕自身の中でも大きくなっていったからでしょうね。

可変式スタイルを取り入れた執務エリア

阿曽 そうそう。こちらとしては「デスクが動かせればいい」くらいに思っていたのですが、将来を見据えてデスクのみならず全部動かせるようにしてくださったのもありがたかったです。

中村 また意匠に関して言うと、エントランスにはこだわりました。日広社様は、ロゴがスタイリッシュで格好いいのですが、働かれている皆さんとお話するととても優しくてナチュラルな方々ばかりなんです。なので、“スタイリッシュ”と“ナチュラル”を両立できたらいいなと思い、エントランスは白い壁にロゴをあしらったスッキリとしたデザインにして、エントランスを抜けるとニュートラルカラーを基調にした空間で自然の温かみを出しました。この対比が、個人的には大きなポイント。入った瞬間、「おっ、印象が変わった」と思ってもらえるようなデザインにしたつもりです。

吉田 CGパースを見たときからおしゃれだなと思っていました。奇抜さがなく色合いが落ち着いているから、日広社で長く働いている社員にもフィットするデザインですよね。

ご提案時のパースと竣工写真

―― コンペを終えてからもスムーズに進んでいる印象ですが、要望を出したことはあるのでしょうか?

阿曽 実は、そんなにないんですよね。

中村 そうですね。

阿曽 私たちがこだわったことといえば、「コストを下げたい」だけです。社長が提示にしている予算内におさめたくて。

―― たしかに、そこも重要ですよね。具体的にはどんなふうにコストカットしたのでしょうか?

阿曽 CGパースでいただいた印象そのままに、どうにかコストカットできないかという相談をしました。きっと、大変だったと思います。

笹森 僕たちが提案した内容のまま進めると、いただいた予算をかなりオーバーしてしまいますもんね…。なので、造作什器自体をもっと安く作れないか方法を探ってみたり、材料をもう少し安いものに変えてみたりして、試行錯誤しながら少しずつ削っていきました。

―― ところで、お仕事柄紙媒体を扱うことが多いかと思いますが、あまり見当たりませんよね。棚も少ないですし。

阿曽 棚があればあるだけ物を置いてしまうと思ったので、社員から反発を食らう覚悟で収納を大幅に減らして、その分、紙で保管していた資料のデジタル化を進めました。今後、オフィスをフリーアドレスで使うようになるかもしれないし、週の半分がテレワークになるかもしれない。そうなっても働きやすい環境を作るためには、ペーパーレスにするべきだなと。

中村 こちらからはっきりとお伝えしたわけではないんですが、可変式スタイルなどのレイアウトを提案した段階で収納スペースを減らしていたんです。収納が多いとどうしても散らかってしまうのでそれを避けるために減らしたのですが、お客様によっては、この段階で「収納が少ないので、増やしたい」とおっしゃる場合もあるんです。だけど、日広社様は僕らの提案を受け入れてくれて、ペーパーレス化という形で対応してくださった。勇気がいる改革だったと思うのですが…それだけ会社の未来を考えているのだろうなと感じました。

阿曽 慣れるまでは大変でしょうけどね。みんなで慣れていこうと思います。それに、受付の裏にバックヤードを作ってくれたじゃないですか。そこは執務スペースにいるときには見えないので“多少散らかってもいい場所”なのですが、こういう場所を作ってもらえたのは、正直助かりました。突然、どこもかしこもキレイに使ってと言われたら、パンクしてしまいますから(笑)。初めてバックヤードを見たうちの社員は、「前のオフィスの空気を感じる」と言っていました。ほかのスペースと比べると別世界なので、余計にギャップを感じるみたいですね。

笹森 狙いどおりです(笑)。

 

「いいオフィスだな」と噛みしめる日々

―― PD(プロデューサー)として携わった笹森さんは、今回のオフィス作りを終えてどう感じていますか?

笹森 総じてすごくやりやすかったです。中村くんも言っていましたが、日広社様はすごく協力的でしたし、決断もとても早くて前向きで、こちらとしても本当にありがたかったなと。

中村 受付のところの壁に標語を書いているんですが、施工前にどのくらいの文字サイズするのか細かく話し合っていたんです。そんなとき、想定していたよりも小さいサイズにしてみたらどうなるかという話になって。「やばい、そのパターンは用意がない!」と焦ったんですが、阿曽さんがパパッと縮小して出力してくださって。なんて頼もしいんだと思いました。

笹森 本当に、終始温かく、穏やかに進んだプロジェクトでした。

―― そうして、オフィスが完成してからひと月ほど経ちました(※取材時)。使い心地はいかがですか?

吉田 とっても良いです。

阿曽 私は毎朝一番に出社するんですが、この1ヶ月はエントランスのドアを開けるたび「あぁ…このオフィスになったんだ」と毎日のように噛み締めています。誰もいないのを良いことに、「いやぁ、いいオフィスだなぁ…」と(笑)。

吉田 仕事の質も上がった気がします。集中できるスペースや整理整頓されているスペースは今までまったくなかったですから。あと、前のオフィスに比べて社員同士で顔を合わせて話す時間が増えた気がしていて、それもいいなと思いますね。

阿曽 デスクのおかげかもしれないですね。前は長方形のデスクを向かい合わせにして置いていたので、ディスプレイが邪魔して向こう側にいる人の顔が見えなかったんですよ。だけど今は台形のデスクを組み合わせているから、その形状のおかげで同じ島にいる人の顔を見やすいのだと思います。
うちの社員にとって、今のオフィスがどのくらい働きやすくてどのくらい効率が上がっているのか…成果が出るのはこれからなので、まだなんともいえません。ただ、日々標語を目にすることで社員のモチベーションに変化が出てきて、日広社のブランドがよりはっきりと形成されていくんじゃないかと思うと、このオフィスが及ぼす影響はすごく大きいと思います。3年後、5年後、10年後が楽しみですね。

―― また、オフィスが完成するまで社員の皆さんには見せなかったと聞きました。

阿曽 そうなんです。最初に「こういうオフィスになります」とCGパースを見せて、要望も吸い上げていたのですが、それ以降は途中経過を一切見せないようにしていました。

吉田 で、出社日の9時になるまでエントランスも見られない踊り場にいてもらって。全員で一斉に見てもらいました。すごく良い反応をしていましたよね?

阿曽 以前のオフィスとはギャップがすごいので、余計驚いていました。その動画を撮り忘れてしまったことだけが心残りです…。

吉田 引き渡しのときにユニオンテックさんからいただいたチロルチョコも、みんなに配りましたよ。

笹森 よかったです! 実はあのチロルチョコ、社長の顔を入れようかという案も出ていたんですよ。

阿曽 それも喜んだと思いますよ、みんな。

笹森 やればよかった…!

吉田 あと、仕事でお世話になっている方々に見せて回っています(笑)。とあるお客様は、前のオフィスにいらしたとき複雑な表情をされていて。その後「趣のある会社ですね」と、メールを送ってくださったんですが、今のオフィスを見て「すごい! まさかこんなに変わるとは」「同じ場所とは思えないです」と驚かれていました。

―― 完成したオフィスは、日広社様のご期待を超えることができたでしょうか?

阿曽 はい、期待以上だと思っています。ただ、何度も言ってしまいますが本当に「期待以上だ」と感じるのは3年後、10年後の未来だと思うんです。働き方やチームが大きく変わったときに「やっぱり、このスタイルで良かった」と思うことはたくさん出てくるはず。今は、それがすごく楽しみです。ぜひ、そのときにもう一回取材してもらいたいですね。

 

 

Photo=Yasuharu Hikawa Interview=Mayuge Matsumoto

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