オフィスデザインの役割は、抽象的なコンセプトを具体的な空間に落とし込むことです。その意味では、法律事務所ほどオフィスとしてのデザインが重要な場所はありません。
なぜなら、法という抽象的なものを、クライアントという具体的な存在に繋ぐ空間が法律事務所だからです。
法律事務所のオフィスデザインの理想はどのようなものでしょうか。
法律は現代社会で全ての人が守るべき基本的なルールです。法律家は専門家として、法に基づいて利益が反する人々の権利主張や仲裁行為を行います。ある場合は罪を問う人を代弁し、別の場合は罪を問われる人の代弁者となります。そして、被告となった人は極刑が宣告されれば、その罪は死を持って贖うことが要求されます。法律事務所はそのような厳正な行為を求める人々が最初に訪れる空間となります。
さらに、法律は常に時代に合わせて改正され新しくなっていきます。オフィスはさまざまな最新情報の集積空間でもあります。そう考えると、法律事務所のオフィスには、神社仏閣が持つような神聖さと静謐さ、また新規なものへの眼差しが感じられることが理想でしょう。とはいえ、法律事務所も営利企業なので、実際には予算の問題もあります。
目指す方向としては、シックで落ち着いた雰囲気を持ち、かつモダンな新しさも感じられるデザインということになります。
オフィスには執務空間と接客空間がありますが、まず法律を扱う専門家たちの執務空間のデザインを考えてみましょう。
法律は伝統的に文字によって伝達されます。法的判断では過去の判例が重視されますから、法律そのものについてもすぐに参照可能なように多くの資料を手元に準備しておく必要があります。また、法の条文は記述された内容の正確を期すため、詳細かつ難解な文章で綴られていることも多く、専門家であっても解釈には多くの補足資料が必要となります。つまり、法律そのものが記載された法典類や、その解釈に用いる資料など、紙メディアの資料の保管スペースが重要になります。そして、保管できるだけではなく、それを有効に活用できるような工夫が求められます。
一般的なオフィスでは資料の電子化により業務の「ペーパーレス化」が進み、書類の保管スペースは減少傾向にあります。しかしながら、法律事務所ではまだまだ「ペーパー」メディアの存在感が大きく、まずその処理からデザインが始まります。
オフィスデザインの主な対象は、社員など所属する組織のスタッフとクライアントとしての訪問者になります。
法律事務所の場合は特にクライアントの心情を重視する必要があります。法律の相談に行くときの心境はどのようなものでしょうか。事情は千差万別ですが、程度の差はあれ切迫した心理状態であることは間違いないでしょう。そのような状態であっても、法律家は冷静に事実関係を聞き出す必要があります。ですから、心理的興奮を抑えるような設えのインテリアがデザインの基本となります。
さらに、法律相談では深刻な話題が多いため、その重苦しい雰囲気を和らげるような工夫も必要です。苦悩の中にも一条の希望の光を感じさせるデザインが求められます。具体的なデザインのキーワードは「重厚感」と「明るさ」です。これらは一般には対立する概念ですが、インテリアの材料に落ち着いた色目と質感の木質系のものを用いつつ、窓などの開口部からの光のデザインに工夫をこらすことで、両立が可能です。
法律事務所で行われる話は、高度なプライバシーに関わる話題がほとんどです。
法律家にも法律事務所にも守秘義務があるのは当然なのですが、それをオフィス空間に感覚的に表現することはクライアントの信頼を勝ち取るためには重要です。担当する法律家とクライアントが法律相談を行うための応接スペースには、特に慎重な配慮が求められます。
一般的なオフィスでの応接スペースは、リムーバブルなパーテーションで簡易的に仕切られた場所が多いのが現状です。この場合、空間の仕切壁の上下が開放されている場合も多く、閉じられていても遮音性が低いものがほとんどです。視覚的には個室であっても、音響的には開放されているのです。特に賃貸オフィスでは一室空間を機能に応じて区切るという使い方が多いため、その意味では合理的な設えではあるのですが、法律事務所の場合は問題があります。
実際に遮音性を高める設備的な設えと共に、クライアントにとってもそれがすぐに認知可能で、安心して心を開いて話ができる空間を確保することが信頼の醸成に貢献します。
世の中には多くの法律事務所があります。
一般に、クライアント候補となる人はいくつかのオフィスを訪問しスタッフと言葉を交わし、どの事務所に依頼するかを決定します。では、決断する際の大きなポイントは何でしょうか。それは、自分のニーズに「寄り添ってくれる事務所」かどうかという点です。
専門外の一般人にとって、法律の話は常識の範囲外と感じる難しさがあります。そして、法律家も難しく気高い存在であると思われがちです。一般に、法律家の集う法律事務所が気軽に近寄りやすい場所と見做されないのはそのためです。もちろん、法律に関わる業務の責任と社会的意義を考えれば、法律事務所が難解で複雑な業務の空間であることは間違いありません。
しかしながら、営利企業という側面からはクライアントへの窓口になる部分に関しては、アクセシビリティーを考慮する必要があります。具体的には、ある種の威厳を保持しつつも、開放的なイメージを与えるエントランスデザインがポイントになります。物理的な材料で威厳を示しつつ、光のデザインで開放感を表現することで、クライアントの心持ちに寄り添うことが可能となります。
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